ダークな魅力海外席巻
完了しました
三重大の「国際忍者研究センター」(伊賀市)に雇用され、忍者の歴史を研究する傍ら、三重大の忍者研究について成果の英訳・発信を担当している。さらに現在、2月に設立される国際忍者学会に入る外国人研究者たちとも、やり取りしている。そこで、海外の忍者ブームや忍者研究の国際化の意義について少し述べたい。
忍者に関する情報が海外に発表された例は戦前にもあるが、ブームになったのは1964年、米国の週刊誌「ニューズウィーク」4月3日号で当時の日本での忍者ブームと、“最後の忍者”と呼ばれた藤田西湖氏が紹介されてからだ。
その直後、米国のいくつかの一流大学から忍者の情報に関する問い合わせが日本に来た。同時に、イアン・フレミングの有名な小説「007は二度死ぬ」を始め、忍者が登場する大衆向け小説が続出した。80年代からは、ハリウッドで数多くの忍者映画が撮影され始めた。
現代社会を背景に動いている忍者が、暗くて反社会的、同時に万能に近い存在と描かれ、ダークな魅力の持ち主とされた。米国のコミック・ヒーローの中に忍者的な色合いが濃いキャラクターも少なからずあり、特にバットマンはヒーローになる前に忍術を修行した場面もある。
今年公開される日本のアニメ映画「ニンジャバットマン」もその顕著な例だろう。この忍者のイメージが、米国大衆文化の一部として世界各国になだれ込み、それぞれの忍者ブームを促した。忍者をテーマにする香港や台湾のカンフー映画がその好例だ。
そして海外では、「忍術道場」が雨後の竹の子のごとく現れ始めた。忍者を目指して真面目に武道を学ぶ人あり、暴力集団か、変な宗教のような団体もあった。「忍術を教えます!」と入会金を集め、“ドロン”する者もいた。
その一方、かなり真面目な忍者の研究が、海外にも幾らか現れた。早くは90年代前半、日本の忍者研究本を基に書かれた海外の学者の著作が、何冊も
近年には、日本でも発表されていない資料が翻案された。ベルギー人のセージ・モルによる「Takeda Shinobi Hiden」、英国の歴史学者アントニー・クミンズと翻訳家南快枝による「Iga and Koka Ninja Skills」、米国の民俗学者スティーブン・ノジリによる「Sacred Conspiracy」などだ。
国際忍者研究センターの役割の一つは、優秀な忍術研究者たちとの交流だ。学術的な討論の場を作るのはもちろん、今まで忍者の研究をしていない海外で一流の日本学者に声を掛け、忍者の研究に協力してもらう狙いもある。
センターや今回の学会創立に関するニュースが海外に伝わり、各国から早速、「私たちが学んできた忍術の正当性が証明される」「いよいよ忍者の真実が明らかになる」「どうして我が国にはそういう研究がないのか」などの声が上がっている。三重大の忍者研究に、世界中からの注目と期待の高まりを感じる。

クバーソフ・フョードル
・国際忍者研究センター研究員
ロシア・サンクトペテルブルク国立大卒。三重大に2度の留学経験があり、昨年10月、研究員として3度目の来日。