<3>科学の目で古代解明

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銅鏡を3次元計測する橿考研の研究員。科学的な視点での検証は忘れない(橿原市で)
銅鏡を3次元計測する橿考研の研究員。科学的な視点での検証は忘れない(橿原市で)
上空から撮影した箸墓古墳(桜井市で)=県立橿原考古学研究所、アジア航測提供
上空から撮影した箸墓古墳(桜井市で)=県立橿原考古学研究所、アジア航測提供
3D航空レーザーで計測し、地面の高低差や形状を捉えた箸墓古墳の立体地図=県立橿原考古学研究所、アジア航測提供
3D航空レーザーで計測し、地面の高低差や形状を捉えた箸墓古墳の立体地図=県立橿原考古学研究所、アジア航測提供

 ◇最新技術

 長さ約2センチ。その銅鏡のかけらに刻まれた漢字1文字が、最新の3次元(3D)計測によって、約350キロ離れた二つの古墳を結びつけた。

 「ここまでピタリと一致するなんて。驚きで頭が真っ白になった」。県立橿原考古学研究所(橿考研)指導研究員の奥山誠義(42)は、その瞬間を興奮気味に語る。

 3D計測は、モノにレーザー光線を当てて形状や寸法などのデータを収集し、コンピューターで立体的な画像として復元する。その結果、初期大和王権の大王墓とされる桜井市の桜井茶臼山古墳から、2009年に出土した三角縁神獣鏡さんかくぶちしんじゅうきょうの破片にある「是」の文字が、群馬県高崎市の蟹沢古墳で見つかった銅鏡片の「是」と、字や形などがほぼ完全に一致したのだ。二つの鏡が同じ鋳型で製造されたことがわかり、初期大和王権の勢力が、全国に広がっていたことをモノで裏付けた。

 ◇

 橿考研は1999年、全国の研究所に先駆けて3D計測機を導入した。98年に黒塚古墳(天理市)から、「卑弥呼の鏡」と称される三角縁神獣鏡など34面の銅鏡が出土したことが契機となった。従来の計測データは写真や手作業の実測によるもので、正確性にやや欠けた。

 大量の銅鏡をいかに正確に計測するのか。当時、3D計測は他の分野で検品作業などに利用されつつあった。その精度の高さを聞いていた研究員が、考古学への活用を上司に進言。国の科学研究費などで資金を調達して、計測機の導入にこぎつけた。

 橿考研では他の研究機関の協力を得て、これまでに銅鏡約1100面、銅鐸どうたく約80点を3D計測し、データを蓄積してきた。これは国内で出土した古墳時代の銅鏡の2割超、三角縁神獣鏡に限れば半数を超す。奥山は「鏡の製作過程などを解明するうえで、大きな役割を果たしていくだろう」と意義を語る。

 ◇

 橿考研は考古学の調査に、最新の科学技術を積極的に取り入れてきた。古くは軽飛行機で古墳の航空写真を撮影し、藤ノ木古墳(斑鳩町)では石棺内部を医療用内視鏡のファイバースコープで観察した。こうした進取の気風は、初代所長の末永雅雄の「モノの本質を理解するのに、科学的な目線を忘れるな」といった精神が受け継がれてきた証しでもある。

 最近では3D計測のほか、「3D航空レーザー計測」による立体地図の作成や、宇宙から降り注ぐ「ミュー粒子」を利用した古墳内部の透視でも成果を上げてきた。

 3D航空レーザー計測は、ヘリコプターから地表にレーザー光線を当てて計測し、地表の高低差や形状を立体化する。2009年に測量会社・アジア航測(東京)の協力を得て、古墳の調査に採用。宮内庁が立ち入りを禁止している箸墓はしはか古墳(桜井市)や御廟山ごびょうやま古墳(堺市)などの陵墓のほか、高取城(高取町)など8地点を計測した。

 レントゲンのエックス線よりも物体を通り抜ける性質が強い「ミュー粒子」は、エジプトのピラミッドや福島第一原発の原子炉内部の調査にも使われた。橿考研は今年2月、未発掘の「春日古墳」(斑鳩町)に石室とみられる空洞を発見し、今後の調査への足がかりをつかんだ。

 調査部長の岡林孝作(55)は「こうした最新技術は、古代国家形成の鍵を握る陵墓など、調査が困難な遺跡の解明に有効だ」と語る。

 橿考研は柔軟な発想で、考古学と科学技術とをつないできた。(敬称略)

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27308 0 モノ語る―橿考研80年― 2018/06/25 05:00:00 2019/01/16 11:28:47 銅鏡を3次元計測する研究員ら(橿原市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180624-OYTAI50004-T.jpg?type=thumbnail

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