81歳有終のチンドン 伊那の柘植さん引退 笑顔糧に30年「人生の宝」

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子どもたちとふれあいながら最後の演奏を披露する柘植さん(22日、伊那市のみはらしファームで)
子どもたちとふれあいながら最後の演奏を披露する柘植さん(22日、伊那市のみはらしファームで)

 「伊那谷唯一のチンドン」をうたい、約30年にわたって地域の祭りなどで活動してきた伊那市の柘植晃さん(81)が22日、高齢を理由に引退した。同日、市内の農業体験施設「みはらしファーム」で最後の「チンドン」を披露し、にぎやかに活動を締めくくった。

 帽子をかぶり、柄物の白いシャツ、腹掛けを着けた柘植さんが、大小二つの太鼓とかねを木枠に固定したチンドン太鼓を肩から担いで登場し、「ドンドン」と音を響かせると、同ファームの「五月まつり」を訪れていた親子連れが集まってきた。

 引退を見届けるため、トランペットや 鍵盤けんばん ハーモニカなどの楽器を持った仲間たちも足を運び、一緒に会場内を練り歩いた。「地域のみなさんに見守っていただきながら活動できたことは私の人生の宝です」

 伊那市役所の職員だった柘植さんのチンドンマンとしての出発点は、市商工観光課長だった1993年。横浜市で行われた物産展に県代表として出張した時だ。「ただいるだけではお客さんは来てくれない。何か目を引くパフォーマンスができないか」と考え、思いついたのがパチンコ店のオープンなどで姿を見せるチンドンのパフォーマンスだった。

 機材は自宅にあった太鼓をミカン箱の木枠に取り付けた簡易的なもの。それでも、伊那北高校時代は吹奏楽部に所属し、市役所でも有志を集めてバンドを結成するなど、音楽の素地と人前に出る度胸があった柘植さんの演奏に多くの人が集まった。これを機に声を掛けられることも多くなり、富山県で開かれる「全日本チンドンコンクール」に出向いて勉強を重ね、自らのスタイルを確立した。

 市のPRのために始めたチンドンだったが、退職後も続けた。「子どもたちの笑顔が糧だった」と柘植さん。ただ、活動には体力が必要だ。現在の機材は、自作のチンドン太鼓にBGMを流すスピーカーも合わせると約8キロになる。「歩きながら演奏するのがつらくなってきた」と、引退を決めた。

 最後の舞台に選んだ同ファームは、何度も演奏に訪れた場所だ。同ファームの北嶋隆事務長(62)は「みんなが笑顔になるし、活気が生まれる名物だった」と話し、この日の引退セレモニーでは、白鳥孝市長から感謝状も贈られた。

 柘植さんは「人間、最後を飾るのは難しいが、みんなの笑顔を見ることができ、100点満点以上のチンドンになった」と感慨深そうに話していた。

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