読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

亡き妻へ「一人でも頑張りよるけん」…25日 熊本・芦北で九州豪雨追悼式

スクラップは会員限定です

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 昨年7月の九州豪雨で11人の死者を出した熊本県芦北町で25日に追悼式が行われる。妻を亡くした矢野 解光ときみつ さん(75)は式に参列。被災後に一度は諦めかけたが、亡き妻に背中をおされるように再開させた米作りの様子を伝えるつもりだ。(有馬友則)

矢野さん 思い出の田んぼで米作り再開

 芦北町は住宅約1000棟が全半壊した。11人が犠牲となり、1人が行方不明のまま。今月4日に豪雨から1年となったが、町は梅雨時期は再び水害の危険があるとしてこの日の追悼式開催を見送り、25日に町民総合センターで式典を行う。

まさ子さんとの思い出が残る田んぼで作業する矢野さん(21日、熊本県芦北町で)
まさ子さんとの思い出が残る田んぼで作業する矢野さん(21日、熊本県芦北町で)

 あの日朝、矢野さん宅周辺は降り続いた豪雨で近くの水路があふれそうになっていた。地響きが起き、木造2階建ての自宅が土砂にのみ込まれた。矢野さんは助け出されたが、翌日夜に妻のまさ子さん(当時67歳)は遺体で見つかった。

 幼なじみで結婚してから47年、一緒だった。3人の息子を育てて、米や野菜、ラッキョウなどの栽培にも精を出した。近所や親戚に配ってはうれしそうだった。矢野さんは「喜んでもらうことが生きがいだったのだろう」と振り返る。

 約40日後に退院した時、葬儀は終わっていた。納骨も済ませたが実感はわかなかった。その後、日を追うごとにさみしさは増した。豪雨前に張ったあぜ道の防草シートや、使い慣れた農機具など。目にするものは変わらないのに妻だけがいなかった。涙があふれ、全てが手に着かなくなった。稲の管理を親戚に任せた。

 心境に変化があらわれたのは、刈り取り作業を見ていた時だ。豪雨を乗り越えて実った、2人で植えた稲だった。「落ち込んでいてもまさ子は悲しむ。2人分を元気に生きよう」と米作りの再開を決めた。体力の落ちた自分を心配した息子たちからは反対されたが、頑として聞かなかった。「けがせんように見守って」と遺影に手を合わせ、作業に出かけた。

 7月21日、苗は50センチほどに成長していた。まさ子さんが楽しそうに作業する姿がよみがえった。「一人でも頑張りよるけん。安心してよかよ」と亡き妻に語りかけた。25日の追悼式には、豪雨の教訓が全国に伝わればとの思いで参列する。自分の姿をまさ子さんに伝えながら、大切な人を失う悲しみを味わう人は自分で最後にしてほしいとも考えている。

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
2230554 0 ニュース 2021/07/24 10:09:00 2021/07/24 10:09:00 2021/07/24 10:09:00 まさ子さんとの思い出が残る田んぼを歩く矢野さん(=26日午後4時37分、熊本県芦北町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210724-OYTNI50001-T.jpg?type=thumbnail

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)