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錦秋の青森・八甲田連峰に登る〈下〉

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青森支局長 吉田尚大

八甲田大岳から酸ヶ湯へ下山、斜面をこぼれ落ちる紅葉

 八甲田連峰の最高峰・八甲田大岳(1585メートル)の山頂で、霧が晴れないかと思って20分ほど待っていたが、青空がのぞく兆しは全くない。あきらめて下山することにした。登りと同じルートではなく、山頂から西側に下って 酸ヶ湯(すかゆ) 温泉に戻るルートだ。ガイドブックにも載っている一般的なルートで、酸ヶ湯温泉までは「2時間20分」となっている。

グラデーションのような紅葉に霧が下りてきた
グラデーションのような紅葉に霧が下りてきた

櫛ヶ峰に日が当たると紅葉が鈍い輝きを見せる
櫛ヶ峰に日が当たると紅葉が鈍い輝きを見せる

 大きな岩が転がる道を20分ほど下ると、20人ほど入れる大岳避難小屋に着く。ここからは酸ヶ湯温泉に向かってひたすら高度を下げていく。薄暗い樹林帯を抜けると霧が薄らぎ、草紅葉の中に木道が通っている湿原「 上毛無岱(かみけなしたい) 」に着いた。見渡すと、八甲田ロープウェーの山頂公園駅がある 田茂萢岳(たもやちだけ) (1324メートル)や八甲田大岳の山頂付近には雲が流れているが、中腹より低い緑色の斜面の上には、紅葉した樹木の赤や黄色がこぼれた液体のように流れ落ちている。

 南側に目を向けると、南八甲田の主峰・ 櫛ヶ峰(くしがみね) (1517メートル)がゆったりとした長大な 稜線(りょうせん) を見せていた。流れる雲の切れ間から、山全体を覆っている木に日が当たると、内側に閉じ込められていた鈍い赤や黄色が呼応するように現れてくる。

雲のように盛り上がるモミジやカエデ

 木道を歩いて行くと、樹林の切れ目の先が明るく開けていた。約280段の急な木の階段の下りの始まりだ。階段の上段に立つと、視界全体に、「 下毛無岱(しもけなしたい) 」と呼ばれる湿原が広がった。コロセウムの観客席のように円形に広がる草紅葉の中に、濃い緑色の針葉樹が散らばっている。8月にはゴルフ場のように緑一色の草原だったが、黄金色に輝くパノラマに一変していた。

10月の下毛無岱は、一変して黄金色の草紅葉が広がる
10月の下毛無岱は、一変して黄金色の草紅葉が広がる

8月には深緑色だった下毛無岱
8月には深緑色だった下毛無岱

 滑らないように気をつけながら下毛無岱まで下った。振り返ると、木の階段を下りきったあたりに、紅葉したモミジやカエデが雲のように立体感を見せて盛り上がっていた。朱色と黄金色、深緑色が鮮やかなコントラストを見せている。これほど色濃い紅葉を見るのは初めてだ。

絵の具のように色鮮やかな紅葉
絵の具のように色鮮やかな紅葉

柱一本ないヒバ造りの「千人風呂」

 岩と木の根で滑らないように気をつけながら高度を下げていくと、紅葉の山の中にうずくまっているような酸ヶ湯温泉の建物が見えてきた。

 酸ヶ湯温泉は1684年(貞享元年)に発見されたと伝わる日本有数の名湯だ。猟師が鹿を追って山に入った時に湧いている湯を見つけ、薬効があることがわかったために「鹿の湯」と名付けられた。これが「酸ヶ湯」へと変わったらしい。

威風堂々とした外観で客を待つ酸ヶ湯温泉
威風堂々とした外観で客を待つ酸ヶ湯温泉

 入社前の1994年12月、旅行で酸ヶ湯温泉に泊まった。青森市で震度5を記録した三陸はるか沖地震に遭遇し、深い闇に包まれた建物がきしむほど揺れたことを覚えている。

 この酸ヶ湯温泉に入ったのは、8月に八甲田大岳から下山して汗だくになった時だ。有名な「千人風呂」に入ると、以前と変わらず、柱一本ないヒバ造りの浴室が広がっている。白く濁った湯につかると、歩き通しだった足から疲れが溶け出していくようだ。

 麓を彩る明るい紅葉と、山頂を覆う濃い霧と……。半日ほどの短い時間に、秋の山の二つの顔に接することができた山旅だった。

プロフィル
吉田 尚大(よしだ・なおひろ)
1971年2月、兵庫県赤穂市生まれ。2021年6月から青森支局長。16~18年の甲府支局デスクの間に、「山梨百名山」の7割と八ヶ岳のほとんどに登った。今回、夏と秋の八甲田連峰を登ったので、雪の冬にもチャレンジしたいとひそかに狙っている。ただ、1902年1月、雪中行軍中だった旧陸軍青森歩兵第5連隊の199人が雪と寒さで命を落とした事件を描いた映画「八甲田山」(77年公開)を見たときの衝撃が大きく、挑戦するかどうか思案中。

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使い方
2474649 0 We Love みちのく 2021/10/28 12:00:00 2021/10/28 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/10/20211022-OYT8I50025-T.jpg?type=thumbnail

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