極上の水辺、静けさひときわ…東北縦断ドライブ<中>

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東北総局長 池辺 英俊

 一つ大事なことを書き忘れていた。

 この旅は私一人ではない。連れがいる。長距離の運転も交代だったので疲れなかった。ただ、連れは自分の名や顔が出ることは「絶対NG」。私も連れとの会話を正直に書けば、家庭内の力関係がばれてしまう。よって単独行のような書き方になることをお許しいただきたい。

高原散策の醍醐味、手軽に…八幡平

 閑話休題。2日目早朝、雄大な山々のパノラマの中、八幡平アスピーテラインを快走。その後、日本百名山の一つで高山植物の宝庫、八幡平をトレッキングした。レストハウスのある駐車場から山頂まで手軽にアクセスができる。本格登山の経験のない方でも季節と天候さえ選べば、雄大な自然を楽しめる。私も百名山の半分ほどを踏破したが、これほど楽な登頂は、ほかには同じ東北の蔵王(宮城・山形県)くらいか。

八幡平を散策すると、美しい沼がいくつも。空の青と木々の緑を鏡のように映し出す
八幡平を散策すると、美しい沼がいくつも。空の青と木々の緑を鏡のように映し出す

 だが、百名山の作者、深田久弥が「八幡平の真価は、やはり高原逍遥(しょうよう)(高原を気ままに散策すること)にある」と指摘したように、登頂よりも大小の沼や湿原が点在する高原の散策こそ、八幡平の醍醐(だいご)味だ。木道や石畳が整備されているので快適な1時間余のウォーキングとなった。透き通った沼の水面には、空の青と木々の緑が鏡のようにきれいに映し出される。「夏の緑も鮮やかだけど、紅葉期の赤じゅうたんの樹海は極上の眺めですよ」と高齢の登山者が教えてくれた。

青森産のヒバを大量に使って造られた鶴の舞橋。岩木山が隠れてしまい、残念!
青森産のヒバを大量に使って造られた鶴の舞橋。岩木山が隠れてしまい、残念!

 再び東北道を北上。一気に青森・津軽へ飛ばし、岩木山をバックに、全長300メートルの木造三連太鼓橋「鶴の舞橋」を撮影。引き返す形で、宿泊先の奥入瀬渓流ホテルに到着。経営破綻したホテルや旅館の再生で有名な星野リゾートのホテル。「さすが」と思わせるおもてなしや配慮がいくつもあった。

 部屋にはマッサージチェアがあり、「温泉に何度でも入って」と言わんばかりにタオル、バスタオルが何枚も。浴衣はデザインも着心地も秀逸。夜には奥入瀬観光をより深く楽しむための無料講座も開催。「渓流歩きは水源の十和田湖方向へ、水流と反対に歩いた方がより美しい眺めが楽しめますよ」。これも知ると知らぬでは大違いである。

マイナスイオンを思いっきり…奥入瀬渓流

千変万化の美しい奥入瀬渓流の流れ
千変万化の美しい奥入瀬渓流の流れ

 翌朝、「三乱の流れ」から「雲井の滝」まで奥入瀬渓流沿いを約1時間かけて歩いた。ゆったりと静かな清流、幾重にも激しくぶつかり合う乱流。渓流は静と動、多彩な表情を見せる。大小の岩を覆うコケとブナの原生林の緑と水流のコントラストは見飽きることがない。大量の水の落下が楽しめる「銚子大滝」では、何度も深呼吸してマイナスイオンを思い切り吸い込んだ。

 唯一、残念だったのは、渓流沿いの道路を往来するトラックの多さ。興ざめだし、第一危ない。

コロナ下で快適な観光、複雑な思い

大量の水量とマイナスイオン、豪快な銚子大滝
大量の水量とマイナスイオン、豪快な銚子大滝

 東北を代表する景勝地の奥入瀬、八幡平ではこの夏、コロナ禍で客は激減。その分、私は例年より静かな環境で大自然との一体感を味わうことができた。近隣地域の観光は「マイクロツーリズム」として推奨されているので、仙台市民の私が東北観光を楽しむことは決して悪いことではないはずだ。でも、感染者増のニュースに触れるたびに、後ろめたいような思いにとらわれる。同時に、旅と日常の境にきっちりラインを引けない自分に少々いらだつ。

 (東北縦断ドライブ<下>はこちら <上>はこちら

■「We Love みちのく」記事一覧はこちら

【東北縦断の旅・主な行程】
 1日目 仙台市→奥州市前沢→平泉町→奥州市水沢→アクティブリゾーツ岩手八幡平(八幡平市)泊
 2日目 八幡平市→鶴田町・鶴の舞橋→星野リゾート奥入瀬渓流ホテル(十和田市)泊
 3日目 奥入瀬→十和田湖→つなぎ温泉ホテル紫苑(盛岡市)泊
 4日目 盛岡市→宮古市→釜石市→大船渡温泉(大船渡市)泊
 5日目 陸前高田市→気仙沼市→銀山温泉・銀山荘(尾花沢市)泊
 6日目 山形市→仙台市

プロフィル
池辺 英俊(いけべ・ひでとし)
 1966年4月、東京・渋谷生まれ。福岡で青春時代を過ごす。90年、読売新聞東京本社入社、甲府支局で記者生活スタート。その後、政治部に約20年間在籍。首相や外相、自民党幹事長同行の外遊は30回を超える。急性骨髄性白血病の闘病・移植治療を経て、2020年2月に東北総局長として初のみちのく赴任。奥深い自然や文化、人々のあたたかさに感銘を受け、週末ごとに東北各地を巡っている。趣味は、山登り(特に富士山は9回登頂し、著作もあり)、ゴルフ、読書(主に歴史小説。最近、宮城を舞台にした山本周五郎「樅ノ木は残った」を読破)。

無断転載・複製を禁じます
1549750 0 We Love みちのく 2020/10/15 12:00:00 2020/10/23 10:37:57 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201015-OYT1I50037-T.jpg?type=thumbnail

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