森を守り 母国も支援

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特殊伐採のため、高さ15メートルのケヤキに登るカルマさん。「吉野の豊かな自然はネパールに似ている」(五條市西吉野町で)
特殊伐採のため、高さ15メートルのケヤキに登るカルマさん。「吉野の豊かな自然はネパールに似ている」(五條市西吉野町で)

 ◇ネパール出身の林業者 カルマ・ギャルゼン・シェルパさん 47

 急斜面にそそり立つ高さ15メートルものケヤキの巨木に登り、枝を払っては次々と落としていった。初夏の風が緑の間を抜ける五條市西吉野町。民家が点々と立ち、斜面に田や畑がひらかれた集落の風景は、「ふるさと」を思わせるという。

 「木々の香りと肌に当たる風が気持ちいい。吉野の自然はネパールに似ていて大好き。力をくれる」

 ロープにぶら下がり、人が立ち入れない高所や難所にたどり着く「ロープアクセス」の国際資格を持つ。仕事は、寺社や民家などで建物を傷つけずに高木の剪定せんていや伐採をしたり、重機が使えない場所で作業したりする「特殊伐採」。過疎や高齢化、後継者不足で手が付けられなくなった里山や森で近年、需要が高まっている。「森はこのままでは荒れる一方。残していく助けになりたい」と力を込める。

 故郷は、ネパール東部のファプレ村。ヒマラヤの山々を北に望む標高2700メートルにあり、首都カトマンズからバスと徒歩で4日ほどかかる。人口約380人が、急斜面の段々畑で大麦やジャガイモを栽培して暮らす。

 父は村の首長を務めている。地域を代表して、ネパールの難民キャンプや植林事業を支援するNGOの現地コーディネーターをしていた。1998年、そのスタッフとして活動していた妻の安紀子さん(43)と知り合う。遠距離恋愛の末、2002年に結婚し、来日。安紀子さんの両親が暮らす大淀町に移住した。

 夜間中学で日本語を学び、指導に来ていた県立五條高の教諭を通じて、同高が創立110周年記念事業で、ネパールに学校建設を計画していると知った。現地との連絡役を買って出て、05年10月、故郷の村に、日本の小中学校にあたる8年制中学校が建設された。07年5月には、同高の生徒会から運動靴や文房具など段ボール20箱分の支援物資が贈られた。

 そんな経験から、「日本とネパールの橋渡しをしたい」と思うようになった。10年、ネパールの親族らが経営する旅行会社を通じて、観光客を対象としたツアーを企画。その後も年2回、開いている。

 エベレストの遊覧飛行、観光地ポカラで民族舞踊の鑑賞、ヤクの乳搾り体験、チベット絨毯じゅうたんの工房見学……。地元でしか知られていない穴場も案内し、「現地の暮らしを体験できる」と口コミで人気が広がり、常連客もいるという。

 11年6月。御所市古瀬に移住。山深い自然が身近ながら、子どもたちが通える学校もあるためだ。

 15年4月、ネパール大地震が発生した。死者約9000人、建物の全半壊約90万戸と、大きな被害をもたらした。ファプレ村も例外ではなく、五條高の生徒の募金で建てた学校も倒壊した。

 「地方の山村では救援物資も届かない。何とか支援しなければ」。日本で知り合った友人知人に呼びかけ、国際NGO「ハンドトゥハンドカルマプロジェクト」を設立した。

 「産業のないネパールでは、観光が一番の支援になる」と、5か月後に復興ツアーを企画。約10人が訪れ、募った支援金を、へき地の村で直接手渡すこともできた。

 それでもファプレ村では、大きくひびが入った建物も、いまだ手付かずだ。ブルーシートや廃材を組み立てた簡易なテントを作り、生活する人もいる。「元の生活を取り戻すにはもっと支援が必要だ。10年間は活動を続けなければ」。橋渡しの役目は続く。

 <カルマ・ギャルゼン・シェルパ>

 1970年、ネパール生まれ。2002年に来日し、大淀町、和歌山県などを経て御所市在住。林業会社「カルマフォレストケア」を設立して代表を務める。ヒマラヤ山岳国際免許を所持し、現地へのトレッキングツアーを企画している。10月17~24日にもツアーを計画。申し込み、問い合わせはメール(kgsherpa10@zeus.eonet.ne.jp)。

 ◇<取材後記>自然への思い 心打たれる

 「ネパールからの移住者が御所市にいる」と聞き、興味が湧いたのが取材のきっかけだった。面倒見が良く、いつも笑顔でフレンドリー。日本語も堪能で、自然と引き付けられるような不思議な魅力がある。ツアーにリピーターが多く、ネパールへの支援の輪が広がるのも、納得できた。

 「特殊伐採」という仕事を知ったのも今回の取材でだ。通常なら足がすくむ高木の上でロープを巧みに操り、忍者のように移動する様に目を奪われた。そんな厳しい仕事に就いているのには、確固たる信念がある。「若者が都会に出て人がいない。誰かが森に手を入れないと、10年、20年後にはたいへんなことになる」。ふるさとに向けるのと同じ熱い思いを、吉野の自然にも向けている。日本人として、活を入れられたように感じた。(福永正樹)

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22552 0 人あり 2018/05/21 05:00:00 2018/05/21 05:00:00 高さ10メートルのケヤキの上で特殊伐採の仕事に励むカルマさん。「吉野の豊かな自然は母国・ネパールを思い出させる」(五條市西吉野町屋那瀬で)=福永正樹撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180520-OYTAI50002-T.jpg?type=thumbnail

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