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世界遺産登録を祝い一斉に乾杯する金峯山寺の僧侶ら(2004年7月1日夜、吉野町で)
世界遺産登録を祝い一斉に乾杯する金峯山寺の僧侶ら(2004年7月1日夜、吉野町で)
吉野の山を望みながら、「桜以外の魅力も知ってもらうことが課題だ」と話す森下さん(右後方は金峯山寺)(吉野町で)
吉野の山を望みながら、「桜以外の魅力も知ってもらうことが課題だ」と話す森下さん(右後方は金峯山寺)(吉野町で)

 ◇世界遺産登録

 異様な熱気に包まれていた。2004年(平成16年)7月1日夜、吉野町の金峯山寺きんぷせんじ。地域住民ら約200人がその瞬間を待ち望んでいた。吉報は中国・蘇州から届いた。国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で、修験道の拠点などで知られ、奈良、和歌山、三重の3県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣さんけい道」の世界文化遺産登録が決まった。境内には万歳を繰り返す歓喜の声が響きわたった。

 「道」の登録は、フランス、スペインの「巡礼の道」に次いで世界2例目。金峯山寺などの建造物だけでなく、信仰の対象となった吉野山や那智大滝(和歌山県)、参詣ルートの川や海岸など、自然と人間の営みが結びついた「文化的景観」が中心となっての登録は国内初だった。

 「この地が受け継いできた伝統が『世界レベル』と認められた。その魅力を多くの人にPRし、また次の世代につなぐことが、私たちの使命だ」。当時、吉野山観光協会長だった旅館経営森下守さん(67)は、金峯山寺で開かれた祝賀会で、住民と喜び合いながら掛けあった言葉を鮮明に覚えている。

 協会メンバーらと「世界遺産 吉野・大峯」をPRする看板を各所に置くなど、誘客に努めた。04年に吉野町を訪れた観光客は、前年を約20万人上回る約123万人。豊かな自然の中でリフレッシュしたいと町に長期滞在する人たちが、欧米など海外からも訪れるようになった。

 「一目千本」と呼ばれる3万本の桜で知られる吉野山。春以外の観光客誘致に課題はある。だが、森下さんは「吉野は桜のほかにも、興味深い歴史など魅力がたくさんある。それを知ってもらうためには『世界遺産』が大きな冠になる」と考える。

 平成の30年間で、世界遺産の国内認知度は一気に高まった。登録されたのは文化遺産と自然遺産を合わせて計22件。最初は1993年の「法隆寺地域の仏教建造物」(斑鳩町)で、姫路城(兵庫県)、自然遺産の屋久島(鹿児島県)、白神山地(青森、秋田両県)と同時だった。

 98年には、東大寺や興福寺など「古都奈良の文化財」(奈良市)が続いた。それらを一目見ようと、毎年、国内外から多くの観光客が奈良を訪れる。鑑真が創建した唐招提寺(奈良市)の石田太一・副執事長(51)は「元々、中国などとの国際交流の中で建てられた寺。世界から認知されてうれしい」と話す。

 現在、県内にある世界遺産は3件で、全国最多だ。豊かな歴史と自然に恵まれた県にとって、「観光資源」はこれだけにとどまらない。

 古代に数々の宮殿が営まれ、日本独自の制度や文化を創出した舞台となった飛鳥・藤原地域。県と橿原市、桜井市、明日香村が目指すのが「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」の世界遺産登録だ。2021年度のユネスコへの推薦書提出を目指している。

 藤原宮跡や飛鳥宮跡など20の構成資産候補のうち、最も多い14を抱えるのは明日香村だ。森川裕一村長(62)は「隋が唐に滅ぼされるなど、激動の世界の波を受け止めながら、この地で日本の国が誕生し、現在まで続いている。その意味を世界に感じてもらいたい」と力を込める。

 国の世界遺産暫定リストに入った07年から10年以上が経過した。地下に眠る遺跡を説明する難しさがあった。

 持統天皇が主人公の作品「天上の虹」を描いたマンガ家の里中満智子さんは「飛鳥時代は、女性の天皇が国を動かし、海外から来た多様な人材が国造りに参画した。そうした考え方があったことを世界に発信できる」と強調する。その上で「時間をかけて地域の遺産を再認識できたことは、決して無駄ではない」と前向きに捉える。

 平成に始まった世界遺産登録。地元への誇りや愛着といった人々の意識の高まりこそが、次代に継承すべき遺産に違いない。(原田和幸、水谷弘樹)

 ◇<MEMO>暫定リスト7件

 世界文化遺産候補となる国の暫定リストには計7件が記載されている。「飛鳥・藤原」以外では、「古都鎌倉の寺院・神社ほか」(神奈川県)▽「彦根城」(滋賀県)▽「北海道・北東北を中心とした縄文遺跡群」(北海道など)▽「金を中心とする佐渡鉱山の遺産群」(新潟県)▽「百舌鳥もず・古市古墳群」(大阪府)――と、構成資産の追加登録を目指す「平泉」(岩手県)がある。

 2019年のユネスコの世界遺産委員会では、「百舌鳥・古市古墳群」が審議される。20年からは、世界遺産の推薦枠が文化遺産と自然遺産を合わせて1国1件となり、自然遺産の「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島、沖縄両県)が推薦される。

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60970 0 平成なら物語 次代につなぐ 2019/01/03 05:00:00 2019/01/03 05:00:00 DSC 「紀伊山地」世界遺産決定/世界遺産登録を祝い一斉に乾杯する金峯山寺蔵王堂の僧侶たち(1日午後9時5分、奈良県吉野町で) 2004年7月1日撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190102-OYTAI50104-T.jpg?type=thumbnail

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