目潰し 盗賊撃退に有効

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松脂のかたまりをトンカチで砕く=高尾氏提供
松脂のかたまりをトンカチで砕く=高尾氏提供
灰をふるいにかけて細かくする=高尾氏提供
灰をふるいにかけて細かくする=高尾氏提供

 武家が盗賊の被害に遭うことは、武家にとって恥辱であった。ねずみ小僧次郎吉は実在の人物である。彼が武家を狙ったのは、金があるからという理由のほか、被害に遭った武家が恥辱を感じて外に漏らさず、あまり世間に露見しなかったこともあるだろう。

 とりわけ小身の武家では、下僕を雇う経済的余裕がないため、自身で盗賊の備えをしなければならなかった。

 橋本敬簡ゆきやすによる「経済随筆」という史料がある(小野武夫『近世地方経済史料』吉川弘文館・復刊版)。ここに小身の武家による盗賊の備えの心得が書かれている。橋本自身、家禄150俵の小さな幕臣で、彼の経験をもとに書いたものであろう。橋本は忍者ではないが、忍者学の参考になる。

 史料の存在を知ったのは、三田村鳶魚えんぎょの弟子、小川恭一氏の文章(小川『お旗本の家計事情と暮らしの知恵』つくばね舎)。ちなみに、私は歴史上の人物の弟子、小川氏の謦咳けいがいに接したことがあり、学究肌の方で感服した思い出がある。以来、氏の文章を慎重に読むことにしている。

 さて、「経済随筆」の備えは三つである。

 〈1〉一つ目は、手裏剣を置いておくこと。この手裏剣は、創作上の忍者がよく使う星形の手裏剣ではなく、棒手裏剣であろう。

 〈2〉二つ目は、卵の殻の中に松やにの粉を詰めたものを置いておくこと。実際に松脂をトンカチでたたき、ふるいにかけると、意外と簡単に粉になり、目に入れば痛いものであることがわかる。松脂の粉を詰めるべき理由がしっかりあるのだ。

 〈3〉三つ目は、〈2〉が用意できなければ、灰をふるいにかけて細かくし、「杉原すいはら様」の紙(杉原紙のような紙)にくるんだものを置いておく。実験では薄ければ薄いほど、灰が多く外に飛び散った。

 これらを用意しておけば、盗賊に襲われたとき、眉間に打つなどすれば盗賊除けになる、ということらしい。〈2〉にしろ〈3〉にしろ、ちょうど手のひらに隠れる大きさで、敵に対して手の内を隠すのに便利なのだろう。

 ここでの目潰しの実験は、「徳川家康と服部半蔵忍者隊」と三重大学の「忍者部」が行った。その様子は動画にしてYouTube(「現世で忍術、やってみた」第二巻目潰しhttps://www.youtube.com/watch?v=Y01rjyh4ugg)にアップしているから、ご覧いただきたい。

高尾善希・准教授
高尾善希・准教授

 高尾善希・国際忍者研究センター准教授 

 近世日本史・村落史。立正大院修了。著書に「忍者の末裔 江戸城に勤めた伊賀者たち」。

426254 1 三重大発!忍び学でござる 2019/02/06 05:00:00 2019/02/06 11:29:07 松脂のかたまりをトンカチで砕く https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190206-OYTAI50006-T.jpg?type=thumbnail

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