<5>「保存と活用」成果目指す

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橿考研の未来に向けて決意を語る若手研究員(16日、橿原市で)
橿考研の未来に向けて決意を語る若手研究員(16日、橿原市で)
県立橿原考古学研究所(橿原市で)
県立橿原考古学研究所(橿原市で)
「情報発信と議論がより活発にできる」と法改正の意義を語る荒井知事(県庁で)
「情報発信と議論がより活発にできる」と法改正の意義を語る荒井知事(県庁で)

 ◇組織改革

 県立橿原考古学研究所(橿考研)は3年前、県教育委員会の所属から初めて知事部局「文化資源活用課」の出先機関に組織改革された。「保存と活用」。文化財行政が抱える葛藤を巡り、知事の荒井正吾(73)が決断した。その狙いを「教育委員会の所管から知事部局に移すことで、これまでの保存と活用を対立させてきた古い手法から抜け出したかった」と説明する。

 2020年の東京五輪を前に、全国の文化財を観光資源として活用しようと、国会では今月1日、様々な規制を緩める文化財保護法と地方教育行政法の改正法が成立。来年4月から施行される。

 改正文化財保護法では、自治体が取り組む保存、活用事業の自由度が高まる。地方教育行政法の改正では、政治的中立性などを担保するため、教育委員会が担った文化財保護事業を、首長部局が担当できるようになる。観光振興などの街づくりと一体的に行うことで、文化財活用の幅が広がる。県では来春、文化財保存課も県教委から知事部局へ移す方針だ。

 国よりいち早く行動に出た荒井は「文化財は公共物なのに一部の研究者が囲い込み、教育委員会だけが保存を担ってきた」と指摘。その上で「文化財の保存は優先されるべきだが、その情報を発信し、活用も議論すれば、どう扱うべきかもっと公正な判断ができる」と持論を述べた。

 橿考研が知事部局に移った成果も強調する。20年に日本書紀編さん1300年を記念し、県と島根県などが東京で開催を予定する特別展「出雲と大和」がその一例だ。橿考研が展示品の選定に関わり、「どんなものを展示するのか知恵を絞る必要がある。今、橿考研側と密接なやり取りをしており、展示マインドが高まってきた」と評価する。

 ◇

 だが、一部の橿考研OBや専門家から、知事部局が文化財の保護事業を担うことを心配する声もある。

 OBの一人は「道路整備などで開発する側の知事部局が文化財の権限を多く持つことは危険だ。文化財保護を率先すべき奈良がこれでは全国に示しがつかない」と憂慮する。

 奈良大教授(文化財学)の坂井秀弥は「法改正で行政の縦割りが解消され、文化財の整備や活用の連携が取りやすくなる」と長所を挙げる。ただ「遺跡の調査、評価、開発の権限が一つに集中すると〈建設ありき〉になる恐れがある。観光客をより多く集めるための活用が前提になることも問題だ。地下に埋もれた遺跡は価値が見えづらく、慎重に整備を進める必要がある」と指摘する。

 ◇

 国内トップ級の「文化財県・奈良」。そのかじ取りは、全国から注目される。橿考研所長の菅谷文則(75)は「文化財を活用するとは、今まで以上に『モノ』をしっかり調査し、情報を得る必要があるということだ。そのために調査体制を充実させ、成果が上がれば理解が得られる」と県の組織改革を前向きにとらえる。

 今月16日、橿原市内のホテルで橿考研80周年記念パーティーが盛大に催された。最後に次世代を担う約20人の若手研究員たちが登壇して高らかに宣言した。「橿考研の研究と活用事業が県民、国民に愛されるよう歴史を紡ぎ、人をつないでいきたい」。100周年に向けた強い決意に聞こえた。

(敬称略)

 (おわり、この連載は辰巳隆博、夏井崇裕が担当しました)

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27714 0 モノ語る―橿考研80年― 2018/06/27 05:00:00 2019/01/16 11:39:35 橿考研の100周年に向け、決意を語る若手研究員ら(橿原市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180627-OYTAI50004-T.jpg?type=thumbnail

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