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不便だけど 不幸でない…ALS患う元看護師 起業し活躍

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起業家として活躍するALS患者の合田さん(中央)と、活動を支える友人の飯間さん(右)=飯間さん提供
起業家として活躍するALS患者の合田さん(中央)と、活動を支える友人の飯間さん(右)=飯間さん提供

福祉サービス情報支援 「同じ境遇の人の力に」

 難病の筋 萎縮いしゅく 性側索硬化症(ALS)を患いながらも、起業家として活躍する元看護師の男性がいる。ALSは、中京区の女性患者に対する嘱託殺人事件が昨年7月に発覚し、社会的な注目が高まった。事件に心を痛める男性は「体が動かず不便だけど、病気は不幸ではない。自分にできる方法で困っている人の支えになりたい」と話す。(松崎遥)

 車いすで生活するALS患者の香川県観音寺市豊浜町、合田朝輝さん(33)が、手の親指に力が入らないことに気付いたのは3年前だった。徐々に体が動かなくなり、19年にALSの診断を受けた。声も出しづらいが、わずかに動く手などでLINE(ライン)やメールを駆使してコミュニケーションを取る。

 今年2月に起業し、中小企業や個人事業主の市場調査などを請け負う仕事を始めた。「体が動かない分、人よりも、たくさん時間を使って頭で考え、データを分析することができると思います」と笑顔を見せた。

 発症前は、幼い頃からの夢をかなえ、看護師として働いていた。妻と幼い3人の子どもと暮らすための家を建てたばかりだった。

 診断された直後は家族と旅行するなど「病気のことを考えないように外出して現実から逃げていた」と振り返る。しかし、車いすの生活が長くなってくると、ふさぎ込むようになった。

 「何もできず、社会や家族の中での役割がない」と思い詰めた。ある日、自身のブログで「私は人間でしょうか」と問いかけていた。

 暗闇から抜け出すきっかけとなったのは、ある友人の一言だった。

 「体は動かせなくても、君は考えることができる。力を貸してくれないか」と、会社経営者の飯間将博さん(36)が声をかけてくれた。

 マーケティングやブランディングについて、動画を視聴するなどして勉強を続けた。飯間さんの仕事を手伝う中で「専門知識が増え、経験が身になるのが楽しい」と夢中になった。「同じ境遇にいる人の力になりたい」との思いが起業につながり、障害者や難病患者らに福祉サービスなどの情報支援を行う事業も2月に始めた。

 依頼者や仕事相手との交流が、生きる活力になっていると感じている。「体を動かせなくても、人と心がつながっていれば生きていける」と実感している。

 嘱託殺人事件で「安楽死」を望む思いを発信していた女性患者の気持ちも理解できるという。「僕自身、生きることに絶望した時期もある。障害の有無にかかわらず、生きていくことは、誰かの手を借りていくことだと思う。誰もが互いに頼り、支えることが当たり前になる社会になればうれしい」と考えている。

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2165381 0 ニュース 2021/06/30 05:00:00 2021/06/30 05:00:00 2021/06/30 05:00:00 起業家として活躍するALS患者の合田さん(中央)と、活動を支える友人の飯間さん(右)=飯間さん提供 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210629-OYTNI50024-T.jpg?type=thumbnail

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