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だるまストーブで身も心もじんわり…津軽鉄道乗車記

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青森支局長 金子 亨

 寒さ厳しい津軽の冬にうってつけの列車がある。「日本で一番北にある私鉄」として知られる津軽鉄道(津鉄)のストーブ列車だ。だるまストーブで温まるだけでなく、そこでスルメも焼いてもらえる風変わりな車両に乗ったのは昨年12月の土曜日。ついでに太宰治の生家も訪ねてみた。そんな日帰りの小旅行を時系列でリポートする。

冬の名物列車で20キロの旅

機関車に牽引され、金木駅に到着したストーブ列車(右)。専用客車は最後尾だ(青森県五所川原市で)
機関車に牽引され、金木駅に到着したストーブ列車(右)。専用客車は最後尾だ(青森県五所川原市で)

 9時52分 弘前駅行きのJR奥羽線は、定刻通り青森駅を出発した。晴天。旅行日和なり。雪が本降りになるのはこれからという時期だったが、それでも所々で田んぼが雪に覆われている。10時30分、川部駅で下車。深浦駅行きのJR五能線に乗り換える。

 10時39分 川部駅発車。列車はリンゴ畑を縫うように走る。11時8分、五所川原駅に到着。青森駅からのJR運賃は990円。そのまま津鉄のホームにも行けるが、切符を買うためいったん改札口を出て、JR駅に隣接する津鉄の駅舎に向かう。

切符は昔懐かしい硬券
切符は昔懐かしい硬券

 津鉄は、津軽五所川原駅と津軽中里駅間の20・7キロ・メートル、計12駅を結ぶローカル鉄道だ。開業は1930年(昭和5年)。同年冬からストーブ列車の運行も始まったという。両駅間の運賃は870円だが、ストーブが置かれた専用客車に乗るには、区間にかかわらず1回の乗車につきプラス500円が必要だ。切符は昔懐かしい硬券。改札を経てホームへ。専用客車が連結された4両の列車が入線し、乗車。すべて自由席で、だるまストーブの横の席に運良く座れた。

スルメ焼きと地酒がしみる

スルメを網に押しつけて焼く乗員の女性。香ばしいにおいが漂う
スルメを網に押しつけて焼く乗員の女性。香ばしいにおいが漂う

 11時50分 津軽五所川原駅を出発。ストーブの中で石炭が赤々と燃えているのが見える。ほどなくスルメの販売が始まった。1枚500円(税込み)。袋の口を開けた状態にして待つ。軍手姿の乗員が順番にスルメを受け取っては、1枚ずつストーブの網の上で焼いてくれるスタイルなのだ。

 乗員が八つ裂きにして、袋に入れてくれたアツアツのスルメを頬張る。じんわりイカの風味が広がる。車内販売の地酒(税込み1本350円)をグビリ。じーんとしていると、乗員による沿線ガイドがスピーカーから聞こえてきた。車窓から見える岩木山の標高は1625メートルで、「16歳の双子」と覚えればいいそうだ。その昔、津鉄の嘉瀬駅から夢を抱いて東京へと旅立った少年は、のちの吉幾三さんだという。

 12時35分 終点の津軽中里駅着。食堂でもやしラーメンを食べ、一息。

 13時37分 津軽中里駅発。五所川原方面に戻る。今回は一般車両に。

喫茶店「駅舎」の外観はメルヘンチックだ
喫茶店「駅舎」の外観はメルヘンチックだ

レトロな喫茶店で一服

 13時49分 芦野公園駅着。ここで途中下車したのは、駅にある喫茶店に寄りたかったからだ。その名も「駅舎」。実際に駅舎として使われていたという店内は昭和レトロ感たっぷりだ。かつてここで乗客が切符を買い、列車を待っていたのかと思いをはせつつ、コーヒーを味わう。

太宰治の生家は風格たっぷり

 14時40分頃 喫茶店から20分ほど歩き、太宰治記念館「斜陽館」に着いた。どうだどうだと言わんばかりの圧倒的な風格。これぞ豪邸である。

 600円の入場料と引き換えにもらったパンフレットによると、太宰の父で、明治の大地主だった津島源右衛門が建てた邸宅は、1907年(明治40年)に落成。1階に11室、2階に8室があり、延べ床面積は約1300平方メートルという。「この父は、ひどく大きい家を建てた。風情も何も無い、ただ大きいのである」と太宰は書いたそうだが、素人目には風情豊かに映る。

存在感あふれる斜陽館。どこまでも大きい
存在感あふれる斜陽館。どこまでも大きい

 まるで老舗旅館のような屋敷は、戦後に津島家が手放すと旅館「斜陽館」として観光名所になり、その後、旧金木町(現五所川原市)が買い取ったそうだ。太宰が生まれた部屋など館内をくまなく巡り、辞する。歩いて金木駅へ。

夕焼けの田園、ああ旅情

 16時12分 金木駅発。夕焼けの津軽平野をローカル鉄道が走る。カタン、カタン。はるばる来たなあという思いになる。

津軽平野の田んぼに夕焼けの空が映っていた
津軽平野の田んぼに夕焼けの空が映っていた

 津軽五所川原駅でJR線に乗り換え。川部駅を経由して18時22分、青森駅に無事到着した。

              ◇

 3月31日まで運行しているストーブ列車は1日3往復。時刻表など詳細は津鉄のホームページで確認できる。問い合わせは本社(0173・34・2148)。

だるまストーブで温まる筆者
だるまストーブで温まる筆者
プロフィル
金子 亨(かねこ・とおる)
 1971年12月、東京・町田生まれ。94年、読売新聞東京本社に入社し、長野支局に。長野五輪を取材したかったが、98年の五輪期間中はテロ警戒要員に。以降、国際部、社会部、モスクワ支局、配信部、ウィーン支局、川崎支局、釜石支局、東北総局、千葉支局などを経て、2020年6月から青森支局長。入社以来、引っ越しは今回で17回目。知らない土地で暮らす楽しさを存分に味わっている。青森は何を食べてもおいしく、体重が増えた。

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1786094 0 We Love みちのく 2021/01/21 12:00:00 2021/01/21 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210119-OYT8I50030-T.jpg?type=thumbnail

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