豪雨で被災した福岡・東峰村でヤマメ養殖

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 2017年7月の九州北部豪雨で被災した福岡県東峰村の住民たちが、環境省の「平成の名水百選」に認定された地元の湧水でヤマメの養殖を始めた。小石原焼などで知られる同村は地域の復興策として観光振興に力を入れており、「養殖ヤマメを新たな名物に育て、訪れる観光客らをもてなしたい」と意気込んでいる。(小松一郎)

「観光客もてなす新名物に」

 「こんなに順調に育つとは。まるで魔法の水だ」。JR日田彦山線・筑前岩屋駅近くの棚田に置かれた水槽前で、同村の農業梶原寛暢さん(41)が顔をほころばせた。近くの釈迦岳トンネルから湧き出る「岩屋湧水」を引き込んだ水槽では、ヤマメの群れが元気に泳ぎ回っていた。

初めて育てたヤマメを手に喜ぶ梶原さん(6月23日午後5時3分、福岡県東峰村で)=小松一郎撮影
初めて育てたヤマメを手に喜ぶ梶原さん(6月23日午後5時3分、福岡県東峰村で)=小松一郎撮影

 梶原さんは地元の仲間3人と昨秋から養殖を始め、今年6月には全長約50センチに育った150匹を水槽から水揚げした。現在は缶詰の製造・販売に向けた準備を進めている。今月5日には次の養殖に向け稚魚約1000匹を仕入れた。

 村などによると、湧水は1939年、同トンネルの工事中に出水し、湧水量は1日約1万5000トン。まろやかでコーヒーなどに合うと評判になり、2008年に名水百選に選ばれた。同駅前の給水機では30リットルが100円で販売され、16年度は延べ約4万5500人が利用した。

 九州北部豪雨では村民3人が犠牲になり、梶原さんも自宅や農地に土砂が流入。村内を走るJR日田彦山線は一部不通となった。給水機の利用も減り、年間の利用者は17~20年度、延べ1万人台まで減少した。「故郷が滅んでしまう」。危機感を抱いた梶原さんは仲間と湧水の活用を模索し、魚の養殖を思いついた。

「渓流とほぼ同じ条件」の湧水活用

 同県朝倉市の県水産海洋技術センター内水面研究所に相談したところ、湧水の水温は17度と一定な上に酸素が豊富に含まれ、ヤマメの養殖に適していることが判明。県の補助金を活用して水槽や配管をそろえ、昨年10月、研究所から全長約10センチの幼魚約200匹を提供してもらった。4人とも魚の養殖は初めて。最初はヤマメが警戒して餌を食べなかった。研究所の助言を参考に、姿を見せないよう離れて投げ与えるなどした結果、食べ残しが減った。

 研究所の伊藤輝昭研究員は「岩屋湧水は天然のヤマメが生息する渓流とほぼ同じ条件を備え、低コストで高品質のヤマメを養殖できる」と太鼓判をおす。

 不通が続く日田彦山線では専用道などをバスが走るBRT(バス高速輸送システム)が導入され、23年にも復旧する見通し。村では筑前岩屋駅近くの竹地区で古民家を改修した宿泊施設が昨年7月から営業しており、養殖ヤマメを宿泊客にも提供したい考えだ。

 梶原さんは「鉄道がなくなるのは残念だが、BRT導入を前向きに捉え、訪れる人たちにヤマメを食材にした弁当や郷土料理を味わってもらえるよう準備を進めたい」と話している。

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