復興のまち 育てるのは住民

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久しぶりに再訪した名取市閖上でインタビューに応じる野崎さん(昨年12月15日)
久しぶりに再訪した名取市閖上でインタビューに応じる野崎さん(昨年12月15日)

神戸の建築家が見た東北の10年

 行政主導になりがちな大災害からの復興に、住民はどう関与すべきか。神戸市の建築家・野崎隆一さん(78)は阪神大震災で培ったノウハウを伝えようと、東日本大震災の被災地に足を運び、住民や自治体担当者らに助言を続けている。阪神大震災の発生から17日で27年。東北の復興にいま何を思うのか、話を聞かせてもらった。(聞き手 高倉正樹)

 ――2011年の発生から一貫して住民主体のまちづくりを訴えてきました。

 「集団移転でも区画整理でも、将来そこに住む人が協議の中でイニシアチブ(主導権)を持てるかが決定的に大事です。僕が関わった気仙沼市の地区では、大学生が加わってワークショップを重ね、『こんなまちにしたい』という未来像を行政に提案した。公園づくりや街路樹の木の選定でも、子どもを交えて意見を出し合いました」

 ――住民参加の意義は何でしょう。

 「まちとは本来、人が増えるにつれて集会所や寺ができたりして、緩やかに成長するもの。ところが津波のような大災害では、何もないところに新しいまちが出現する。完成して『はいできました、どうぞ』と言われても、みな戸惑うだけです。行政とキャッチボールしながら、部分的にでも意見を反映させる。そうすれば、できあがったまちを自分が育てていくという気持ちが生まれます」

 ――まちづくりは、行政の事業が完了して終わりではないと。

 「そこからが別のスタートと考えた方がいい。宮城や岩手のまちはいま、その段階にあると思います」

支援がもたらす地域分断

 ――継続した支援を通して何を感じましたか。

 「応援に入った地域のあちこちで住民のリーダーが現れていることに、一定の手応えを感じます。しかし、反省すべき点もある。災害支援は、最も被害を受け、一番困っている人を支えようとします。一方、その周りには被災の度合いがそれほどひどくなく、困っている人を気遣う人がいる。その周りの人こそ、まちづくりや復興のかぎになる存在。僕らが引き揚げた後、相互扶助の仕組みを地元で担い続けるのは、余力がある、そういう人たちです」

 ――確かに、外部の支援はいつか終わります。

 「僕らの身勝手で、一番大変なところばかり支援して、周りの人を無意識のうちにはじき出していないだろうか。最近そう思うようになりました。地域に分断を残すことなく、人をうまく生かす『人材の地産地消』が必要です」

人口減対策に復興のノウハウを

 ――震災から27年たった神戸の課題は何ですか。

 「だいぶ前から、人口減少と少子高齢化の課題に焦点が移っています。人口減少は、いってみれば『緩やかな災害』。例えば公営住宅の高齢化と孤立は深刻さを増し、自治会費や共益費の徴収が難しくなっている。兵庫県では若い学生向けに、自治会活動などへの参加を条件に格安のシェアハウスとして提供する取り組みを展開しています」

 ――人口減対策は東北でも急務です。

 「高度成長の時代、政府や自治体が豊かな税収を財源にして人の暮らしを支える仕組みを目指しました。その裏返しで、住民による相互扶助の考え方は失われていったように思います。今後、行政が何もかもやってくれる時代は望めません。支え合う社会をもう一度取り戻さないといけない。その時、まちづくりは自分たちで考えるという住民参加の復興の発想が、きっと役に立つはずです」

  野崎隆一(のざき・りゅういち)  NPO法人「神戸まちづくり研究所」理事長。1995年の阪神大震災では神戸市東灘区のマンションで被災、兵庫県や市と連携しながら被災者の生活再建に尽力した。東日本大震災では発生直後から気仙沼市のほか、名取市や石巻市、南三陸町などに入り、まちづくりを支援している。

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2684231 0 ニュース 2022/01/18 05:00:00 2022/01/19 00:11:47 2022/01/19 00:11:47 https://www.yomiuri.co.jp/media/2022/01/20220118-OYTNI50056-T.jpg?type=thumbnail

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