東峰村再生 氏子の務め…九州北部豪雨5年、犠牲の妻へ「頑張る」

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亡くなった妻のみな子さんへの思いを語る熊谷武夫さん(5日午前10時10分、福岡県東峰村で)=佐伯文人撮影
亡くなった妻のみな子さんへの思いを語る熊谷武夫さん(5日午前10時10分、福岡県東峰村で)=佐伯文人撮影

 福岡、大分県に甚大な被害をもたらした九州北部豪雨から5年となった5日、被災地では、犠牲者をしのび、静かに手を合わせる人の姿があった。復旧工事の長期化から、住み慣れた場所での再建がかなわなかった住民もいる。(植田優美、饒波あゆみ)

 「もう、5年がたったよ」。3人が亡くなった福岡県東峰村。台風4号の接近で追悼行事が中止となり、村のサイレンに合わせて自宅近くで黙とうした熊谷武夫さん(77)は、妻みな子さん(当時66歳)に心の中で語りかけた。妻はあの日、自宅にいて家ごと流された。

 熊谷さんは、自宅から約500メートル離れた高台にあるキャンプ場の管理棟で電話番をしていた。昼前にみな子さんが「お弁当、 うてこようか?」と顔を出したが、手元にあるカップ麺を見て断った。その後、天候は一変し、みな子さんから「雨が激しいから、帰らない方がいい」と電話で伝えられ、それが最後の会話となった。

 40年連れ添い、近所でも、仲がよい夫婦で知られていた。「元気な『たけちゃん』でなくなるのではないか」。周囲の心配をよそに、熊谷さんは仕事や地域活動をすぐに始めた。水道メーターの検針、新聞の集金、キャンプ場の管理人、地元・岩屋神社の氏子総代――。豪雨前と変わらぬ姿があった。

 2年の仮設住宅暮らしをへて、神社近くに家を借りると、一層、活動に力が入った。知人の伊藤英紀さん(70)は「元々人と交わるのが好きな人だったけど、1人になって地域とつながろうとする気持ちが強くなったのでは」と話す。

 この春、岩屋神社で、新型コロナウイルス禍で中止が続いた護摩たきが復活した。「これ以上途絶えさせてはいけない」と、自費で再開させた。地域の仲間と年2回行う境内の大掃除も欠かさない。疫病退散の願いを込めた「獅子入れ」も3年ぶりに行う予定だ。

 「嫁に先立たれると大変だぞ」。周囲には、そんな冗談も言えるようになったという。地元合唱団に所属し、発表会で県外にも出かけたみな子さんは、いつも明るく元気な妻だった。「『氏子総代、まだしよるとね。もうだれかにさせたら』。そう言われそうだけど、もう少し頑張っていかんとな」と熊谷さんは語り、照れくさそうに笑った。

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