鴨川1 「鴨川」「賀茂川」「加茂川」?

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賀茂大橋から上流を望む。賀茂川(左)は高野川(右)と合流し、「鴨川」となる
賀茂大橋から上流を望む。賀茂川(左)は高野川(右)と合流し、「鴨川」となる
合流地点周辺の看板は「鴨川(賀茂川)」の表記になっていた
合流地点周辺の看板は「鴨川(賀茂川)」の表記になっていた

よきもの「加茂川」

 北山の 桟敷さじき ヶ岳を源流とし、京都の市街地を北から南へ約23キロ流れ、桂川に合流する1級河川・鴨川。「100万都市」の真ん中に、水辺で遊べる川が流れるのは、世界的にも珍しい。

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 平安後期、白河法皇は、自分の意のままにならない「三不如意」の筆頭に「賀茂川の水」を挙げた。他の二つは「 双六すごろくさい 」と「山法師」。院政を敷いて権勢を誇った白河法皇でも、太刀打ちできない暴れ川だった。

 これに対し、京都の「よきもの三つ」の一つに加茂川を挙げたのは江戸の文人、滝沢馬琴。紀行文「 羇旅漫録きりょまんろく 」に記述がある。旅人としての気楽さか、残り二つは「女子」と「寺社」である。

 荒々しさと 明媚めいび さを併せ持つ鴨川は、その両面性ゆえ、人々の心をひきつけてやまなかった。

公用文は「鴨川」

 ここまで「かもがわ」の表記が鴨川、賀茂川、加茂川と3種類混在していることに気付いただろうか。

 「かもがわ」の由来には諸説ある。一般的には、平安京造営の前からほとりに住んでいた豪族「賀茂氏」が語源とされる。ただ、上流を意味する「上(かみ)」や、あるいは「神」を語源とするという人も少なくない。鳥のカモが多かったから、という説は劣勢という。

 8世紀の「山城国風土記」には賀茂川、9世紀の「日本紀略」には鴨川の記載があるが、どちらが先か、決定打はない。京都地名研究会の入江成治・京都精華大特任教授は「地名は口承で伝わる。漢字表記にはおおらかな部分があったのでは」と話す。

 行政にとっても名称問題は悩みの種だったようで、戦後、府職員が考察を加えている。冊子「鴨川の変遷」(1958年)によると、江戸時代の古地図の多くは意外にも「加茂川」の表記だった。一方、平安京の治水担当の官職が「 防鴨河使ぼうかし 」だったことなども踏まえ、「おおよそ公用文には鴨川が用いられたことがうかがわれる」と結論付けている。

 実際、1896年(明治29年)の旧河川法では鴨川で統一。以降、行政文書では専ら鴨川が使われている。

上流は「賀茂川」派

 行政的には「鴨川」で決着したとはいえ、「賀茂川」の表記は現役だ。

 「現在、高野川合流点(出町)以北を賀茂川、以南を鴨川と使い分けられる」――。京都市観光協会のサイトにこんな説明がある。「グーグルマップ」や「ヤフー地図」も上流は賀茂川の表記を採用。「賀茂なす」「賀茂川漁協」「鴨川をどり」「京阪鴨東線」などのエリアを見ても、おおむねこの使い分けに合致している。

 地元住民の認識はどうか。合流地点より約2.5キロ上流の北山大橋で、地元住民10人に聞いた。結果は「どちらも使う」を含め、賀茂川派が8人で優勢だった。

 なぜ流域での呼び分けが定着したのだろう。入江特任教授によると、江戸時代、賀茂氏の氏神をまつる 賀茂別雷神社かもわけいかづち (上賀茂神社)と 賀茂御祖かもみおや 神社(下鴨神社)が、通称名に別の漢字を選んだのが契機とされる。上賀茂神社の近くは賀茂川、下鴨神社の下流は鴨川、というわけだ。ただ、なぜ「上鴨神社」「下賀茂神社」ではなかったのか、そこでどのような話し合いがあったのか。多くは謎のままだ。

 鴨川を管理する府京都土木事務所(左京区)に見解を聞いた。名称についての質問は定期的に寄せられ、桑場功・企画調整係長は、いつもこう説明しているという。

 「あえてどちらが正解、どちらが間違いとは言いません。地元の方には愛着がある漢字を使ってもらえれば」

 1月の「New門@京都」では京都の人々の暮らしに深く関わってきた鴨川の歴史と今を紹介する。

<メモ>

 鴨川の流域は7割が山地、3割が扇状地だ。扇状地は氾濫によって形作られ、ここに市街地が広がる。

 桂川や宇治川などと比べて急勾配で、平均すると、200メートルで1メートル上昇。東寺(南区)の五重塔(高さ約57メートル)の頂上は、約8キロ上流の府立植物園(左京区)とほぼ同じ高さになる。

 中流部の水辺は都市公園となっており、コロナ禍前は、散策やジョギングなどで年間約300万人が利用。水質も良く、オオサンショウウオやカワセミなど貴重な生き物も生息している。

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