<3>古都の酒 外国人集う

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店を訪れた外国人観光客らの接客をする今西さん(右奥)。日本酒の魅力を伝え続ける(奈良市で)
店を訪れた外国人観光客らの接客をする今西さん(右奥)。日本酒の魅力を伝え続ける(奈良市で)
多くの観光客が訪れるならまち。その一角で町家の趣を残す「今西清兵衛商店」(奈良市で)
多くの観光客が訪れるならまち。その一角で町家の趣を残す「今西清兵衛商店」(奈良市で)

 ◇ならまちの蔵元

 しっくい壁に虫籠窓むしこまど連子れんじ格子の町家が並ぶ奈良市の旧市街地・ならまち。創業130年を超える蔵元「今西清兵衛商店」(福智院町)へ、次々と観光客が吸い込まれていく。室町時代の書院造りで知られる「今西家書院」(重要文化財)に隣接する観光スポット。「春鹿」に代表される奈良の酒を求め、世界中から年間約1万人の外国人観光客が集う。

 1人500円で、底に鹿がデザインされたガラスのおちょこを購入すると、5種類の酒を試飲できる。ノルウェーから関西外国語大(大阪府枚方市)に約4か月間留学し、帰国前に立ち寄ったヴェビョン・フーラ・ウーレバリギさん(24)は大の日本酒ファンだ。「日本酒にはいろんな種類があって、しかも、冷やとかんとでは味が全然違う」。その魅力を興奮気味に語った。

 隣の席では、中国・上海から訪れた呉斌ウービンさん(24)も「中国の酒ほど強くはないが、さわやかで非常においしい」とじっくり味わった。

 多くの外国人観光客が店を訪れ、インバウンド需要が高まったのは、ここ2~3年だ。「20年前は土日曜でも、1日5人しか来ない日もあったのに……」。東京の酒卸問屋勤務などを経て、昭和から平成に変わる頃、実家に戻り、2005年(平成17年)に5代目社長に就任した今西清隆さん(58)は、平成になってからのならまちの変化に驚く。

 今西清兵衛商店は1884年(明治17年)に創業。「春鹿」の酒名は「春日大社の神々が鹿に乗ってやってきた」との伝説に由来する。室町時代、正暦寺(奈良市)で、アルコール発酵のもととなる酒母「菩提(ぼだい)(もと)」と、玄米で仕込まれていたこうじ用の米と蒸し米を白米にした高級酒としての「南都諸白なんともろはく」が考案された。清酒発祥の地とされるゆえんで同社は奈良の酒造りの伝統を継承する。

 「20年前まで、ならまちにある酒蔵という意識はなかった」と今西さんは振り返る。

 ならまちは奈良時代、平城京の外京として整備され、元興寺の旧境内を中心とした地域。江戸中期には宿場町、明治から昭和にかけては商業の中心地となった。戦災を免れ、戦後は次第に住宅地へと変貌へんぼうを遂げた。古い町並みが減少する中、1980年代に入って、まちづくりの機運が次第に高まった。

 市は94年に「奈良町都市景観形成地区」(約48ヘクタール)に指定。町家の改修費用を補助するなど、本格的な保存に乗り出した。この頃から、ならまちとして雑誌などで取り上げられるようになり、観光のまちへと生まれ変わっていった。

 ワインなど他の酒との競合の中で平成に入り、日本酒離れは一気に加速した。国税庁の清酒の課税数量はピークの約40年前の3分の1以下の50万キロ・リットル台に落ち込み、全国の蔵元数も約1600に半減した。

 国内市場が縮小する一方、和食が無形文化遺産となり、日本食ブームとともに、海外への日本酒の輸出は右肩上がりとなった。今西清兵衛商店も昭和から平成に変わる約30年前から、国外へ販路を広げるため、毎年海外に出掛けている。今では、アメリカやシンガポール、フランス、中国など17の国と地域へ、年間約4万本(720ミリ・リットル瓶換算)の「春鹿」が海を渡る。

 グローバル化が進み、日本酒を取り巻く環境は急速に変わってきた。6代目を引き継ぐ今西さんの長男瑛亮えいすけさん(24)は大学を卒業し、現在、東京で修業の身だ。「南都諸白の伝統を守りながら、時代に合わせていくしかない」。次代を見据え、今西さんは決意を新たにする。(小林元)

 ◇<MEMO>宿泊者は少なく

 県内の外国人観光客は、2015年から急増している。県によると、14年は66万人だったが、15年は103万人、16年は165万人、17年は209万人と大幅に増加している。17年の調査によると、国・地域別では、中国47%、台湾15%、韓国12%とアジア圏が多い。

 課題は宿泊者数の少なさだ。16年の外国人観光客の宿泊者数は31万人で全国25位、国内も含めると252万人で46位にとどまる。県内のホテルと旅館の客室数は全国最下位といい、県などが宿泊施設の積極的な誘致を進めている。

■は酉に元

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61005 0 平成なら物語 次代につなぐ 2019/01/04 05:00:00 2019/01/04 05:00:00 店を訪れた外国人観光客らの接客をする今西さん(左)。日本酒の魅力を伝え続ける(奈良市福智院町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190103-OYTAI50027-T.jpg?type=thumbnail

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