懐かしい昭和の記憶よみがえる…秋田市の「油谷これくしょん」でタイムスリップ

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秋田支局長 田中成浩

 まだまだ若いつもりでいても、ふと身の回りを見ると思いの外、かつて知っていた世界、子供の頃の生活とかけ離れていることに気がつくことはないだろうか。

偉大な山湖 瑠璃色の神秘…十和田湖(青森県十和田市、秋田県小坂町)

 昭和40年生まれの筆者も、気がつけば元号は三つ目の令和になり、自分の当たり前が今は通用しないことを、20代前半の記者との雑談で思い知らされたりする。そんな時に、「懐かしい昭和」に会える施設として「 油谷(あぶらや) これくしょん」の存在を知った。

「わらしっ子広場」は、ごちゃごちゃの陳列も懐かしい昭和の駄菓子屋
「わらしっ子広場」は、ごちゃごちゃの陳列も懐かしい昭和の駄菓子屋

明治・大正・昭和のコレクション、かつての小学校にぎっしり

 秋田市の中心部から、およそ14キロメートル、車で30分ほど行った山際、旧金足東小学校の校舎に「油谷これくしょん」は設けられている。運営するNPO法人の理事長・油谷 満夫(みちお) さん(88)が、20歳くらいの時から集めてきた明治・大正・昭和の生活用品などを展示している。油谷さんが収集したものは50万点にも上るのだが、そのうち20万点を秋田市に寄付したことが始まりだ。

懐かしいメンコ。秋田弁ではパッチというらしい
懐かしいメンコ。秋田弁ではパッチというらしい

 入ってすぐに迎えてくれるのは「わらしっ子広場」と名付けられたコーナー。看板のとおり、「昭和の駄菓子屋」そのものだ。ノスタルジックな商品を集めて再現された駄菓子屋は今もあるが、当時のものが並んでいるためか、風格が違う。店先にはメンコ。おそらく、筆者が実際に遊んだ最後の世代なのではないだろうか。

飛行機のイラストに引かれたグライダー
飛行機のイラストに引かれたグライダー

あこがれたグライダー、角張ったカメラに「再会」

 壁に飾られたグライダーにも覚えがある。ゴムを動力にまっすぐ飛ぶだけの簡単なおもちゃなのだが、なかなか手が出る値段ではなく、あこがれたものだ。現在の子供たちがドローンを欲しがるのと同じなのだろうか。あまりの隔世の感にめまいさえ覚える。

改めて見るとやっぱり角張っているカメラ
改めて見るとやっぱり角張っているカメラ

 所在地の地名・金足片田にちなんだ「カタダ金座商店街」にはカメラが並んでいた。もちろん、フィルムカメラたちだ。改めて対面してみると、その角張った形状に驚くが、どこから見てもカメラ然とした形がスマホのアイコン・デザインにも引き継がれている。しかし、そのスマホに主役の座を奪われつつある。オリジナルの形状が記憶から消えていけば、いずれはアイコン・デザインからも消えていくのかと思う。電話の受話器なども同じ道をたどっていくのだろうか。

ワープロ。表示は液晶でも、もちろん通信機能はありません
ワープロ。表示は液晶でも、もちろん通信機能はありません

古いものたちは「思い出の入り口」であり「将来を考えるよすが」

 各コーナーは、「おとなの昭和銀座」「おらほのメインストリート」「くらしの金足村通り」「なつかし青春教室」など味のある名前で、テーマごとに分けられている。展示されているものも様々で、見てすぐにわかるものもあれば、さっぱり見当もつかないものもある。そして、その物量に圧倒される。

たばこ屋のショーケースの後ろでは、おばあちゃんが店番をしていたものです
たばこ屋のショーケースの後ろでは、おばあちゃんが店番をしていたものです

 「古いものたちは、思い出の入り口です。記憶がよみがえれば、その人のものになります。そうして、ものたちと一緒に思い出を楽しんでいってください」

とても88歳には見えない油谷さん
とても88歳には見えない油谷さん

 「今の豊かさと比較して、振り返ると、将来を考えるよすがにもなります」

 油谷さんの展示への思いだ。

集め続けた「消えていく日常の手触り」、どう守るか

報知新聞創刊1号
報知新聞創刊1号

 文字に残すだけでは伝えられないもの、消えていく日常の手触りは、実物に触れることでしか伝えられない。自分の役目は、ものを集めて残すことだと若いうちに心を決め、ゆとりのある生活ではなかったが、手間暇をかけて収集を続けてきたという。

 「油谷これくしょん」で展示しているものたちは、ほんの一部に過ぎない。長く収集を続けてくるうち、持ち込まれるようになった中には、明治から昭和にかけての様々なものがある。「報知新聞の1号」「秋田藩を治めた佐竹家の文書」などから木製の農具や民具まで、当時の世相を伝える貴重なものが多い。そして、それぞれの意味や使い方まで、すらすらと説明してくれる油谷さんの博覧強記ぶりにも驚かされる。

 その油谷さんの目下の悩みは、コレクションのこれからだ。膨大かつ多岐にわたるだけに、維持だけでなく活用についても何らかの仕組みが必要だが、現状では油谷さんの超人的な記憶力に負っている面が大きい。

 「ものたちの価値を正しく評価して、守っていく。いいアイデアはないものだろうか。自分の昭和の記憶を残すためにも」

 そんな思いを胸に帰路についた。

油谷これくしょん (秋田県秋田市金足片田字待入109) 電話=018‐893‐4981/見学時間=午前10時から午後4時まで(入館は午後3時30分まで)/見学料金=無料/施設休み=月曜日、火曜日(月曜日及び火曜日が祝日の場合は開館)、年末年始、特別整理期間(不定期)

プロフィル
田中 成浩(たなか・なるひろ)
 1965年生まれ、埼玉県浦和市(さいたま市浦和区)育ち。読売には写真記者として入社。2020年11月、初めての東北勤務として秋田に着任。今年こそは、 竿灯(かんとう) をはじめとした「東北の夏祭り」を一つでも多く、この目で見たいと願っている。

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3124556 0 We Love みちのく 2022/06/30 12:00:00 2022/06/30 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/06/20220627-OYT8I50070-T.jpg?type=thumbnail

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