間借り営業 助け合い コロナ禍の飲食業界

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間借りした酒屋の一室で自慢の朝食を提供する境さん(右)と貸主の徳永さん(3月17日、熊本市西区で)=秋月正樹撮影
間借りした酒屋の一室で自慢の朝食を提供する境さん(右)と貸主の徳永さん(3月17日、熊本市西区で)=秋月正樹撮影

 コロナ禍で苦境の続く飲食業界が、既存の店舗を朝や昼などの空き時間に利用する「間借り営業」に活路を見いだしている。新たに開業する借り手は調理する設備や備品がそのまま使えて経費を抑えられ、貸し手は時短営業や休業で減収しても家賃収入を得られる。双方にメリットがある効果的な手法として広がりつつある。(林尭志)

 3月中旬の午前7時過ぎ、JR熊本駅前のビル2階に入る朝食専門店「タラチネ」の調理場には、塩サバやきんぴら、団子汁など家庭の味が並んだ。メニューは和洋3種類の定食で各600円。店は週5日、午前7時から4時間の営業で、10席ほどだが、手間をかけたおかずや丁寧な接客が住民や観光客に人気だ。

 一人で切り盛りするのは境真由美さん(53)。喫茶店で調理を担当していたが、昨年5月、子どもがひとり立ちしたのを機に「好きな料理を出せるお店に挑戦したい」と店舗経営を決めた。

 タラチネが入るビル1階で酒屋を営む知人の徳永龍磨さん(64)に相談すると、店の試飲イベントなどで夜間に使う2階を安く借りられた。開業には数百万円の初期投資が必要とされるが、多額の経費をかけずにすんだ。コンロや冷蔵庫、鍋などを自由に使え、買い足したのは わん や小鉢程度だ。

 熊本県内は第6波で「まん延防止等重点措置」が延長されるなど飲食店への逆風が続いたが、境さんは毎月の家賃を抑えられたため乗り越えてこられた。客足は増えており、「コロナでお客さんが集まるか不安だったが、費用負担が少なく助かった」と振り返る。

 一方、貸し手の徳永さんはコロナ禍で店の売り上げが落ち込み、2階は空き状態が続いていた。「境さんの店が評判になり、酒屋に関心を持ってくれる人が増えた。家賃収入以上の効果があった」と手応えを語る。

 福岡市東区で昨年1月開店した「和平カレー」の店主山崎 和平かずへい さん(30)は間借りで経験を積み独立した。バーとして営業する店舗を、ランチタイムに間借りした。毎月の出費が減り、独立のための資金を蓄えることができたという。

 今では行列ができる人気店に。「バーの開店に間に合うよう片付けを急ぐなど大変な面もあったが、普通に店を始めていたら初期費用などで借金を抱えていたかもしれない」と話す。

 間借りが注目される背景には、飲食業界を取り巻く厳しい経営環境がある。

 帝国データバンクによると、新型コロナウイルスによる倒産数(2020年2月~22年4月1日)は計3118件あり、うち飲食店は業種別で最多となる506件(16%)に上る。大和総研の林正浩主席コンサルタントは「飲食店は昼と夜に営業する店があり、間借りは効率的な活用。ここ数年で広まり、コロナで加速した」と分析する。

 貸し手と借り手のマッチングも進む。外食大手「吉野家ホールディングス」傘下の「シェアレストラン」(東京)は2020年、ネットで仲介するサービスを始め、約440件が成約した。登録店舗は増え続けているという。

 福岡市の不動産会社「ソソグー不動産」も、仲介サイト「MAGARI ICHIBA」を運営している。居酒屋やバーを中心に物件を紹介し、問い合わせが増えているといい、松山謙介・不動産事業部長は「間借りの活用で、飲食店経営にゆとりが生まれる。今後もニーズは高まるはずだ」と語る。

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2887738 0 ニュース 2022/04/02 09:55:00 2022/04/02 09:55:00 2022/04/02 09:55:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/04/20220402-OYTNI50001-T.jpg?type=thumbnail

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