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    薬草の効能、使い方熟知

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     毒は、用法、用量によっては薬になる。忍者の毒に対する知識は、薬の開発にも役立った。それが自らの病気やけがを治しただけでなく、忍者は薬売りに変装し、薬売りをしながら情報収集をしたとされている。

     忍者が主に持ち歩いていた薬は、虫下し、下痢止め、鎮痛剤など。代表的なものに紫金丹しきんたん陀羅尼助だらにすけがある。

    ◇紫金丹

     成分の「山慈姑さんじこ」はアマナ(ユリ科)の地下茎を乾燥させたもので滋養強壮に、「五倍子ごばいし」はヌルデ(ウルシ科)の葉で、吐き下しに効くタンニンを多く含んでいる。さらに、タカトウダイコンと、ジャコウ(ジャコウ鹿のジャコウ腺)をそれぞれ乾燥させ、これらの粉を丸薬にした。利尿作用のあるタカトウダイコン、香料、去痰きょたん目的でジャコウが用いられていると考えられる。

     したがって、紫金丹は置き薬としても最適で、腹痛から疲労まで、常備薬的な役割を担った薬だ。そうなれば定期的に薬を売りにきたふりをして、その辺りを偵察し、地域情報を収集していても、誰も怪しむ者はいなかっただろう。

    ◇陀羅尼助

     キハダ(ミカン科)の樹皮を水で煮詰めたもので、大腸菌、赤痢菌、コレラ菌、ブドウ球菌などに抗菌作用を持っている。腹薬として知られ、今でも奈良・大峰山おおみねさんの土産物として存在している。

     注目すべきは、忍者は苦い味の陀羅尼助をちょっとユニークな使い方をしたことだ。何日にもわたる張り込みの中、これをひとなめして眠気を覚まし、張り込みを続けたとされる。

     さらに、忍者自らの病気やけが、健康を助けるための薬として、表のように、多くの薬草を食事やお茶に使っている。これらの植物だと確認し、使う方法についての知識を集積、利用していたことが考えられる。

    ◆忍者が用いた薬草

    一般名    生薬名         薬効                                       ドクダミ    十薬(ジュウヤク)   あせも、ただれ、腫物、鼻炎、蓄膿症、腎臓病、腎炎、

                          動脈硬化、高血圧、高脂血症など

    カンゾウ    甘草(カンゾウ)    胃潰瘍、十二指腸潰瘍、腹痛、解毒                        センブリ    当薬(トウヤク)    胃もたれ、消化不良、腹痛、食欲不振                       クズ      葛根(カッコン)     腹下し、解熱、発汗                               アサガオ   黒牽牛(ケンゴシ)   便秘                                      アカメガシワ 野梧桐(ヤゴドウ)   湿疹、かぶれ、ただれ、おでき、胃痛、胃潰瘍                   キハダ    黄檗(オウバク)     腹下し、胃炎、関節痛                              アケビ     木通(モクツウ)    利尿、むくみ、鎮痛                               ミカン     陳皮(チンピ)      利尿、むくみ、咳、たん、胃炎、胃もたれ、虫下し                 ハトムギ   ●苡仁(ヨクイニン)   利尿、ニキビ、肌荒れ                              ジャノヒゲ  麦門冬(バクモンドウ)  咳、たん、滋養強壮、催乳                            アサ      麻子仁(マシニン)    咳、たん、便秘、血糖降下                            カボチャ   南瓜仁(ナンカニン)   動脈硬化、がん予防                               

    ※薬効の記載があるが、実際に使用する場合は専門医の指導が必要

    • 山本好男・特任教授
      山本好男・特任教授

     山本好男・社会連携特任教授

     中毒学、環境化学。日本大院修了。植物が持つ毒や薬効成分、機能性物質などを研究する。

    ※●は「くさかんむり」に「意」

    2018年12月05日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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