<上>ゴロ狙わず長打量産

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バットを下から出して低めの球を打つ練習をする大和広陵高の選手(広陵町で)
バットを下から出して低めの球を打つ練習をする大和広陵高の選手(広陵町で)

 ◇フライボール革命

 「ボールを上からたたきつけて、ゴロを打て」。かつて打撃の基本として教えられた理論が最近聞かれなくなってきた。春の県大会の本塁打は例年の約2倍となる42本。米・大リーグに端を発した飛球の方が安打になりやすいとされる「フライボール革命」が今、高校野球界を席巻しつつある。

 「低めは、ボールの下にバットを入れていけ」。県立大和広陵高(広陵町)の室内練習場で、加藤直樹部長(47)が選手に細かく指示を出す。打撃練習に力を入れており、各コースに応じた打撃を繰り返す。特に低めはバットを下から出す「アッパースイング」で、打球に角度を付けて長打を目指す。

 この練習を始めたのは、加藤部長が赴任した昨年4月。攻撃に比重を置き、練習の6~7割は打撃に割く。今冬は全体練習だけで1人1日600~700球を打ち込んだ。主軸を担う泉岡いずおか敬太主将(3年)は「下からすくって打つ指導は初めてで驚いたが、ボールの弾道が上がって長打が増えた。チーム全体でも攻撃力が上がった」と手応えを感じている。

 加藤部長が高校球児だった約30年前は「ゴロを打て」と教えられた。フライでアウトになれば、怒られることもしばしばだった。大学を卒業後、指導者になっても同じだった。

 しかし、考えが変わったのは福島県立光南高で部長、コーチを務めていた約5年前。同県内の強豪校・聖光学院高の打力に競り負けることが多く、外野の間や頭上を抜いて、一気に大量得点を狙う考えに方針転換した。

 加藤部長は「今は守備力に加えて、打たないと勝てない。しっかりバットを振って長打力への可能性を高く持って成長すれば、さらに上のレベルでも野球を続けていける」と強調する。

 選抜大会に出場し、春の県大会では15本塁打を放ち、圧倒的な攻撃力で14度目の優勝を飾った智弁学園高(五條市)。毎朝6時からの練習で打力を鍛える。約1時間半、マシンや下からのトスを遠くへ打ち返す「ロングティー」を繰り返す。打球の大半はライナーかフライ。春に6本塁打を放った塚本大夢ひろむ選手(2年)は「外野の間を抜く強い打球を意識して練習してきた。振り込みの成果が出た」と話す。

 1995年夏の甲子園に出場した小坂将商監督(40)も高校時代は「上からたたいてゴロ」の指導を受けた。ただ、2005年にコーチに就任してからは「当てにいかず強いライナーを打て」という指導に切り替えた。

 道具やトレーニングの進化で本塁打が出やすくなった。昨夏の甲子園は史上最多の68本塁打が飛び交った。春の県大会でも前年の7本から6倍の42本と飛躍的に増えた。

 小坂監督は「上からたたけはもう古い。年々指導法は変えないといけない。今は長打を打てないと勝てない時代だ」。

 一方で加藤部長、小坂監督ともに「点差や走者の状況に応じた打撃をしなければならない」と口をそろえる。ヒットエンドランの場面でフライを打てば併殺打になる確率が高まるし、フライアウトが続けば攻撃が単調になる可能性もある。ゴロを真っ向から否定するのではなく、「臨機応変な打撃」を説いている。

 野球のデータに詳しく、選手の動作解析も手がける国学院大の神事じんじ努准教授は「フライで長打が増えるのは事実だが、打球の速度や角度を意識しなければならない」と指摘。その上で「選手が大型化しているのにこれまで理論が付いてこなかった。多くの指導者が科学的な理論を取り入れている結果、フライ打ちが広がってきているのではないか」としている。

●メモ 昨年の米・大リーグでは、史上最多となる6105本塁打が乱れ飛んだ。「ゴロで単打を狙うよりフライで長打を」という「フライボール革命」と呼ばれる新たな打撃理論が話題となった。

 日本では、これまでバウンドのイレギュラーや野手のミスを誘いやすいゴロを狙うのが主流だった。ただ、選手の体力アップなどでより速く、遠くへボールを飛ばせるようになった。

 昨夏の甲子園や今春の県大会で、本塁打が量産された数字が示すように指導者の意識の変化とともに、この理論にのっとった指導が主流になるかもしれない。

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31629 0 白球進化論 2018/07/11 05:00:00 2018/07/11 05:00:00 腰より低めの球をバットを下から出して打つ練習をする大和広陵高の選手(広陵町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180710-OYTAI50012-T.jpg?type=thumbnail

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