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復旧進むが住民戻らず、復興道半ば…九州北部豪雨の被災地

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 福岡、大分両県で42人の死者(災害関連死含む)・行方不明者を出した九州北部豪雨は5日、発生から4年となった。両県の被災地では河川改修や農地の復旧が進む一方、人口流出で過疎化に拍車がかかり、消滅した集落もある。住民は復興までの険しい道のりを実感しながら、農業の再生などに手探りで取り組んでいる。(小松一郎、山本光慶)

復旧工事が続く松末地域で、思いを語る高倉保之さん(5日午前、福岡県朝倉市で)=秋月正樹撮影
復旧工事が続く松末地域で、思いを語る高倉保之さん(5日午前、福岡県朝倉市で)=秋月正樹撮影

 5日午前10時、福岡県朝倉市の防災行政無線で黙とうを呼びかけるサイレンが鳴り響いた。 松末ますえ 地域コミュニティ協議会会長の高倉保之さん(69)は、赤谷川の支流・乙石川を訪れ、犠牲になった知人の自宅跡近くで黙とうをささげた。川を見つめ、「復興がなかなか進まない。申し訳ない」とつぶやいた。

 豪雨による市内の死者(関連死含む)・行方不明者35人のうち、松末地域が19人を占める。被害をもたらした赤谷川水系では国が復旧事業を進め、河川改修は今年度末、砂防事業も来年度末までの完了を目指している。ただ、ハード面の復旧が進む一方で、人口減少に歯止めがかからない現状に、高倉さんは頭を抱える。

 市が同地域で初めての被災者向け公営住宅として、今年度中に建築する「池の迫団地」(7戸)。5~6月に入居希望者を募集したが、申し込みは3世帯にとどまり、その後、うち1世帯が辞退した。

 子育て世帯の移住も狙った松末地域の活性化策の柱だっただけに、高倉さんは「建設場所の選定に時間がかかっているうちに、多くの被災者がよそで自宅を再建してしまった」と悔やむ。

 市によると、4月20日現在で、被災した1010世帯の住宅の再建場所は87%が市内だったが、松末地域内では29%。5月末の人口は421人で、被災前から4割ほど落ち込んでいる。

 豪雨で3人が亡くなった大分県日田市。同市小野地区で4月に自宅を再建した伊藤元裕さん(69)によると、近所で被災した7世帯のうち、地区に戻ったのは2世帯だけだった。「県外に引っ越した住民とは交流がほとんどなくなってしまった」とこぼす。

 今年4月の同地区の人口は715人。被災前から157人減り、集落の祭りも中止や縮小が相次ぐ。小野公民館では地区への移住や定住の促進策について市と協議を始めたという。

 被災地で人口減が進む中、朝倉市高木地域では昨年11月に地元農家らが「黒川地区の農業(未来)を考える会」を結成した。県や市の支援を受け、農機具の購入や作業を共同で行うなど各地の事例を学んでいる。

 同地域でも人口は221人と、被災前から約4割減少した。地元のコミュニティ協議会の調査では二つの集落が消滅した。

 市は黒川沿いなどの48ヘクタールで、区画整理による農地の復旧事業を進める。分散している農地を耕作しやすいように集約し、農道や用水路も整備する事業で、23年度の完了を目指す。同会会長の鳥巣良彦さん(66)は「先進事例を参考にして、よそから若い担い手も呼び込まないと地域の未来はない」と表情を引き締めた。

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2182542 0 ニュース 2021/07/06 10:22:00 2021/07/06 10:22:00 2021/07/06 10:22:00 復旧工事が続く松末地区で、被災からの4年間を振り返る高倉保之さん(5日午前11時32分、福岡県朝倉市で)=秋月正樹撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210706-OYTNI50006-T.jpg?type=thumbnail

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