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九州豪雨1年<下>コロナ感染拡大防止へ「分散避難」模索

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 新型コロナウイルスワクチンの接種が、九州豪雨の被災地でも進んでいる。6月下旬、熊本県球磨村の今村昭夫さん(65)は2回目の接種を終えた。「新型コロナが収束しない今、豪雨災害が起きたらどうなるのだろうか」と不安を隠さない。

 九州豪雨の日、球磨川の支流沿いの今村さん宅は2階まで浸水した。持ち出せたのは携帯電話のみ。最初に身を寄せた避難所では、数百人の避難者が密集していた。「マスクを着けて逃げる余裕はない。感染対策を考えることもできなかった」と振り返る。

 豪雨直後、同県人吉市の避難所で活動した公立甲賀病院(滋賀県)の渡辺一良副院長は「ここで感染が広がれば、疲弊した避難者の重症化は避けられない」と感じた。集落ごとに身を寄せ合い、マスクを正しく着用している人は3割程度しかいなかった。

 コロナ病床がある人吉医療センターも被災した。人吉市医師会の山田和彦副会長は「避難所でクラスター(感染集団)が発生していたら、医療体制は致命的な状況に陥っていた。ワクチン接種を急ぐことが、今できる災害対策だ」と語った。

 コロナ下で初の大規模災害は、被災者支援にも影響が出た。九州豪雨では、全国から延べ約1300人の保健師が駆けつけ、避難所での健康チェックなどを担った。だが、派遣元の自治体でクラスターが発生し、派遣期間の途中で帰還するケースもあった。

 保健所は今、コロナ対応に忙殺されている。人吉保健所の服部希世子所長は「多くの応援は望めない。感染者が多い地域からの派遣も不安がある」と危惧する。

 九州豪雨から1年を経ても、新型コロナの収束は見通せない。感染拡大を防ぐため、各地で「分散避難」の取り組みが進んでいる。

 福岡県久留米市は、地域が独自の避難所を開設・運営する取り組みを進める。船越校区は自動車関連企業の施設を独自避難所にしている。昨年9月の台風10号では約20人が利用。校区まちづくり振興会の野上尚則会長(68)は「行政任せにせず、地域が主体的に動くことが大切だ」と話す。

 山形県南陽市は九州豪雨を受け、避難所の混雑状況を知らせる独自のアプリを開発した。避難所の定員に近づくと「他の避難所に」と誘導する。同じアプリは鹿児島県出水市も導入した。

 関西大の高鳥毛敏雄教授(公衆衛生学)は「感染を恐れて避難せず、危険な場所にとどまってはならない。命を守りながら密を避けるため、避難所以外にも安全な避難先を確保しておくべきだ」と指摘している。

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2175950 0 減災力 2021/07/03 05:00:00 2021/07/03 05:00:00

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