医師・長純一さん死去 石巻 医療復興に尽力

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石巻市立病院開成仮診療所で患者の話に耳を傾ける長さん(2013年撮影)
石巻市立病院開成仮診療所で患者の話に耳を傾ける長さん(2013年撮影)

 東日本大震災後、石巻市に移住して被災地の医療復興に取り組んだ総合診療医の 長純一ちょうじゅんいち さんが28日午後、 膵臓すいぞう がんのため市内の自宅で死去した。56歳だった。「地域医療の充実を通して地方を守りたい」と常々語り、人口減社会の将来を見据えた地域包括ケアのあり方を模索し続けた。道半ばの急逝に、全国から悼む声が相次いでいる。(生活部・石塚人生、石巻支局・高倉正樹)

 長さんは東京都出身。佐久総合病院(長野県佐久市)に19年間在籍し、農村医療の父と呼ばれた故・若月俊一医師の指導を受けた。1995年の阪神大震災でも現地に駆けつけ、医療支援にあたった。

 東日本大震災後の2011年5月、長野県医療団長として石巻市に派遣された。翌年、被災地最大の仮設団地に設立された市立病院開成仮診療所の所長に就任。家族や住まいを失った被災者を支えるため、24時間体制の在宅医療を構築し、介護の充実、住民主体の地域社会づくりも支援するなど、医師の役割を超えて心身のケアにあたった。

 昨年2月には市立病院を退職。同4月の石巻市長選、同10月の知事選に相次いで立候補し、落選した。今年1月からは被災者が多く移り住んだあゆみ野地区で「あゆみ野クリニック」の院長に就いていた。

 56歳の誕生日を迎えた今月21日、動画配信で自身の病状を公表。今春に体調を崩し、5月下旬に受診した医療機関で末期の膵臓がんと診断され、全身に転移していることが分かったという。動画では、しっかりした口調で「(残る命は)数週間、抗がん剤がきいても数か月」と説明していた。

 仮設団地の診療所時代を知る山崎信哉さん(86)は「貴重な宝を失った」と惜しむ。山崎さんが会長を務めた「石巻仮設住宅自治連合推進会」の理事を快く引き受け、昼夜を問わず自治会役員らの相談に乗ってくれた。夏祭りや芋煮会に医師仲間を連れて顔を出し、盆踊りに飛び入り参加する気さくな人柄だった。「生き方がすごいなあと思ってずっと見てきた。まだ若く、これからだったのに」

 市立病院の当時の院長として5年間、ともに被災地医療に携わった伊勢秀雄さん(73)は「仮設住宅の人たちの精神的なサポートから在宅医療まで、情熱を持って取り組んでくれた。彼が植えた地域包括ケアの種は、芽が出始め、大きく花開きつつある。志半ばだったと思うが、本当にありがとう、よくがんばった。そして、ごくろうさま」と話した。

 長さんのSNSには、哀悼のメッセージが次々と寄せられている。元同僚の女性医師は「弟子の一人として、初心を忘れずに活動を続けます」、男性医師は「地域医療の実践者として、長先生に恥ずかしくないような生き方をしていきたい」と書き込んだ。

 石巻市大街道北の石巻大街道斎場・清月記では、一般弔問を30日午後6~7時半、7月1日午前10時~正午に受け付ける。喪主は妻の明子さん。葬儀は親族のみで執り行われる。

◇「未来の命大事に」長さんの動画配信のメッセージ(抜粋)

オンラインで自宅から病状を説明していた長さん(今月21日配信のユーチューブより)
オンラインで自宅から病状を説明していた長さん(今月21日配信のユーチューブより)

 今の私を支えてくださっている医療、看護、介護、福祉、さまざまな皆様に、大変感謝しています。おそらく私はいま、日本一恵まれた医療を受けている患者だと考えています。

 子どもをいかに守り育てていくかを社会全体で本気で取り組まなければいけない。あらゆる子どもが育ちやすい環境をつくっていかない限り、日本の将来はありません。今ある命だけでなく、未来の命を大事にする。そのことを考えてくださる皆さんが増えていくことを期待しています。

 この石巻が光り輝くまちとして復興し、立ち上がっていく姿を見られないこと、自分がそこに直接関わることができなくなることが残念です。しかし、少しでも前向きに、前のめりに、とやってきて、全力に近い形で走り続けられた。そのことを認めてくださる方々に今、囲まれている。そのことが何よりもうれしく、本当に恵まれた人生だったと感謝しております。

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