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「SAKE」として世界で認知度を上げている日本酒。国内消費量の右肩下がりに歯止めがかからない一方、海外に販路を広げる動きが活発化している。
2月、ドイツのレストランで開かれたバイヤー向け試飲会で、統一ラベル「MIYAGI STYLES」の日本酒がテーブルに並んだ。銘柄をあえて伏せて「宮城ブランド」を前面に出し、香りや味の濃さ、やわらかさで5種類に分類して1~5の番号を振った。
バイヤーはカルパッチョやソーセージなど現地の料理との相性を試していく。高評価を得たのは、白ワインに近い風味のものよりも、適度な辛さがある爽やかな酒だった。
県が、県内8酒蔵、物流会社1社と協力して昨年度から始めたプロジェクトだ。各酒蔵の流通ルートや海外展開を一貫して支援していく。試飲会後には早速、バイヤーと酒蔵との商談が始まった。同様の取り組みは香港でも好評で、今年度も海外でのPRを計画している。県国際ビジネス推進室の押野孝博室長補佐は「どの地域でどの酒が好まれるか分かった。宮城の多彩な日本酒を発信し続けたい」と展望を語る。
日本から海外への清酒輸出量は12年連続で増加し、昨年は前年比1・66倍。コロナ禍で自宅時間が増えて健康志向の高まりとともに、バランスの良い日本食が世界中で注目され、それに合う日本酒の需要も伸びているという。
ただ、20年以上前から輸出に取り組む酒蔵がある中、「後進組」には付け入る隙のない販路もある。県は「宮城ブランド」で知名度向上を目指し、輸出戦略を推し進める。

「真鶴」を造る田中酒造店(加美町)が2018年から造り始めた日本酒「TANAKA1789」は、元ソムリエ世界チャンピオンのフランソワ・シャルティエ氏がブレンド手法で生み出した。
同店は、時間をかけて酵母を増殖させる「
グループの縁で出会ったのがシャルティエ氏だ。ブレンド手法は業界で敬遠されがちだが、数種類の日本酒の香りが複雑に合わさり、ワインに代わる日本酒として海外で高い評価を受けた。22の国・地域の星付きレストランで提供されている。
さらに同店は昨年、完全菜食主義者「ビーガン」が世界中で増えていることに着目、米と米こうじのみで造った7銘柄でビーガン向け認証を県内で初めて取得した。アジアを中心に輸出を増やし、オーストラリア最大の酒小売店グループとの契約も100社の競争の中からつかみ取った。永井邦彦社長(52)は「国によって日本酒の好みは様々。我々が積み上げてきた文化や歴史の物語を知ってもらい、数多くの銘柄の中から手にとってほしい」と話す。