<上>宝山寺参道 復活願う

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8月31日から9月1日へと日付が変わる頃、人々が入れ替わり立ち替わり宝山寺を参拝した(生駒市で)
8月31日から9月1日へと日付が変わる頃、人々が入れ替わり立ち替わり宝山寺を参拝した(生駒市で)
小川さんたちがにぎわいの復活を目指す宝山寺参道(生駒市で)
小川さんたちがにぎわいの復活を目指す宝山寺参道(生駒市で)
開業当初の生駒ケーブル。車体は木製だった。ケーブルカー左手にはかごが見える(近畿日本鉄道提供)
開業当初の生駒ケーブル。車体は木製だった。ケーブルカー左手にはかごが見える(近畿日本鉄道提供)

 ◇旅館経営者ら活性化

 静寂の闇の中、突如、車のテールランプの波が現れた。8月31日午後11時半過ぎ。生駒市の生駒ケーブル宝山寺駅へと向かう線路沿いの坂道。背後に広がる市街地の夜景とは対照的に、辺りは暗く、道沿いの民家はひっそりと静まり返っていた。標高300メートル余り。何台もの車が路上で列をなす光景に出くわした。商売繁盛の神様「歓喜天」をまつる宝山寺の駐車場に入庫を待つ車列だった。

 毎月1、16日に行われる宝山寺の縁日のうち、1日は特に「ついたち参り」と呼ばれる。日が変わる午前0時を目指して、「生駒の聖天さん」に商売繁盛を祈願する人たちが訪れる。

 家族連れも、友人や同僚と連れ立った人も、1人きりの人も、参拝者はみな一様に階段を上がり、惣門前で一礼し、奥へと進む。線香の香りが漂い、ろうそくがゆらめく深夜の境内にひっきりなしに参拝客が訪れる。

 大阪府寝屋川市でリラクゼーション店を経営する植野紀子さん(40)は、3年前から朔参りを始めた。「商売の神様にお願いする目的もあるけど、ここへ来るたびに『また1か月頑張ろう』と気持ちをリセットできる」と打ち明ける。

 兵庫県伊丹市の庭師・田口文雄さん(77)は父親と一緒に続けてきたお参りを、今は息子と続けているという朔参りのベテランだ。「商売をしていると山あり、谷ありで、いいことも悪いことも受け入れる心が必要になる。そんなことも自然と次の世代に引き継いでいくものだと思う」

 1918年8月29日、宝山寺への参拝客の足として作られた生駒ケーブル。開業4年前には、大阪と奈良を結ぶ近鉄奈良線が開通し、農村だった生駒は大きく変貌へんぼうを遂げ、人口も急増した。生駒駅から宝山寺までは1・5キロの石段の参道ができ、参道沿いには旅館や飲食店などがずらりと立ち並んだ。下から歩いて上がる人、ケーブルを利用する人で「最盛期は、休日の心斎橋よりにぎわった」という地元の声もある。

 だが、マイカーが普及するにつれ、宝山寺への参拝は車の利用が増えた。記録が残るピークの1975年度に152万人いたケーブルカー利用者は、約40年で4分の1の約39万人に減り、参道の旅館や土産店も経営が苦しくなり、廃業が相次いだ。

 ここで生まれ育った小川雅巳さん(51)の実家も旅館。一度は市外で働いたが、約15年前に地元に戻って料理店を営むうちに「参道の活性化のために何かできないか」と考えるようになった。同じ気持ちを持つ地元の旅館経営者らを誘い、2013年に「生駒聖天さんどう会」を作った。1、16日の宝山寺の縁日に合わせて、参道に出店が並び、石段を着物で歩いてもらうなどのイベント「ご縁市」も16年4月から手掛けてきた。

 小川さんが子どもの頃、参道かいわいでは、週末ごとに三味線や太鼓の音が鳴り響き、参拝客らでにぎわった。「自分にとって当たり前だった音や風景は、今思えばすごく幸せな光景だった」と振り返り、「生駒の商業発展の原点となったこの場所がもう一度にぎわうのを再び見たいし、次の世代にも見せてあげたい」。そう力を込めた。ケーブルに乗って大勢の人が訪れた、人が行き交う宝山寺のあの参道を復活させたいと願う。

<メモ>生駒ケーブル鳥居前―宝山寺を結ぶ宝山寺線(約0.9キロ)は、日本のケーブル路線で唯一、複線化している。生駒山の山頂に向かうには、宝山寺駅で生駒山上までを結ぶ山上線(約1.1キロ)に乗り換えが必要で、最短16分、料金は大人360円。

 宝山寺、山上両線にはケーブル路線では珍しく踏切が計5か所ある。うち1か所は乗用車も通過できる。宝山寺―生駒山上間にある霞ヶ丘駅周辺に人家はなく、乗降客がほとんどいない秘境駅だ。

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41947 0 ケーブルのあるまち 生駒山の100年 2018/09/21 05:00:00 2018/09/21 05:00:00 8月31日から9月1日へと変わる頃、人々が入れ替わり立ち替わり宝山寺を参拝した(午前0時12分、生駒市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180921-OYTAI50002-T.jpg?type=thumbnail

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