生音と距離感 はざまで

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アクリル板で仕切られ、ステージに向かって設けられた席で演奏を楽しむ観客たち(中京区のモダン・タイムスで)
アクリル板で仕切られ、ステージに向かって設けられた席で演奏を楽しむ観客たち(中京区のモダン・タイムスで)
「磔磔」では客同士の距離を確保してもらうため、床にテープで印を付けている(下京区で)
「磔磔」では客同士の距離を確保してもらうため、床にテープで印を付けている(下京区で)

変わる遊び方 ライブハウス

 新型コロナウイルスの感染拡大で、ライブハウスの多くは休業を余儀なくされた。音楽を愛する人々は今、生の音をどのように届け、また楽しんでいるのか。感染対策に知恵を絞りながら、営業を再開しているライブハウスを訪ねてみた。

 静かな熱気

 「素晴らしい」「完璧」。大きな拍手とともに、音量を抑え気味の声が響く。木屋町通り沿いのライブハウス「モダン・タイムス」(2005年開業、中京区)で11日昼、ギターやウクレレなどを手にした音楽愛好家たちが、フォークやポップスを歌うのを、観客ら約25人が目を細めて楽しんだ。

 舞台との間には飛沫ひまつ感染防止のためのアクリル板が置かれ、客はステージに向かって設けられたテーブルに1人ずつ座って音楽を味わう。

 4月から約2か月間の休業後、収容人数を半数以下の25~40人に制限して営業を再開した。角口裕美店長(47)は「ライブ再開後は『少し味気ないかな』との声もありましたが、音楽を愛するお客さんも今のスタイルに共感してくださっている」と感謝する。

 「今はこういうもの」

 3月上旬、大阪市内の複数のライブハウスで新型コロナのクラスター(感染集団)が発生した。密集して音楽を楽しむこの業態が感染拡大の場として名指しされ、世間からの風当たりは急速に強まった。

 大阪でクラスターが発生した直後、2週間の休業をした「ライブハウス NANO(ナノ)」(2004年開業、中京区)は、感染対策をして営業再開するも、客はほとんど戻らず厳しい状況に。西村雅之店長(43)は課金制でライブをインターネット配信したり、店のオリジナルグッズを作成したりし、7月に10人限定で店を再開するまでの3か月間、難局を乗り切る方法を模索し続けた。

 「本当につらかったけど、感染しやすい場所であることの認識はできた」と西村店長。若い客が多く、出演者との距離が近いのが売りの一つだったが、最大収容約80人の2割以下の15人に制限している。楽器の消毒や換気も徹底し、「ミュージシャンもお客さんも『絶対ライブハウスでは感染者を出さへん』と思っている。これなら不安はない、と思える状況を作りださなければいけない」と語る。

 京都を代表するライブハウスの一つ「磔磔たくたく」(1974年開業、下京区)でも、3月は使い捨てカイロを客に渡し、定期的に換気する対策をとったが、4~6月上旬は休業。その後、11台ものカメラを生かしたライブの配信も導入しながら、徐々に店を再開した。今も、客数を大幅に制限し、立ったまま音楽を聴いてもらう時は、客同士の距離の目安として1メートルごとに床にテープを貼っている。

 水島浩司店長(38)は「お客さんは声を出したり、ミュージシャンに近づいたりできない状況。だけど『今はこういうもの』と、感染対策しながら楽しんでくれている」と語る。

 観客も営業再開を喜ぶだけでなく、「自分がうつさないように」と注意深く行動する人も少なくない。

 「演奏、演出 面白い」

 モダン・タイムスを訪れる東山区のサービス業、瀬古浩史さん(52)も、店内に入ってすぐに手を洗う。演奏については「客とミュージシャンが掛け合いをするコール&レスポンスが行われにくいが、今だからこその演奏や演出もあって面白い」と指摘する。

 ナノに約10年通う左京区の会社員八田美里さん(39)は「人が密集する中で音楽を聴き、感想を言い合うのがライブハウスの魅力」とするが、「距離の確保や手指の消毒、マスクを外さないといったことに徐々に慣れ、気をつけながら楽しむことを覚えてきた」と話す。音楽との新たな向き合い方を、店とともに観客も探っている。(今岡竜弥)

ネット募金 伸び悩み

 表現活動の場を支えようと、京都市が「発表・鑑賞拠点継続支援金」と題し、寄付額の一部が税額から控除される「ふるさと納税型クラウドファンディング」(CF)を企画したが、寄付額は伸び悩んでいる。

 対象はライブハウスのほか、花街の歌舞練場や能楽堂、劇場、ギャラリーなど75か所。目標額は1000万円(締め切りは11月13日)だが、今月16日時点で130万円を超えた程度といい、市文化芸術企画課の担当者は「文化を支える人々が活躍する場がなくなれば、未来につないでいくことができない。多くの人と一緒に文化を守る機運をつくりたい」と語った。

 財政事情の厳しい自治体による苦肉の策だが、文化拠点存続の旗振り役を担った注目すべきプロジェクト。CFが幅広い分野で普及したことなどで埋没している中、京都市のさらなるアピールを望みたい。

 オランダの歴史学者ヨハン・ホイジンガは、人間の本質を「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」と定義した。新型コロナの影響で、スポーツ観戦や釣り、ゲームなど趣味にも変化が表れている。10月の「New門@京都」は「変わる 遊び方」をテーマに連載します。

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1554664 0 New門@京都 2020/10/17 05:00:00 2020/10/17 05:00:00 2020/10/17 05:00:00 アクリル板が設置され、ステージに向かって設けられた席で演奏を楽しむ観客たち(中京区の「モダン・タイムス」で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201016-OYTAI50033-T.jpg?type=thumbnail

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