見える娘 頼もしく

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洋さん(左)と幸恵さん(右)の手を握りうれしそうに散歩する結愛ちゃん。「道路に飛び出したら止められないから」と、3人で散歩するのはこの日が初めてだった(7月24日、東松島市で)
洋さん(左)と幸恵さん(右)の手を握りうれしそうに散歩する結愛ちゃん。「道路に飛び出したら止められないから」と、3人で散歩するのはこの日が初めてだった(7月24日、東松島市で)

保育所の給食の時間、ご飯をほお張る結愛ちゃん(6月13日)
保育所の給食の時間、ご飯をほお張る結愛ちゃん(6月13日)

 結愛ちゃんが朝ご飯を食べ終わった。

 「食器を片づけてね」と洋さんが声をかける。結愛ちゃんはまだ少ししか言葉を話せないが、カレーライスの皿を手に台所へ。届かないシンクの前で爪先立ちをして、ガシャーンと食器を放り投げた。

 「よくできました」

 その音を確認して、洋さんは結愛ちゃんの頭をなでた。

 洋さんは小児がんの一種「網膜芽細胞腫」にかかって21歳で失明した。幸恵さんは18歳の時、交通事故で両目の視力を失った。

 07年、2人は北海道函館市の支援施設「視力障害センター」で鍼灸しんきゅう師を目指す中で出会った。6年の交際を経て13年に結婚。今年3月までは洋さんの母と弟が同居していたが、弟の結婚に伴い、今は結愛ちゃんと3人で一軒家に暮らしている。

 テレビのリモコンが見つからない時、2人は床を手で触って捜す。

 「どこにある?」

 「あい」と言って手渡すのは結愛ちゃんだ。

 洋さんが、畳んだ洗濯物を幸恵さんに渡そうとする。「これをママにお願い」と言えば、ちゃんと届ける。

 成長するにつれて結愛ちゃんができることが増えていく。頼もしいし、夫婦もつい頼ってしまう。「でも、私たちの目の代わりにするために産んだわけじゃない」と幸恵さんは思う。

 悪知恵もだいぶ覚えた。息をひそめて存在を消し、親をからかう。ご飯をこぼしても黙っている。自分が言わなければ叱られない、と分かってきたからだ。

 結愛ちゃんのことで夫婦がまず心配したのは、洋さんの病気の遺伝だった。1歳半の時に検査し、遺伝していないことが分かった。2人は心から安堵あんどしたが、それは娘がどこか手の届かない世界へ行ってしまうような、新たな不安の始まりでもあった。

無断転載禁止
36433 0 希望の瞳~全盲子育て~ 2018/08/10 05:00:00 2018/08/10 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180811-OYTAI50008-T.jpg?type=thumbnail

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