母ら切りつけ「記憶ない」福岡地検が不起訴に…薬物の入り口に、若者摘発増加[大麻拡散<上>]

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 福岡市博多区堅粕の市営団地で6月、母親ら親族4人に切りつけたなどとして、殺人未遂と傷害容疑で逮捕されていた男性被告(20)について、福岡地検が今月上旬、両容疑では不起訴としたことがわかった。刑事責任を問えないと判断した理由には、大麻の影響があった。

 「覚えていない」。被告は逮捕後、こう繰り返した。ただ、負傷した腕などの治療を受けた際に、体内から大麻の成分が検出された。地検は刑事責任能力を調べるため鑑定留置を実施するとともに、事件当日に団地内の自宅で大麻を所持したとして、大麻取締法違反で10月に起訴した。

 地検は鑑定留置の結果を踏まえ、被告は大麻を使用したことによる心神喪失状態で母親らに切りつけており、殺人未遂と傷害容疑については刑事責任能力は認められないと判断したとみられる。

 大麻の有害成分は脳に影響を与え、幻覚や錯乱、記憶障害などを引き起こすこともある。インターネット上では「健康にいい」「害がないのは医学的に明らか」などと、大麻の危険性を否定する情報が流布しているが、福岡の事件のように別の犯罪につながる恐れもある。

 捜査幹部は、若者が安易に大麻を手にする現状に「大麻は本当に危ないということを認識すべきだ」と警鐘を鳴らす。

抵抗感なく

 大麻はより強い違法薬物を使うきっかけにもなっている。2020年版の犯罪白書によると、覚醒剤を使用したなどとして17年7~11月に刑事施設に入った30歳未満の男女の42・6%が、最初に使用した薬物として大麻を挙げた。薬物乱用に至る「ゲートウェー(入り口)・ドラッグ」となっている実態がある。

 今年3月に少年院を出院した福岡県北部に住む少年(18)は中学2年のとき、友人の勧めで大麻を吸った。大好きなヒップホップの歌詞に「気分が上がる」という表現があり、抵抗感はなかった。音楽仲間たちは「大麻を吸えば、曲ができる」とまことしやかに語り、自らも依存した。

 友人らと大麻を吸ってドライブ中、事故が起きたこともある。運転席の友人が突然、意識が飛んだような状態になり、車は急加速。道路脇の壁にぶつかって止まった。刺激を求めて覚醒剤にも手を出し、覚醒剤取締法違反容疑で摘発された。

 少年は「合法なら今でも大麻を吸いたい」と言い、保護観察中の今も、一人になるとスマートフォンで大麻について検索している。

安価で購入

 10~20歳代の摘発は17年以降、大麻が覚醒剤を上回り、昨年は覚醒剤が1114人だったのに対し、大麻は3511人に上った。

 捜査関係者によると、1グラムあたりの末端価格を単純比較した場合、覚醒剤の1グラム6万円に対し、乾燥大麻は10分の1の6000円程度だ。

 薬物問題に詳しい横浜薬科大の篠塚達雄特任教授は「大麻の拡散が進む背景には、ほかの違法薬物に比べ、ネットなどで比較的安価で簡単に購入できるうえ、刑事罰が軽いということがある」と指摘する。

 少年や若者を中心に大麻が 蔓延まんえん する中、厚生労働省は大麻取締法に「使用罪」を新設し、刑事罰を科す方針を示している。大麻を巡る現状をリポートする。

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