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福島・裏磐梯を散策…湖沼の色合いに感嘆、ふしぎな生き物にも遭遇

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福島支局長 広中正則

水中の鉱物微粒子に陽光が反射…「人間では作り出せない色」

 木々の緑が濃さを増し、野山の散策にはいい季節になった。6月中旬、福島の名峰・磐梯山(1816メートル)の麓にある 五色沼(ごしきぬま) 湖沼群(北塩原村)を訪ねた。陽光のさす角度や天候によって変化する水の色合いや、裏磐梯にすむ生き物との出会いに心が和んだ。

水面が青白い青沼。水中に溶け込んだ鉱物の微粒子が陽光に反射しているという
水面が青白い青沼。水中に溶け込んだ鉱物の微粒子が陽光に反射しているという

 福島市から車で約1時間。湖沼群をめぐる探勝路の西側入り口に着いた。標高約820メートル。朝の気温は18度。青空の下、高原を吹き抜ける風が心地いい。

 五色沼湖沼群は、磐梯山の北側約5~8キロのエリアに東西に点在する30余りの沼の総称だ。「五色」は多様な色合いを表す。

 歩き始めてすぐ、左手に柳沼が現れた。水面は緑っぽい。さざ波がおさまると、柳やアカマツの緑がくっきり映る。吸い込まれそうな感覚になる。「透明度が高いので鏡のようになるんです。紅葉の時期も最高ですよ」。ガイドとして同行してもらった蓮岡真さん(43)が言った。

柳沼は透明度が高く、鏡のように周りの木々を水面に映す
柳沼は透明度が高く、鏡のように周りの木々を水面に映す

 蓮岡さんは、自然の保護や、教育、観光などでの活用を進める「磐梯山ジオパーク協議会」でジオパーク専門員を務める。ジオパークは地形学的、地質学的に価値の高い場所を指し、五色沼湖沼群もその一部をなす。

 木漏れ日を浴びながら探勝路を進む。ヒグラシにも似たエゾハルゼミの声や、ウグイス、キビタキといった鳥のさえずりが聞こえる。しばらくすると草木の間から青色の水面が見えてきた。青沼だ。近づいてみると、青白い。蓮岡さんに聞くと、火山活動の影響で水中に溶け込んだ鉱物の微粒子などに陽光が反射して微妙な色合いが生まれているとか。「人間では作り出せない色ですよね。陽光が斜めになると反射の仕方が違うし、曇っているともっと青く見えます」

 沼底に「ウカミカマゴケ」という希少なコケ類がカーペットのように群落をつくっているところは水面が緑がかっていて、色の移ろいが神秘的にも感じられた。

噴火で流れてきた巨岩を自らの墓石に

瑠璃沼で説明するジオパーク専門員の蓮岡さん。遠くには133年前に噴火した磐梯山の火口壁も見える
瑠璃沼で説明するジオパーク専門員の蓮岡さん。遠くには133年前に噴火した磐梯山の火口壁も見える

 青沼から探勝路を挟んで反対側には 瑠璃(るり) 沼がある。木組みの展望台から、濃いブルーの水面の向こうに磐梯山を望む。1888年(明治21年)の噴火でむき出しになった火口壁は今も生々しい。

 その噴火では、小磐梯という峰の一つが崩壊。岩なだれとなって麓に流れ下り、477人もの犠牲者が出た。そのとき、川がせき止められたことで生まれたのが、五色沼を含む数百の湖沼なのだという。瑠璃沼には、火口近くの 銅沼(あかぬま) から、鉄やアルミニウムなどが溶け込んだ水が地下水となって湧き出て、青沼にも流れ込んでいるそうだ。

裏磐梯の植林に尽力した遠藤現夢の墓。山体崩壊で流れてきた巨大な岩だという
裏磐梯の植林に尽力した遠藤現夢の墓。山体崩壊で流れてきた巨大な岩だという

 探勝路の周辺には、高さが2メートルを超えるような大きな岩が散在している。これも岩なだれの痕跡らしい。散策の途中、噴火後の荒廃した地にアカマツなどを10万本以上植林した遠藤 現夢(げんむ) (1864~1934年)の墓へ案内してもらった。森を再生し、スイスのような観光地にすることを夢見た現夢は生前、噴火で流れてきた巨岩を自らの墓石に選んだという。今の裏磐梯に、現夢は何を思うだろうか。

2時間半の散策、「いつ来ても魅力的」

オトシブミが卵を産み付け、折りたたんだ木の葉。その名は昔の「落とし文」にちなむ 
オトシブミが卵を産み付け、折りたたんだ木の葉。その名は昔の「落とし文」にちなむ 

 約4キロにわたる探勝路は、元々は植林事業の作業道だった。その周りに再生してきた森には、多様な生物がすみついている。

 蓮岡さんが、土の上に転がっていた1センチほどの緑色の塊を、手のひらにのせた。オトシブミという小さな昆虫が木の葉に卵を産み付けた後、自分のあごを使って折りたたんだものだという。昔、 (おも) い人の通り道に落として拾わせたという「落とし文」にちなむが、子供たちは「森のロールキャベツ」と呼んでいるそうだ。

青や抹茶色、赤褐色など様々な色を持つ深泥沼
青や抹茶色、赤褐色など様々な色を持つ深泥沼

 弁天沼のそばの沢では、体色が瑠璃色のアマゴイルリトンボが石の上にとまっていた。水たまりの上にかかる木の枝には、モリアオガエルの泡状の卵塊が産み付けられていた。国立公園の特別保護地区にあたり、もちろん、とることなどはできないが、珍しい生き物を目にすると、わくわくする。

 青や抹茶色など様々な色を持つ 深泥(みどろ) 沼や、周囲の (あし) の根元が鉄分で赤褐色に染まった赤沼をへて、探勝路の東端にあたる 毘沙門(びしゃもん) 沼に着いた。約2時間半の楽しい散策だった。「春夏秋冬、出会えるものがそれぞれ違うので、いつ来ても魅力的ですよ」と蓮岡さん。自分もリピーターになること、間違いなしだ。

プロフィル
広中 正則(ひろなか・まさのり)
1970年9月、山口県岩国市生まれ。93年、読売新聞東京本社に入社し、宇都宮支局に。以降、地方部内信課、社会部、教育部などを経て、2020年9月から福島支局長。単身赴任の気楽な立場を生かし、福島県内の59市町村すべてに足を運ぼうと、休日のたび観光ガイドを繰っている。

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使い方
2166876 0 We Love みちのく 2021/07/01 12:00:00 2021/07/01 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210629-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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