読売新聞オンライン

メニュー

苦境バス会社 患者運ぶ「社会の役に立てれば」…新型コロナ

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

透明な板で間仕切りをするなど感染対策を施した車両(福岡県大野城市で)=中山浩次撮影
透明な板で間仕切りをするなど感染対策を施した車両(福岡県大野城市で)=中山浩次撮影

 新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に立たされている貸し切りバス業者やタクシー業者が、自治体などの委託を受けてコロナの軽症患者らやPCRの検体を移送する業務にあたっている。感染リスクへの不安は残るが、社会の役に立ちたいとの思いと、利用客が激減した会社を存続させたいという二つの目的で取り組んでいる。(水木智)

 福岡県大野城市の貸し切りバス会社「家康観光」は昨年4月以降、福岡市などの委託を受け、コロナの軽症患者や濃厚接触者らをマイクロバスなど計14台を使って療養先のホテルなどへ運んでいる。応急講習が義務化されている消防機関認定の「民間救急」とは異なるが夜間も対応し、第3、第4波時には多い時で1日計約200人を移送。1日の走行距離が1台で400キロに及んだ日もあった。

 車両の運転席と患者らが乗る後部座席を透明の板で仕切り、定期的な消毒以外は運転手も後部座席に入らないようにした。検温も徹底し、市と契約した昨年12月以降、業務に携わった運転手14人に感染者は出ていない。「対策の徹底で感染が避けられることを学んだ」と同社社長の海江田司さん(64)は話す。

 外国人観光客や修学旅行生が主な利用客だった同社は、昨年3月の売り上げが前年同期比で95%以上落ち込んだ。移送事業を県から打診されたのは「支出を減らしても収入がなければ事業が成り立たない」と頭を抱えていた時だった。

 しかし、感染リスクが残ることに当初は運転手の多くが反対。「やるなら会社を辞める」と言う人もいた。そんななか、2人の運転手が「社会の役に立てるならやりたい」と手を挙げ、海江田さんも引き受けることを決断した。

 感染防止策が分からず、乗客に多数の陽性者が出たクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の患者を搬送した群馬県のバス会社に問い合わせたり、専門医に相談したりした。運転手の中には、「子どもを実家に預けてハンドルを握った」という人も。徐々に社内で理解が広がり、現在は全運転手が参加している。

 売り上げは今でもコロナ禍前の10分の1以下だが、「修学旅行や観光で利用者が乗ってくれる日は再び来る。それまで協力したい」と海江田さん。市の担当者は「患者が急増した第4波では、業者の協力がなければ移送に対応できなかった。引き受けてくれる事業者が少ない中、助かった」と話す。

 全国でも同様の動きがある。日本交通(本社・東京)は昨年4月以降、東京都や日本財団(東京)と契約を結び、感染対策を施したタクシーで感染疑いのある人や患者をPCR検査場や病院へ移送する業務を始めた。これまでに延べ約6000人を運んだという。

 三重県では昨年5月から、地元のバス会社「三重交通」が患者の移送やPCRの検体を保健所から検査機関まで運ぶ業務を行い、昨年度は1200件を扱った。同社は「保健所などの多忙化を見てお手伝いしたいと思った」とする。

貸し切り事業146件廃止

 国土交通省によると、貸し切りバス事業者は約4000社(2019年3月時点)で、同省が実施した調査では、新型コロナの影響による貸し切りバス事業の廃止は昨年が90件、今年は5月までで56件に上っている。

 また、保有するバスの稼働割合を示す「バス実働率」は今年1~5月で13・9~20・4%。5月時点で運送収入が2019年5月と比較して50%以上減少した事業者は9割に上った。

 約6000社(同)あるタクシー会社も厳しい状況が続く。昨年から今年5月までのコロナの影響での事業の廃止は49件で、19年同月と比較した今年1~5月の輸送人員の割合は39~48・8%減少している。

無断転載・複製を禁じます
2173362 0 ニュース 2021/07/02 15:00:00 2021/07/02 15:00:00 2021/07/02 15:00:00 パーティションで区切って感染対策を施したマイクロバス(6月3日午前10時52分、福岡県大野城市で)=中山浩次撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210702-OYTNI50037-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)