震災の記憶、心にとどめる旅…東北縦断ドライブ<下>

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東北総局長 池辺 英俊

 今の東北を語る上で、まもなく発生から10年を迎える東日本大震災は避けて通れない。観光旅行記ではあるが、「一人でも多くの方に被災地を訪れてほしい。たくさんの犠牲者を出した震災の教訓を風化させないためにも」との思いから、被災地訪問について記したい。

胸に迫る津波の脅威…三陸の伝承施設

 太平洋沿いの三陸道は、復興の過程で整備が急速に進んでいる。これを南下する途中、岩手県釜石市と陸前高田市でそれぞれ震災伝承施設を訪ねた。

右が奇跡の一本松。左は津波で破壊された震災遺構のユースホステル
右が奇跡の一本松。左は津波で破壊された震災遺構のユースホステル

 陸前高田の津波伝承館「いわてTSUNAMIメモリアル」は、有名な「奇跡の一本松」が残った場所にあり、「道の駅 高田松原」と併設され、国営追悼・祈念施設と一体になっている。宮城県内の震災施設はほぼ全て訪問したが、それらよりずっと大規模だった。

津波伝承館内にある、津波に押し流され、潰された消防車。津波の威力のすさまじさが伝わってくる
津波伝承館内にある、津波に押し流され、潰された消防車。津波の威力のすさまじさが伝わってくる

 館内は歴史、事実、教訓、復興の4ゾーンからなる。津波に押し流され、ぺしゃんこに潰れた消防車が、津波の威力を物語る。各種映像が充実していて、街を破壊し尽くす津波の脅威と発生メカニズム、救命と復興に尽力した人々の必死の活動などを視聴した。

 「自然は時に計り知れぬ巨大な力で多くの尊い人命を奪い去る」という厳然たる事実にあらためて胸が詰まる思いがする。

青い海に奇跡の一本松

 余韻冷めやらぬまま施設を出て、防潮堤の階段を上ると海が広がり、献花スペースに出る。手を合わせ、青くきれいな海に癒やされる。だが、津波の映像を目にしたばかりだけに、「海はこんなにも表情を変えるものなのか」という思いにとらわれる。右手に復興のシンボル、奇跡の一本松が見える。本物はすでに枯れてしまい、今のものは整備されたモニュメントだそうだが、震災後も約7万本の中で唯一生き残った「奇跡」に変わりはない。そのすぐ隣、まるで巨大な怪獣に踏みつぶされたかのようなユースホステルの遺構もインパクト大だ。

献花の場がある「海を望む場」から見た、津波伝承館、追悼の広場
献花の場がある「海を望む場」から見た、津波伝承館、追悼の広場

 やや余談になるが、この旅の約1か月後の9月21日、福島県双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪ねた。オープン翌日で、整理券をもらってから入館するのに2時間近く待たされるほどの人出。岩手、宮城の震災施設では津波被害に重点が置かれているのに対し、原発事故や廃炉、約16万5000人もの住民避難、風評被害など福島ならではの複合災害がこの10年、そして今なお住民の生活に深刻な影響を及ぼしている実態を学ぶことができた。

 コロナ禍の最近、北関東などの高校では「3密回避」のため、修学旅行先を東京ディズニーランドから東北に変更するケースが相次いでいるという。迎える側の東北では震災の教訓・伝承の道として、被災地を結んだ「3.11伝承ロード」を形成する取り組みが進んでいる。広島や長崎で核兵器の悲惨さ、平和の尊さを学ぶように、東北の被災地で震災の記憶を心にとどめ、防災・減災の大切さを体験学習する機会が今後、広がっていくことを切に願う。

大正レトロに浸る…山形・銀山温泉

大正レトロな旅館が並ぶ銀山温泉
大正レトロな旅館が並ぶ銀山温泉

 旅の最後の宿は、山形県の銀山温泉。コロナ禍の夏でも宿は予約困難なほどの人気ぶり。大正レトロな旅館が並び、タイムスリップしたような気分で、観光と回想を同時に楽しむ。懐かしさといえば、この後訪れた山形市の中心街にも、「水の町屋 七日町御殿(ごてん)(ぜき)」という一見、時代劇の撮影現場のようなエリアがあった。日本の原風景が多い東北ではこうしたノスタルジックな空間がとてもよく似合う。

 コロナ下の旅行は「団体から少数へ」「遠隔地から近隣へ」の傾向にある。その分、自ら旅をプロデュースしたいというニーズも増すだろう。私の「欲張りな」旅のコラムが、皆さまの旅の参考になれば、さらにその旅先が東北だったら、一みちのくファンとして大きな喜びである。

 (「東北縦断ドライブ」は今回で終わりです。次回はこちら

■「We Love みちのく」記事一覧はこちら

【東北縦断の旅・主な行程】
 1日目 仙台市→奥州市前沢→平泉町→奥州市水沢→アクティブリゾーツ岩手八幡平(八幡平市)泊
 2日目 八幡平市→鶴田町・鶴の舞橋→星野リゾート奥入瀬渓流ホテル(十和田市)泊
 3日目 奥入瀬→十和田湖→つなぎ温泉ホテル紫苑(盛岡市)泊
 4日目 盛岡市→宮古市→釜石市→大船渡温泉(大船渡市)泊
 5日目 陸前高田市→気仙沼市→銀山温泉・銀山荘(尾花沢市)泊
 6日目 山形市→仙台市

プロフィル
池辺 英俊(いけべ・ひでとし)
 1966年4月、東京・渋谷生まれ。福岡で青春時代を過ごす。90年、読売新聞東京本社入社、甲府支局で記者生活スタート。その後、政治部に約20年間在籍。首相や外相、自民党幹事長同行の外遊は30回を超える。急性骨髄性白血病の闘病・移植治療を経て、2020年2月に東北総局長として初のみちのく赴任。奥深い自然や文化、人々のあたたかさに感銘を受け、週末ごとに東北各地を巡っている。趣味は、山登り(特に富士山は9回登頂し、著作もあり)、ゴルフ、読書(主に歴史小説。最近、宮城を舞台にした山本周五郎「樅ノ木は残った」を読破)。

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1567807 0 We Love みちのく 2020/10/22 12:00:00 2020/10/29 12:27:27 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201019-OYT8I50103-T.jpg?type=thumbnail

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