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    <下>眠るイベント用の装い

    • 「海づくりせんとくん」は県条例で定める「山の日・川の日」にデビューした(2013年7月15日、奈良市で)
      「海づくりせんとくん」は県条例で定める「山の日・川の日」にデビューした(2013年7月15日、奈良市で)
    • 県農業水産振興課の一角で、「海づくりせんとくん」は箱に納められている(2日、県庁分庁舎で)
      県農業水産振興課の一角で、「海づくりせんとくん」は箱に納められている(2日、県庁分庁舎で)

     ◇著作権が壁 活用策必要

     県庁分庁舎5階に〈幻のせんとくん〉が眠っている。

     烏帽子えぼしをかぶり、右手に竹の釣り竿ざお、左手には県を代表するアユなど淡水魚が入ったおけを持つ。通称「海づくりせんとくん」。2014年に開かれた「全国豊かな海づくり大会」PRのため、前年に誕生した。

     デザイン料約60万円、着ぐるみ代約180万円をかけて作成したが、大会終了後は大型商業施設でのアマゴ販売イベントなど、3回しか登場していない。所管する県農業水産振興課の担当者は、「活用したいのだが、ふさわしいイベントは年に一度あるかどうか……」と打ち明ける。

     昨年の「国民文化祭」「全国障害者芸術・文化祭」に登場した通称「はかませんとくん」も、同様の状況に陥る危機にある。デザイン料約60万円、着ぐるみ2体計約330万円をかけて生み出したが、運営を担った大会特別課そのものが、来年度にはなくなる見込み。今後の活用策は白紙だ。

     なぜ、異なるせんとくんを作る必要があるのだろうか。県の使用指針には「違う要素を加えたり表情など細部を部分的に加工することはできません」と著作権保護のため、厳格な規定がある。テーマに沿ってせんとくんをアレンジするには、その都度、新たなデザインが求められるのだ。

     まわしを締めた「相撲せんとくん」、桜の花が頭を飾る「桜せんとくん」……。現在、オリジナルのせんとくんを含め、8パターンのデザインが存在する。

     公共政策が専門のPHP総研(東京)の佐々木陽一・主任研究員は「その後の活用策を考えていないのは、問題がある。単発のイベントごとにデザインを変えるぐらいなら、オリジナルをとことん使い倒してみてはどうか」と指摘する。

     一方で、キャラクター戦略に詳しい青木貞茂・法政大教授は「テーマに合わせてデザインを変えられるのは、ブランドを打ち立てたキャラにしかできない。誰もが知っているキャラにイベントだけの特別感を持たせてPRするからこそ、意味がある」と評価する。

     使い捨ての無駄遣いか、有名キャラだからこその有効利用か。様々な意匠のせんとくんを巡って、識者の間でも是非が分かれる。

     今年は日仏友好160周年。1870年代以降、欧州を魅了した「ジャポニスム」を再び感じてもらおうと、県はフランスで興福寺(奈良市)の仏像を披露する展覧会を予定している。

     パリで日本文化の発信イベントを手がける一般社団法人「ジャパンプロモーション」(東京)の担当者は「日本好きの欧米人は仏像に関心を寄せる。仏教色が漂うせんとくんのオリジナリティーあふれる造形は、人気が出るはず」とする。

     だが、現在のところ、せんとくんに渡仏予定はない。森田康文・県観光局長は「まずは地道に奈良の文化財をPRすることから」と慎重な構えだ。とはいえ、「今後は滞在時間、消費額ともに多い欧米の観光客を重点的に狙いたい。いずれは、せんとくんに活躍してもらう場があるかもしれない」と含みを残した。

    (この連載は山本貴広が担当しました)

    2018年02月15日 05時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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