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白神山地から三内丸山遺跡、種差海岸へ…青森で東北横断ドライブ

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東北総局長 池辺英俊

リクエストに応え、日本海から太平洋へ

 2020年夏、仙台と青森間の東北縦断のドライブ旅をして本欄で 「あれもこれも見たい…記者魂で東北縦断ドライブ」 として紹介した。このコラムを読んでくださった仙台の知人から「今度は東北横断の旅を書いてよ」とリクエストを頂戴し、快諾した。

広大な天然芝の緑と、海と空の青のコントラストが見事な種差海岸
広大な天然芝の緑と、海と空の青のコントラストが見事な種差海岸

 地図を広げる。旅のルートを決める時のこのワクワク感が旅好きにはたまらない。

 横断というからには、東北の日本海から太平洋へ。日本海と太平洋の両方に面している県は北海道を除けば、青森県だけ。しかも、青森県には日本海近くに白神山地、青森市には三内丸山遺跡と、自然と文化の世界遺産が二つもある。さらに太平洋岸には、司馬遼太郎が称賛した種差海岸も。以前からぜひ行ってみたいと思っていたスポットが東西でつながった。

 ルートは決まった。8月中旬、東北道仙台宮城ICを出発。北上ジャンクションで秋田自動車道へ。能代南ICから日本海沿いを走り、秋田県と青森県にまたがる白神山地に到着した。

深い群青色が印象的な白神山地・十二湖の「青池」
深い群青色が印象的な白神山地・十二湖の「青池」

神秘的な深みの青池、ブナの自然林を堪能

 深呼吸をするたびに、肺と体内が浄化されていくようだ。30を超える大小様々な沼や池がブナの自然林の中に点在する青森県深浦町の「十二湖」。神秘的なほど深い群青色に染まる青池に着いた時、思わず「おぉ」と声を上げた。

 厚い雲に覆われた日で、日差しが 水面(みなも) を突き抜けることで現れるという、透き通ったコバルトブルーは残念ながら見ることができなかった。だが、深みのある濃い群青色は長い時間見ていても飽きることはなかった。

白神山地の天然ブナ林の緑を愛でながら、深呼吸をしながら歩く
白神山地の天然ブナ林の緑を愛でながら、深呼吸をしながら歩く

 青池から急勾配の階段を上ると、背の高いブナ自然林に包まれた平らな道が続く。水のブルーの深みを堪能した後に、木々のグリーンのシャワーを浴びながら歩く。ぜいたくな森林浴ウォークだ。

 だが、手つかずの自然はいいことばかりではない。森林セラピーを邪魔するアブなどの虫がたくさんまとわりついて離れない。防虫スプレーを散布しても、虫たちはびくともしない。都会の虫よりはるかにたくましく、実に閉口した。

 十二湖散策は、山の初心者でも白神山地の魅力を体感できる。遺産エリア内の世界最大級のブナ原生林を満喫するならば、「世界遺産の (みち)  ブナ林散策道」がおすすめと聞いた。今回は天候と時間の関係で行けなかった。虫対策とともに、次回の宿題としたい。

教室がすっぽり入りそうな大型竪穴建物

三内丸山遺跡のシンボル、空に向かってそびえるように高い「大型掘立柱建物」
三内丸山遺跡のシンボル、空に向かってそびえるように高い「大型掘立柱建物」

 歴史ファンを自認しているが、遺跡にはあまり興味が持てずにいた。

 織田信長、坂本龍馬など偉人の個性や生き方が明確な時代と比べ、先史時代は具体的なイメージを描くのが難しいと思い込んでいた。そんな「偏見」は三内丸山遺跡を案内してくれた話上手のボランティアガイドの説明を聞くうちに、氷解していった。

 「定住は稲作が伝来してからと教科書で習いませんでしたか? その定説を覆し、狩猟、採集、漁労を基盤とした定住生活を実証したのがこの遺跡なんです」

「大型竪穴建物」の中は広い。内部に入って見学できる。縄文時代のコミュニティーセンター?
「大型竪穴建物」の中は広い。内部に入って見学できる。縄文時代のコミュニティーセンター?

 「粘土舗装された広いこの道は、来客を歓迎するためだったといわれています」

 好奇心をくすぐられるとつい質問したくなるのが記者の (さが) だ。

 「なぜ、雪深くて寒い青森の地に数百人という多くの人が定住したのですか」

 ガイドの男性はさらりと答える。

 「当時の気候は現在より温暖で、ここも今の仙台くらいの気温だったと言われています。ブナの森林、海や川も近く、クリや貝類など自然の恵みが豊富な地で移住する必要がなかったのです」

 なるほど。復元された「大型掘立柱建物」は見上げるほどに高い。何のために作られたのか、定説はないという。「今の日本人があべのハルカスやスカイツリーを仰ぎ見るように、縄文人はこの建物を誇らしげに見上げていたのではないか」と想像力がかき立てられた。

 その隣、「大型竪穴建物」(復元)は国内最大規模で、中に入ることもできた。教室がすっぽり入りそうなほど広い空間。「今でいうコミュニティーセンターだった可能性があります」との説明。ここで合議制による集落運営が行われていたのだろうか。

 千年以上も続いたという大集落は、自然と共存した持続可能な社会ともいえそうだ。現代を生きる私たちに多くの貴重なヒントや教訓を与えてくれる遺跡だと強く感じた。

広大な緑と青の競演、「地球の美しさ」体感

 「どこかの天体から人がきて地球の美しさを教えてやらねばならないはめになったとき、一番にこの種差海岸に案内してやろうとおもったりした」

 司馬遼太郎「街道をゆく」のこの一節を読んで以来、ずっとあこがれていた種差海岸がこの旅のゴールだ。

天然芝生をテクテク歩いて急接近してきたウミネコ
天然芝生をテクテク歩いて急接近してきたウミネコ

 波打ち際まで広がる天然芝と、海と空。広大な緑と青の競演・コントラストが、「地球の美しさ」というものをリアルに教えてくれる。

 数年前、ハワイの人影少ない海岸でまったりした時の心境を思い出した。一切動きたくない、木陰で寝そべり、ゆったりと、目の前の大自然に身も心もゆだねたい――。

 実際にそうしていると、1羽のウミネコが急接近してきた。しかも飛来ではなく、天然芝の上をテクテク歩いて。手を伸ばせば届きそうな至近距離で数秒間、にらめっこをした。

 うたた寝から目覚めて仙台への帰路についたが、すぐにUターン。まったりしすぎてスマホを忘れたのだ。自分が情けなくなったが、別れが惜しかった種差海岸の美景にすぐ再会できたうれしさの方がまさった。

 スマホも天然芝の上に浮かんで待っていてくれた。

【東北(青森)横断の旅・主な行程】

1日目 仙台市→白神山地・十二湖散策コース→黄金崎不老ふ死温泉(青森県深浦町)泊

2日目 深浦町→弘前市で弘前城、洋館巡り→大鰐温泉・星野リゾート 界 津軽(大鰐町)泊

3日目 大鰐町→三内丸山遺跡センター→青森県立美術館→星野リゾート 青森屋(三沢市)泊

4日目 三沢市→八戸市・八食センター→種差海岸→仙台市

※昨年の縦断旅と同様、宿泊代、レンタカー代などはすべて自己負担。同伴者も前回と同じ

プロフィル
池辺 英俊(いけべ・ひでとし)
1966年4月、東京・渋谷生まれ。福岡で青春時代を過ごす。90年、読売新聞東京本社入社、甲府支局で記者生活スタート。その後、政治部に約20年間在籍。首相や外相、自民党幹事長同行の外遊は30回を超える。急性骨髄性白血病の闘病・移植治療を経て、2020年2月に東北総局長として初のみちのく赴任。奥深い自然や文化、人々のあたたかさに感銘を受け、週末ごとに東北各地を巡っている。

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2440947 0 We Love みちのく 2021/10/14 12:00:00 2021/10/14 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/10/20211011-OYT8I50074-T.jpg?type=thumbnail

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