ウクライナに「共感疲労」侵攻情報心身に不調「銃殺される夢見た」「眠れなくなる」

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SNSにはウクライナ侵攻が要因とみられる共感疲労を訴える投稿が相次ぐ=画像は一部修整しています
SNSにはウクライナ侵攻が要因とみられる共感疲労を訴える投稿が相次ぐ=画像は一部修整しています

 ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、現地から伝わる 凄惨せいさん な情景にショックを受けて、心身に不調を来す「 共感疲労 」に陥る人がいる。SNSには気持ちの落ち込みを訴える書き込みが相次ぎ、心療内科に相談する人も。特にインターネットを通じて惨状が知られたことで、ウクライナへの支援につながった面もあるが、専門家は「受け止め方に注意して心を守って」と呼びかけている。(瀬戸聡仁)

無意識に収集

 「自分が銃殺される夢を見た」。千葉県市川市の調理師(38)は、自身に起きた異常な出来事を振り返る。

 ウクライナの情報を意識的に集めている自覚はなかった。だが、ネットで閲覧するうちに、砲撃で破壊された建物や逃げ惑う人々など生々しい画像を目にする頻度が高まった。侵攻開始から約1か月がたった頃、 動悸どうき が始まった。

 気持ちが落ち込み、悪夢にうなされた。「感情移入し過ぎている」と気づき、軍事侵攻の情報からいったん遠ざかると、徐々に平常を取り戻した。

 調理師のような状態に陥る人は珍しくない。SNSには「#共感疲労」のハッシュタグ(検索ワード)で、「胸が痛い」など悲鳴に似た投稿が相次いだ。ツイッターに投稿した東京都板橋区の50歳代の女性会社員は、取材に「ウクライナのことを考えて心が沈むようになった」と明かした。

共感疲労  困難やトラウマを抱える人と接するうちに相手に過剰に共感し、自分自身の問題のように感じてストレスが高まった状態を指す。本来は、医療や福祉などの現場で働く人に起きやすい心理状態とされてきた。


PTSD懸念

 医療現場でも患者から同様の訴えが上がった。「今宿病院」(福岡市西区)の心療内科では、侵攻後に患者へのカウンセリングで不安に感じることを尋ねると、1日に数人が「ウクライナ」と答えた。「現地の惨状が浮かんで眠れなくなる」と不眠症を訴える人もいた。

 同院の深堀元文理事長は、2011年の東日本大震災でも似た反応を訴える患者に接したといい、「悪化してPTSD(心的外傷後ストレス障害)になる恐れもある」と警鐘を鳴らす。

 社会問題について調査研究する一般社団法人「社会調査支援機構チキラボ」(荻上チキ代表)が5月、18~79歳の約1000人を対象に、侵攻後のストレスや心の健康についてアンケートを実施。侵攻前の2月に比べて全体的に孤独感の高まりがみられ、特に18~39歳の女性の3人に1人が抑うつ感があった、との結果が出た。さらに、テレビなどを含むメディアを通じて侵攻の情報に触れる時間が長いほど、抑うつ感や不安感、孤独感が高まる傾向が見られたという。

惨状ネット拡散でリスク増

◎米同時テロで注目

 関西大の串崎真志教授(臨床心理学)によると、遠い場所の出来事が原因で生じる共感疲労が初めて注目されたのは、01年の米同時テロだった。串崎教授は「世界貿易センタービルが崩落する映像がテレビ画面に繰り返し流れ、日本の視聴者にも心理的負担を生じさせた」と指摘する。

 その後のネットの進化は、共感疲労のリスクを増大させたとされる。戦争や災害の惨状が個人によって発信、拡散されて、従来なら目にしない残酷な画像などに接する懸念が高まったからだ。

 ウクライナ侵攻では、現地の人々がSNSで窮状を訴えて、共感と支援の輪が広がった。ネットの即時性の強みが発揮される一方、ロシア軍の戦争犯罪の疑惑が浮上してから情報は悲惨さを増している。

 情報に接する時の心理状態も、共感疲労に影響する可能性がある。実生活でストレスを抱えたり、人と接する機会が少なく、他者と気持ちを共有できなかったりすると、情報から受ける刺激が強まる恐れがあるからだ。

 串崎教授は「ウクライナに共感することはもちろん大切」とした上で、「何が起きているかを知ることと、心の健康を守ることの両立を心がけてほしい」と話している。

    ◆共感疲労に対処するポイント
  • ▽画像などを長時間見るのを避ける
  • ▽地図を見て、自分と現地が離れていることを確かめる
  • ▽感じたことや不安に思っていることを人に話す
  • ▽生活習慣を整える
  • ▽適度な運動でストレスを軽減する
  • ※取材を基に作成


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