文字サイズ

    漁具屋 帰ってきた跡取り(9月 気仙沼港)

    • 「ツナショッカー」の使い方をツアー参加者に見せる廣野さん(中央)(5日)
      「ツナショッカー」の使い方をツアー参加者に見せる廣野さん(中央)(5日)

     「これは何に使う道具でしょう」。気仙沼市の漁具販売会社「アサヤ」の取締役・廣野ひろの一誠いっせいさん(32)は重さ3・5キロのステンレス製のハート形の輪を掲げた。首をひねって見つめるのは、同社の倉庫などを見て回る一風変わったツアーに市内外から参加した約10人。

     正解は「ツナショッカー」。はえ縄漁でマグロに電気ショックを与え、動きを抑える道具だ。予想もつかない答えに参加者は「どう使うの?」と興味津々。魚体を引っ張る手かぎなど漁業関係者にはおなじみの道具も参加者の目には珍しく、大盛り上がりだ。タコ籠を使った漁も見学した。ツアーは5日、被災地の漁業に関心を持ってもらおうと、廣野さんが地元の仲間と一緒に初めて開いた。

     「私も1年前までは、漁具なんて知りませんでした」。そう笑う廣野さんは1850年創業のアサヤの経営一家に長男として生まれたが、子供の頃の夢はゲームのプログラマー。「いつかは家業を」。そんな考えも頭の片隅にあったが、早稲田大卒業後は東京のコンピューター関連会社に就職、充実した毎日だった。

     転機となったのは4年半前。6代目社長の父・浩さん(62)が営むアサヤは、本社を含む営業拠点4か所全てが全壊した。「力にならなければ」。子供が生まれるなどしたため時間はかかったが、昨年12月に戻ってきた。

     社内の情報共有をパソコン上でできるようにするなど業務効率の向上に力を注ぐ一方で、「いつものやつ」の一声で漁師に必要な漁具を届ける現場担当者から知識を吸収している。

     技術者の高齢化や漁業の先細りなど課題は多いが、「経験とアイデアで、被災した街や会社を盛り上げていきたい」。ツアーはその第一歩だ。今月26日には第2弾を開く。(安田龍郎、9月おわり)

    2015年09月16日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP

    理想の新築一戸建て