前に進めないが爽快…冬の青森で地吹雪を体験

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青森支局長 吉田尚大

本州最北端・浅虫温泉

 青森県は記録的な大雪だ。朝、家を出ると、雪が風に乗って飛んでくることがある。だが、地域によっては激しい地吹雪が吹き、観光資源にもなっているらしい。本州最北端の地に吹く地吹雪に会うために、陸奥湾に面した青森市の温泉地・浅虫温泉を訪ねた。

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雪の積もった地面近くに吹く地吹雪
雪の積もった地面近くに吹く地吹雪

 強い風で積もった雪が吹き上げられる現象が地吹雪だ。北国でしか見られないため、青森県五所川原市の地域おこしのボランティアグループ「津軽地吹雪会」が1988年、非日常的な体験をしてもらおうと、地吹雪の中を歩くツアーを開始。観光客に大人気となり、同様のツアーが県内各地で行われるようになった。

 青森駅から電車で20分の浅虫温泉は、温泉や海の幸だけでなく、海水浴や釣りも楽しめる風光 明媚(めいび) な温泉地だ。浅虫温泉駅近くの旅館「南部屋・海扇閣」も地吹雪体験ツアーを行っているため、1月27日、企画室長の三上郁雄さんに案内してもらった。雪国伝統の防寒着「 角巻(かくまき) 」を借りて頭からかぶると、目の詰まった純毛のためにずっしりと重いが、風や雪は防いでくれそうだ。

雪を踏んでほたる湖畔の平らな原っぱに向かう
雪を踏んでほたる湖畔の平らな原っぱに向かう

 車で向かったのは、旅館から1キロほど山に入ったところにある「ほたる湖」。湖畔は膝まで潜るほどの雪に覆われている。平らな原っぱに行き、角巻を敷いてあおむけに寝転がってみる。周りは一面の雪なのに、角巻のおかげで体は暖かいという不思議な感覚だ。

角巻を敷いて寝転がる。履いているのは借りたかんじき(三上さん撮影)
角巻を敷いて寝転がる。履いているのは借りたかんじき(三上さん撮影)

 着いた頃は晴れていたが、次第に海の方の空がグレーに変わり、風が強まってきた。原っぱの前方に薄い白煙がゆらりと立ち上がる。「来ますよ」。三上さんが言った瞬間、白煙が目の前に迫り、一瞬だけだが、全身が雪の粉に包まれた。地吹雪だ。

 雪の結晶のミストを浴びるようで心地よく、寒さや冷たさは感じない。三上さんが言う通り「雪とたわむれる感覚」が楽しめる。旅館に戻って最上階の展望風呂に入った。目の前の陸奥湾に浮かぶ浅虫温泉のシンボル・湯の島を眺めながら温泉につかっているうちに、体も心もいやされる思いがした。

湯煙のような白煙、みるみる膨張し平原覆う

 1週間後、天気予報を見ると強い風が吹きそうだ。海沿いだともっと強烈な地吹雪を長時間体験できそうなので、一人で浅虫温泉に出かけてみた。向かったのは、駅から陸橋を渡ったところにある浅虫海づり公園。三上さんが体験ツアーのお客を案内することがある地吹雪スポットだ。10月に訪れた時は子どもが釣りをしているのどかな公園だったが、真冬は一面の雪に覆われている。

雪に覆われた浅虫海づり公園。右は沖合に浮かぶ「湯の島」
雪に覆われた浅虫海づり公園。右は沖合に浮かぶ「湯の島」

 しばらくすると、厚い雲が広がって日が陰ってきた。風が吹き始め、次第に強さを増していく。雪に覆われた平原の端に、湯煙のような白い煙が立ちのぼり、みるみる体積を増して白い平原を覆っていった。この地吹雪に包まれると、着込んでいるダウンコートに雪の粉が当たって音を立て、風が「ヒューッ」という音を上げながら耳元を通り過ぎていく。顔を上げると、冷たく強烈な地吹雪が直撃するためにとても前に歩けない。うつむいて前かがみになり、膝まで埋まるほど積もっている雪から足を抜き出しながら前に進んだ。ふっと、絵本の「北風と太陽」を思い出した。沖合800メートルに浮かぶ湯の島も、海を挟んで延びる岬も、海沿いに立ち並ぶホテルも雪の粉でかすんでしまい、はっきりとは見えない。

地吹雪と吹雪に襲われる浅虫海づり公園
地吹雪と吹雪に襲われる浅虫海づり公園

1時間で弱まる地吹雪、湯の島の雲間から日差し

 1時間も過ぎただろうか。地吹雪が弱まり、湯の島上空の雲が切れて晴れ間が広がってきた。目の前には元の白い平原だけが広がっている。ダウンコートや手袋は湿っているが、北国ならではの非日常的な体験ができたという充実感があった。浅虫温泉駅に戻り、駅前広場にある足湯に手をひたすと温かさがしみ込んでくる。雪と風と温泉と――。本州最北端の県らしい冬を体感できた時間だった。

 「南部屋・海扇閣」の地吹雪体験付き宿泊プランは、2月28日までで、平日は大人1人1万7750円。ただ、今年は新型コロナの影響で、2月のうち17日間は休館。問い合わせは南部屋・海扇閣(017・752・4411)へ。

プロフィル
吉田 尚大(よしだ・なおひろ)
1971年2月、兵庫県赤穂市生まれ。2021年6月から青森支局長。雪が風に乗って飛んでくると、つい口ずさむのは松任谷由実の「BLIZZARD」。冬の曲といえば松任谷由実や広瀬香美だったが、1月に青森のスキー場に行った時、流れていたのは知らない曲ばかりだったのでショックを受けた。

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2747041 0 We Love みちのく 2022/02/10 12:00:00 2022/04/07 17:19:52 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/02/20220204-OYT8I50096-T.jpg?type=thumbnail

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