青森・黒石のB級グルメに舌鼓
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見た目たぬきソバ、味はウスターソース
あつあつのやきそばに、あつあつのだし汁をかけたB級グルメ。それが、青森は黒石市が誇る「黒石つゆやきそば」だ。未知の味を求め、初めて訪れた黒石。そこは見どころいっぱいの街でもあった。

黒石は、自宅がある青森市の隣の市。高速を使えば40分そこそこで行けることを確認し、土曜日の3月27日に向かった。昼時に到着したため、早速、目星をつけていた「すずのや」ののれんをくぐる。当方、食べ盛りの49歳とあって、迷わず大盛りを注文。はやる気持ちを抑えつつ、つゆやきそばのルーツが記された説明書きを読む。

それによると、地元の食堂兼飲み屋で誕生したのは昭和30年代。作り置きの冷めた麺につゆをかけて温かくしたという説と、腹持ちさせるためにつゆを足したという説があるそうだ。店はほどなく閉じられたが、「すずのや」の主人はここをよく訪れていたといい、舌の記憶を頼りに味を再現したと教えてくれた。
来店した数々の著名人の写真を眺めていると、目当ての一品が登場。太く平らな麺が黒っぽいつゆにつかっている。刻みネギと揚げ玉がちりばめられた見た目は、たぬきソバに似ていなくもない。
つゆは和風と中華のブレンドというが、やきそばのウスターソースの味が勝っていると感じる。ウスター好きの自分にはたまらぬ味付けで、箸が止まらない。七味とソースをちょい足しして「味変」するのもオススメだ。
1杯550円で、大盛りは150円増し(税込み)。おやつとごはんの中間のような食べ物に満足して店を出ると、そこには「中町こみせ通り」が広がっていた。

連なる庇、藩政時代にタイムスリップ
「こみせ」とは、通りに面した町家の正面に設けられた
一角に蔵のような建物を見つけた。「手作り雑貨・体験工房 IRODORI(いろどり)」。黒石の夏を彩るねぷたの絵を切り取って作った灯籠やうちわが飾られており、ライトに照らされた色とりどりの絵柄が美しい。自ら制作することもできると聞いて、うちわ作りに挑戦。いい感じの一点ものが仕上がった。

そぞろ歩きを再開。土産物店「津軽こみせ駅」に足を踏み入れると、三味線の無料演奏会が開かれていた。最後の一曲「津軽じょんから節」が始まるところで、ぎりぎり間に合った。
奏者がバチと指で弦をはじく。耳にも心にも音が響き、血が騒ぐ。いても立ってもいられなくなるこの感情を地元では「じゃわめぐ」と言い表すそうだが、次は開催日時を事前に確かめたうえで、じゃわめぐ生演奏を最初から聴きたい。
津軽系こけしにときめく
こみせ通りは弘南鉄道の黒石駅から徒歩で約10分。ローカル線に乗って来ることも考えたのだが、車を選んだのは、ほかにも訪ねたい場所があったからだ。
それが、こみせ通りから車で15分ほどの「津軽こけし館」だ。「必ず、見つかる。トキメクこけし」のキャッチコピーの通り、自分のような中年男の心もときめかせる伝統こけしがずらりと並ぶ。こけしは東北地方に11系統あるそうだが、買うならやはり地元の津軽系だろう。同じように見えても表情が微妙に異なっており、選び抜いた一つを買い物カゴに入れた。

館内では、女性の工人が津軽伝統のコマ「ずぐり」の制作を実演していた。軸が太く、雪の上でも回せると本紙青森県版で紹介されていた雪国のコマ。これも一つ買い求め、後日、自宅で試してみると、畳の上でもクルクル回ってくれた。
夕刻が近づいてきた。こけし館から車で数分の「
◆黒石市 青森県のほぼ中央に位置する城下町で、リンゴの産地や津軽系こけし発祥の地として知られる。扇形や人形のねぷたが市街地を練り歩く「黒石ねぷた祭り」は夏の伝統行事だが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止となった。人口は約3万2000人。

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