文字サイズ

    ストレス対策今も有益

    • →→44
      →→44

     約100日間の「忍者展」が2016年7月2日から、東京・お台場の日本科学未来館で開催された。三重大学は特別協力でこの企画に協力した。展示用の忍者食作りと、それらの説明文の協力だけだと思っていたら、主催者から「忍者の日常生活における食事も展示したい」と依頼された。

     さて、忍者食の史料はあるが、普段の食生活を紹介した史料は見つからないので困惑した。忍者は午前中は田畑や山の仕事をこなし、午後に忍術等を訓練したとされるので、それを主な根拠として、当時の農民の食事を推測し、回答した。だが、そのような史料は存在するのだろうか。

     軍事行動中に兵士に配給される野戦食は、健康維持を考えた栄養補給はもちろんだが、意欲を高める食材や菓子類も工夫されている。自給だった忍者が、軍隊のような野戦食を作るはずがない。食べられる野草は熟知していたので、食糧は道中でいくらでも見つけられるからだ。

     それでも携行した「兵糧丸」「飢渇丸」「水渇丸」を前回までに紹介してきた。当初はそれぞれ別物と思って、各使用目的を明らかにすべく調査研究を始めた。が、そのうちいずれもストレス反応に対する予防食(薬)であったらしいことが分かってきた。

     そのため、ストレスの科学をにわか勉強することにした。そして、ストレス反応を上手に回避することが、忍びに何が何でも必要であったに違いないと気が付いた。

     誰でも厳しい局面になると緊張する。心拍数が上がり、喉が渇き、胃が痛くなり、その場から逃れたい気持ちに駆られる。これは、危機を回避して生き延びる本能で、突然襲ってくるこの反応の回避は難しいとされている。

     想定外の局面に出くわすと、忍者でも冷静な判断は難しかったに違いない。忍者は、危ないと察したら忍者食を口に入れ、本能的なストレス反応による緊張をほぐしたのではないか。

     忍びの前と後に行う忍者の祈り(印、九字護身法)と、ゆったりとした深い呼吸(息長おきなが)も心拍数を下げ、落ち着かせる効果がある。印や息長や忍者食で精神を安定させ、登器、開器、火器などの忍び道具を駆使し、冷静かつ機敏に情報収集した忍者の知恵は、今のストレス社会で活躍している方々に、有益な情報になるのではないか。

    <<<忍者の知恵から学ぶ ストレス対策案>>>

    ◆平常時

    ▽ストレスについての知識を深める

    ▽自分流の緊張をほぐす方法を見いだしておく

    ▽祈りや深い呼吸を身につける(忍者は印や息長)

    ◆強いストレスに襲われた時

    ▽体を休め、深呼吸などでリラックスさせる

    ▽脳に安心感を与える甘いもの(忍者は兵糧丸)を摂取

    ▽滋養強壮に役立つ食材(忍者は飢渇丸)を食べる

    ▽胃や喉を癒やすもの(忍者は水渇丸)を食べる

    • 久松眞・特任教授
      久松眞・特任教授

     久松眞・名誉教授

     食品科学。同志社大卒、三重大院修了。機能性食品の開発などを手掛ける。

    2018年10月10日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て