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呼吸法「息長」で精神休息

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息長を行う川上氏(右)の脳波を測定する小森教授=小森教授提供
息長を行う川上氏(右)の脳波を測定する小森教授=小森教授提供

 私は精神科医で、本来の専門はうつ病やストレスの研究だが、三重大学の忍者研究に医学的な観点を加えようと、2015年から関わっている。

 実際の忍者はフィクションの忍者像とは異なり、戦いを巧妙に避けていたという。敵の中にいて絶えず命の危険がある。ストレスに満ちた状況を、どうやって生き抜いたのか。忍者も人間。特別な休息の方法があるはずだ。

 忍者の呼吸法には様々な種類があり、主なものは「二重ふたえ息吹」「息長おきなが」「逆腹式呼吸」である。このうち私は「息長」の効果を確かめることにした。

 忍者は、短く割いた紙を鼻の頭に付け、これを長くなびかせる鍛錬を通じて息長を習得した。極めてゆっくりな呼吸で、自分の気配を消す忍びの仕事に有効だった。それ以上にストレスや不安を打ち消し、忍者の根本精神である不動心を生む効果があった。

 息長の心身に及ぼす影響を実験で確かめることにし、本学の社会連携特任教授の川上仁一氏をはじめ、忍術の習得者5人に被験者として協力していただいた。息長を30分間続けてもらい、その間に脳波を測定し、心電図を計測、解析することで自律神経機能の働きを確かめた。

 脳細胞は弱い周期性の電流を出しており、それを計測したのが脳波だ。周波数の速いものから順に、βベータαアルファ3、α2、α1、θシータなどがある。速い波は「緊張」、中間は「落ち着き・集中」、遅い波は「眠気」を表し、それらの比率で脳の状態がわかる。自律神経には交感神経と副交感神経があり、身体機能を前者は“戦闘モード”、後者は“休息モード”にする。

 息長開始から15分が経過した頃、「睡眠」に関連するゆっくりした波形のθ波が優勢となり、大脳の活動が低下。それに対して「緊張や不安、イライラ」を示す速い波形のβ波が減少した。外見上も明らかに眠りに入ったように見えた。

 驚いたのは、α2が同時に増えたことだ。α波の中でも特に「リラックスと集中」を示す波形であり、睡眠時に出現することはあり得ない。脳の多くの部分は機能を落としているが、ある部分は極めてえていることを示している。自律神経は“休息モード”だった。終了後、被験者に聞いてみると「眠ってはおらず、感覚が非常に鋭くなっていた」と語った。そう、被験者は「眠っていなかった」のだ。

 明らかに睡眠とは違う、この状態は「瞑想めいそう」と解釈するのが妥当であろう。ある被験者は「息長の間に、自分が太陽と一体になっていくイメージを持った」と言っていた。瞑想によって忍者は宇宙の真理と一体になることができ、これこそが忍者の精神性の根本ではないかと考えられる。

小森照久教授
小森照久教授

小森照久・医学系研究科教授

 医学博士、精神科医。三重大卒。うつ病の病因、ストレス緩和を研究。著書に『忍者「負けない心」の秘密』など。

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7433 0 三重大発!忍び学でござる 2018/02/14 05:00:00 2018/02/14 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180214-OYTAI50003-1.jpg?type=thumbnail

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