火矢、城放火の強力武器

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大国火矢の燃焼実験。勢いよく炎が噴射した
大国火矢の燃焼実験。勢いよく炎が噴射した
萬川集海にある大国火矢の図
萬川集海にある大国火矢の図

 鉄砲が発明される以前の戦では、弓矢は遠くの敵を倒す武器として、また、矢の先に油を浸した布などを巻き付けた「火矢」は、城などを放火・焼失させる強力な武器として広く使われていた。忍者もまた、様々な火矢を作っていたことが万川集海に記載されている。

 忍者の火矢は「大国火矢」(飛火炬とびひこ)と呼ばれる。通常の火矢と違うのは、火薬を使用していることである。黒色火薬を詰めた筒を矢にくくり付け、導火線に火をつけて弓で飛ばすと、敵陣に到達する頃、火薬に着火し、筒から激しい炎が噴き出して萱葺かやぶき屋根などを焼失させることができる。

 また、大国火矢には、推進用と焼夷しょうい用の火薬の筒が付けられているものもある。推進用火薬で矢を飛ばし、焼夷用火薬から炎を噴き出させることができる火器である。

 大国火矢は弓で射たり、手で投げたりするほか、台に複数本を設置し、推進用火薬に火をつけて一斉に飛ばすなどして使っていたようである。

 万川集海には、約30種の大国火矢が記されている。それらに使われているのは、硝石37・4~89・3%、硫黄5・4~40・7%、炭2・8~38・5%。そのほか、鼠糞ねずみふん0~1・4%、樟脳しょうのう0~7・3%、松脂0~0・4%、鉄粉0~13・2%などが加えられている。

 柿木花火工業(滋賀県長浜市)の柿木博幸氏の協力を得て燃焼実験をした。万川集海に記載されている大国火矢の火薬成分(硝石61・6%、硫黄14・0%、炭16・8%、鼠糞1・1%、樟脳0・84%、鉄粉5・6%)を基に調合。その40グラムを竹筒(長さ18センチ、径1・8センチ)に詰めた。点火すると、写真のように激しい炎を噴き出し、40秒余り燃焼した。

 この炎をわらに当てたところ、瞬く間に燃え尽きた。火薬には硝石が入っているため、矢が飛んでいる間も炎が消えることがない。最初から筒の火薬に点火し、炎を噴き出させながら弓で射て、敵陣を放火することもできる。

 また、万川集海には以下の記述がある。

 「大国火矢の射程は2町(約218メートル)から10町(約1・09キロ)までで、射程によって、矢の長さ、羽根の枚数、推進火薬量を変える。やじりは鉄製、木製、竹製のいずれかを使用し、鏃から3寸(約9センチ)離して、焼夷用火薬20もんめ(約75グラム)を紙筒に納めて巻きつけ、その反対側の手前に、推進用火薬を同じく紙筒に入れて結びつけ、推進用火薬筒の手元に口火を差し込み、推進用火薬筒と焼夷用火薬筒は、導火線で連結しておく――」

 大国火矢が本当に1キロも飛ぶのか、大変に興味があるところだ。機会があれば実験してみたい。

      ◇

 荒木利芳・名誉教授

 微生物学、酵素学、食品科学。九州大院修了。専門は、海藻多糖分解酵素の研究や海藻の有効利用など。

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50589 0 三重大発!忍び学でござる 2018/11/21 05:00:00 2019/02/19 21:58:50 大国火矢の燃焼実験。勢いよく炎が噴射した https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181121-OYTAI50002-T.jpg?type=thumbnail

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