<「京都本大賞」創設10年>まちも書店も活性化

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大賞受賞作やガイドが並ぶ人気の京都本コーナー(中京区で)
大賞受賞作やガイドが並ぶ人気の京都本コーナー(中京区で)

 京都を舞台にした小説から「お薦めの一冊」を選ぶ「京都本大賞」が2022年、創設10年を迎えた。活字離れや出版不況が進む中、受賞作が注目されることで販売増にもつながり、書店の活性化を後押しする。京都本大賞が人気を集める理由とは。(山口景子)

 京都本大賞は、府書店商業組合(104店舗)を中心に構成する実行委(事務局・中京区)が主催。過去1年間に発刊された小説から、書店員ら実行委員が3点を選び、組合ホームページや加盟書店で行う読者投票を通じて決定する。

 「自分たちの街・京都の文学賞を立ちあげよう」

 13年、実行委員長で「ふたば書房」(本社・同区)社長の洞本昌哉さん(52)ら書店・出版関係の有志6社が、読書離れを憂える担当者同士の雑談をきっかけに創設した。洞本さんは「投票制にすることで読者や書店員が参加でき、みんなに『私の本』という愛着が生まれた」と振り返る。

 受賞者からは、岡崎琢磨さん(13年)、森見登美彦さん(14年)、原田マハさん(18年)ら人気作家を輩出。16年に受賞した望月麻衣さんの「京都寺町三条のホームズ」(双葉文庫)はこれまでに17巻刊行され、累計発行部数は約195万部(電子版など含む)を記録する大ヒットに。船岡山(北区)など舞台となったエリアを訪ねる「聖地巡礼」現象も生んだ。

 直近の第9回(21年)では689人が投票。昨年10月に行われた受賞式は、初めて府内8店にインターネットでライブ中継された。

 組合理事長を務める犬石吉洋さん(57)が経営する犬石書店(南丹市)では、店内に設置した小型パソコンで中継した。「作品はどうしても京都の市街地が舞台になりがちだが、文学賞の熱気を北部はもちろん、府全体に広げたい」と犬石さんは話す。

 賞は、書店の追い風にもなっている。

 1942年創業で、50店舗以上を展開する大垣書店(本社・北区)では、「京都本コーナー」に力を入れており、烏丸三条店(中京区)では入り口近くでガイド本とともに受賞作を並べている。

 実行委に加わる同店書店員、伊藤優季さん(26)は、「京都の文化や土地柄が伝わる作品を推した。創設10年の節目には、歴代受賞作品を並べてみたい」と意気込む。

 全国出版協会・出版科学研究所(東京)の「出版指標年報」によると、雑誌と書籍の推定売上金額は、ピークの1996年には2兆6564億円を記録したが、消費増税などで減少に転じ、2020年は1兆2237億円となった。

 ただ、人気シリーズ「ハリー・ポッター」の新刊が出た02年、04年、06年は前年を上回ったという結果も。同研究所は「書籍は毎年ヒット作が出ており、雑誌に比べて落ち込みがゆるやか。また、ベストセラーの有無で変動が大きい」と分析する。

 受賞作は東京などでも販売強化されており、同組合の担当者は「京都発のベストセラー誕生を」と夢を語る。

反響の大きさ 驚き

 第9回の大賞受賞作「メイド・イン京都」(朝日新聞出版)の作者、藤岡陽子さん(50)(西京区)=写真=に話を聞いた。

 生まれも育ちも京都・洛西。受賞後、地元の反響が大きくて驚きました。家庭教師をしていた教え子から30年ぶりに連絡が来たり、ご近所さんにほめられたり。さすが京都本大賞です。

 京都ゆかりの作家にとって、受賞は羨望の的です。理由は「京都の人たちが、自分の本を読んでくれた証拠だから」。この街に認められることはこの上ない喜びなのです。受賞によって、作家と京都がさらに深くつながる気がします。

 これまで、京都市や伊根町を書きました。次は老舗の商人や文化人を書きたいと思っています。京都のテーマは尽きません。

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2697884 0 ニュース 2022/01/24 05:00:00 2022/01/24 05:00:00 2022/01/24 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220123-OYTNI50039-T.jpg?type=thumbnail

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