いい米と水とモーツァルト…こだわりが生む福島の美酒
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東北は、酒蔵があちこちに点在する酒どころだ。寒冷な気候に加え、いい米に、いい水と、酒造りの条件がそろっているという。赴任地の福島で好みの酒を求め、酒蔵めぐりを始めた。
飯豊山の伏流水で純米酒…喜多方の蔵元

昨年の暮れ、電車を乗り継いで訪ねたのは、福島県の北西部、喜多方市にある「小原酒造」。江戸時代中期、1717年(享保2年)創業の老舗だ。周辺には蔵が立ち並び、古くからの街並みが残る。
コロナ禍だが、消毒や「密」の防止など感染対策をとって一般の見学を受け入れていた。
「うちの蔵は純米の酒しか造っていません」。10代目の小原公助社長(65)が説明してくれた。醸造用アルコールを使わず、米と米
さっそく江戸時代から続く醸造場をのぞかせてもらった。冬場に仕込む「寒造り」で、米を洗い、蒸し、麹を造るといった工程を、昔ながらに1か所で行っているという。
気温は5度前後。屋根の木組みが見える合掌造りの建物に、新酒のフルーティーな香りがほのかに漂い、酒飲みの心が躍る。
モーツァルトで酵母に刺激

酒造りでは、蒸米や麹、酵母を仕込んで1か月ほどかけてアルコール発酵させ、
銘柄は「蔵粋(くらしっく)」。仕込みタンクの上に取り付けられたスピーカーから、モーツァルトの交響曲や管弦楽曲を流すことで、「酵母が刺激を受けて活発に動き、いい酒ができる」というから面白い。小原社長はかつて国税庁醸造試験所で1年間の講習を受けた時、この研究を行い、「演歌やポップスよりもクラシック、それも音域が比較的高いモーツァルトの曲が効果的なことがわかった」という。こんな裏話を蔵人から聞けるのも酒蔵めぐりの魅力に違いない。
会津で日本酒の奥深さ知る

続いて足を運んだのは、お隣の会津若松市にある「末廣酒造 嘉永蔵」。江戸時代末期の1850年(嘉永3年)に創業し、
「密」を避けるため、1回10人までの酒蔵見学に参加させてもらった。雑菌を持ち込まないように、手指を消毒し、サンダルに履き替える。

「日本酒は、米、麹、お水を発酵させて
貯蔵庫には、40年以上保管されている大吟醸酒も並び、「お酒には基本的に賞味期限や消費期限がありません。保存状態がよければいつまでも熟成させて楽しめます」と聞いて驚いた。こんなうんちくを聞けるのも楽しい。
見学後、新城希子・専務取締役に、日本酒と料理の取り合わせや、酒器や酒の温度による香りや味わいの相違も教えてもらった。日本酒の奥深さを垣間見た思いだった。
福島県酒造組合に聞くと、福島では約60、日本全国では1500以上の蔵元があるという。さて、次はどこを訪ねようか。
