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「白銀は招くよ」歌いながら滑る樹氷原…蔵王温泉スキー場

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東北統括本部 原田 信彦

トニー・ザイラー主演映画の主題歌、忘れられない思い出

 東北地方はスキー場に事欠かない。雪景色とは無縁の四国・松山で育った筆者だが、社会人になってからスキーの楽しみを覚えた。昨年は雪不足に泣いた東北各地のスキー場も、今シーズンはベストコンディションが続く。1月23日の土曜日、厳冬期には珍しい「晴れ」の予報に誘われ、樹氷の美しさで知られる山形県の蔵王温泉スキー場に向かった。目的は「スキーをしながら歌うこと」である。

爽快な樹氷原のコース。1月の快晴は、めったにないという
爽快な樹氷原のコース。1月の快晴は、めったにないという

 小学校で教わった、忘れられない歌がある。「白銀は招くよ」。60年前に大ヒットした。西ドイツ(当時)で製作された、同名のスキー映画の主題歌だ。そうとは知らず、クラスメートと歌いながら、テレビでしか見たことのないスキー場にいる自分を想像して、胸を躍らせた。「雪の山は友達 招くよ若い夢を」--。

 主役は不世出のアルペンスキーヤーであり、俳優もこなしたトニー・ザイラー(1935~2009)。我々の親世代なら誰もがその名を知っている、オーストリアの人だ。1956年のコルティナダンペッツォ冬季五輪では、アルペン競技で回転、大回転、滑降で3冠の偉業を達成した。

(左)コルティナダンペッツォ冬季五輪で日本人選手・猪谷千春の銀メダルとザイラーの優勝を伝えた読売新聞の紙面。(中)読売新聞に掲載された映画「白銀は招くよ!」の広告(右)。ザイラー来日決定を伝える読売新聞の紙面
(左)コルティナダンペッツォ冬季五輪で日本人選手・猪谷千春の銀メダルとザイラーの優勝を伝えた読売新聞の紙面。(中)読売新聞に掲載された映画「白銀は招くよ!」の広告(右)。ザイラー来日決定を伝える読売新聞の紙面

 ザイラーは映画が公開された1959年秋に来日、日本映画のロケのため蔵王温泉スキー場にも滞在した。そこで蔵王の自然美と人情に触れ、その魅力を世界に伝えたという。2011年には功績をたたえる顕彰碑がゲレンデに建てられた。

 最近になってそんな縁を知り、頭の中に「白銀は招くよ」のメロディーが流れた。なんとしても、樹氷の森を滑りながら歌いたい。

青空に映える“モンスター”

 蔵王温泉は、東北地方を南北に貫く奥羽山脈の西側にあたり、日本海から吹き付ける季節風の影響をまともに受けるので荒天が多い。晴れをもたらす高気圧と週末が重なるタイミングをひたすら待った末、1月23日、ついに好機が訪れた。

 仙台の自宅を午前6時半に出発、2時間足らずで、山形自動車道のインターチェンジから最も近い「大森ゲレンデ」の駐車場に到着した。期待通りの青空に、いそいそとリフト券を購入し、装備を整える。標高が高いスキー場なので、防寒対策は入念にしておきたい。

 蔵王温泉スキー場には、26のゲレンデと、ロープウェーやゴンドラを含めた約40本のリフトがあり、国内最大級の規模を誇る。上部一帯が、名高い樹氷原だ。

ゴンドラの「地蔵山頂駅」から、地蔵岳方向に登る山スキーヤーの列 
ゴンドラの「地蔵山頂駅」から、地蔵岳方向に登る山スキーヤーの列 

 スキー場の最上部「地蔵山頂駅」に到達するには、ロープウェーとゴンドラを乗り継ぐルートが一般的だ。ただ、観光客も利用するロープウェーは、とても混雑する。そこで大森ゲレンデと、上部の「黒姫ゲレンデ」の高速リフトを乗り継ぐルートを使うことにした。リフト終点から500メートルほど滑り降りると、ゴンドラの乗り場に合流できるのだ。

 ゴンドラにはスキーヤーやスノーボーダーに混じり、観光客の姿も少なくない。目指す山頂駅に着くと、係員男性が「1月でこんな青空とは、本当にまれだ」と教えてくれた。駅舎から一歩出ると、「モンスター」と呼ばれる樹氷が林立する。山頂駅の先にある「地蔵岳」(1736メートル)の山腹に、徒歩で高みに向かう山スキーヤーの列が見える。さあ、樹氷を堪能しながら、いくつものゲレンデをつなぐ長距離滑降を楽しもう。

右手にスマホ、左手にストック…緩斜面で録画開始

 スタート直後は「ザンゲ坂」と呼ばれる、樹氷原を縫うつづら折りの狭いコースを下りる。おそるおそる滑っていくと、だだっぴろい緩斜面に出た。歌いながら録画するなら、おそらくここしかない。

トニー・ザイラー顕彰碑。奥に「ザイラーコース」のゲレンデが見える
トニー・ザイラー顕彰碑。奥に「ザイラーコース」のゲレンデが見える

 録画状態のスマホを右手で構え、左手にストックを持つ。近くに人がいないことを確認して、ゆっくり滑りながら歌い出す。「ゆきのやーまはとーもだちー」。周囲はモンスターの群れと青空。おお、気持ちがいい。やみつきになりそうだ。だんだん声が大きくなる。「まねくよー わかいーゆめをー」。しかしもうすぐ急斜面にさしかかる。ワンコーラス歌わぬうちに録画は終了。歌もスキーも下手なのだから仕方がない。とりあえず、目標は達成した。

 「ザンゲ坂」の途中から、トニー・ザイラー顕彰碑のある広場に行ける。御影石でできた、アーチ状のモダンなデザインが目を引く。碑の背後に見えるゲレンデは、その名も「ザイラーコース」。中~上級者向けの急斜面だ。ここまで来たのだからと、覚悟を決めた。上からのぞき込むと身がすくんだが、意を決して滑り出した。それこそ清水の舞台から……の気分だ。きっとすぐ転ぶと思ったが、とても細かいパウダー質の雪で、速度を制御しやすい。なんだかレベルアップした気分になった。蔵王さまさま、である。

広大なゲレンデから山形市街が遠望できる
広大なゲレンデから山形市街が遠望できる

 リフトでザンゲ坂に戻り、もと来た大森ゲレンデ方面を目指す。広大なゲレンデの向こうに、山形市の街並みが広がる。さあ、続きを歌おう。「わき上がる雲 樹氷の林 輝く銀のスロープ」--。

目の前はゲレンデ、美肌効果の露天風呂を満喫

 思う存分滑った後の楽しみは、もちろん温泉だ。蔵王温泉では、あちこちの宿や公営の浴場で手軽に入浴できる。今回は日帰り入浴を受け入れている「蔵王アストリアホテル」の露天風呂に立ち寄った。目の前がゲレンデという、絶好の場所にある。蔵王の湯は、pH値が2を切る強酸性。顔を洗うと目にしみて困るくらいだが、高い美肌効果があるという。体を伸ばして漬かっていると、空から小雪が舞い落ちてきた。天気はしだいに下り坂らしい。山形名物の玉こんにゃくを土産に帰ろうとして、ふと思った。

 ザイラーは滞在中、玉こんにゃくを食べたのか?

プロフィル
原田 信彦(はらだ・のぶひこ)
1967年3月、愛媛県生まれ。大学入学で上京、バブル景気を横目に貧乏学生として過ごし、90年、読売新聞東京本社に入社。横浜支局での警察担当を振り出しに、編成部、松本支局を経て科学部へ。約20年にわたる科学記者生活では、素粒子から天変地異まで、科学が関わる様々な出来事を取材、つくば支局長も務めた。昨年2月に東北統括本部に異動し、初めての「みちのく生活」を満喫中だが、コロナ禍のために東北のお祭りはおあずけ状態。雪と無縁な四国育ちゆえ、スキーは「自己流ド素人」。

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1863538 0 We Love みちのく 2021/02/25 12:00:00 2021/02/25 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210210-OYT8I50096-T.jpg?type=thumbnail

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