<6>プロの夢抱ける存在に

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「5年以内のJ2昇格が目標」と語る(左から)中川さん、矢部さん、林さん(昨年12月9日、東京都港区で)
「5年以内のJ2昇格が目標」と語る(左から)中川さん、矢部さん、林さん(昨年12月9日、東京都港区で)
奈良市内で開催された奈良クラブの「親子サッカー教室」で、子どもたちと触れあう矢部さん(昨年6月24日、奈良クラブ提供)
奈良市内で開催された奈良クラブの「親子サッカー教室」で、子どもたちと触れあう矢部さん(昨年6月24日、奈良クラブ提供)

 ◇サッカー奈良クラブ

 「5年以内のJ2昇格が目標」――。昨年12月9日、東京都港区のイベント会場。日本フットボールリーグ(JFL)の「奈良クラブ」(奈良市)が開いた新体制発表の記者会見には、約100人のサポーターや報道関係者が詰めかけ、その発言をした若者へ一斉に視線が集まった。

 クラブの頭文字「N」をイメージした新しいロゴマークのバックボードの前で、ゼネラルマネジャー(GM)に抜てきされた林舞輝まいきさん(24)が、力強く宣言した。サッカー指導者養成機関の最高峰の一つとされるポルトガルのポルト大学院などで学んだ経験がその自信を裏付ける。新社長には、経営手腕を買われた老舗麻問屋「中川政七商店」(奈良市)の会長中川政七さん(44)が就任した。

 奈良クラブ創設者で新たに副社長に就いた矢部次郎さん(40)は2人に熱いまなざしを向けた。「これまでの経験や情熱を2人につないで、奈良クラブの新たな歴史をつくりたい」

 

 矢部さんは高校卒業後の1997年(平成9年)、プロサッカー選手の夢をかなえた。しかし、「自信を失う日々の連続だった」。J1・名古屋グランパスにMFとして入団したが、他の選手との力の差は歴然としていた。練習でボールに触れることも難しかった。

 スタメンの出場機会はなく、落ち込むと決まって故郷・奈良に帰った。母校の奈良育英高サッカー部の仲間と会い、自身が置かれた苦しい状況を忘れることができた。漫画の「キャプテン翼」に憧れ、93年に開幕したJリーグに胸を躍らせていたサッカー少年だった頃。「サッカー人生の原点は奈良にある」と気づかされ、夢のために何度も気持ちを奮い立たせた。

 その後、サガン鳥栖やFCホリコシ(アルテ高崎、2012年活動休止)を渡り歩いた。股関節の故障に悩まされながらも、家族や友人に支えられて9年間、第一線で戦い、夢のためにもがき続けた。

 

 「プロサッカーを奈良に根付かせたい」。06年に引退後、「奈良クラブ」の設立準備を始めた。選手は約20人だったが、雨が降れば練習を休むなど意識に欠けていた。プロの経験を生かした指導や意識改革に取り組み、12年からは監督としてチームを率いた。

 健全経営とチーム強化の2本柱を担う中で、苦労したのがスポンサー獲得のための営業活動だ。資料を用意して、県内の企業を行脚した。「奈良にJリーグチームを」と協力を求めても、「雲をつかむような話だ」「どれだけ奈良のためになるのかわからない」と厳しい反応だった。

 ただ、試合の観客席は、クラブが運営するサッカー教室に通う子どもたちが埋めてくれ、その親たちが率先してグッズ販売にも協力してくれた。「選手がピッチに立つことができたのは、奈良の人たちの支援のおかげ」と振り返る。

 

 昨年6月、第98回天皇杯全日本サッカー選手権2回戦。奈良クラブは、パロマ瑞穂スタジアム(名古屋市)で名古屋と対戦した。PK戦で一度は勝利したが、主審による競技規則の適用ミスが判明し、PK戦のやり直しが決まった。結局、6―7で敗れた。「引退後も、何度も奈良クラブに夢を見させてもらっている」。熱い気持ちと志を高く持って、「奈良でサッカー文化を育てていきたい」と自然と力が湧いてきた。

 「奈良クラブのサッカースタイルを確立して、地域に愛されるチームにしたい」。24歳にして欧州の先進的な戦術理論を学ぶ林さんはそんな夢を持ち、チームに新たな風を送り込んでくれるに違いない。矢部さんも気持ちを新たにする。「自分と同じく子どもたちが奈良でプロ選手の夢を抱けるように、奈良クラブはそんな存在でありたい」

(鈴木彪将)

 ◇<MEMO>今季JFL8位

 奈良クラブは社会人チーム・都南クラブを母体とし、2008年に結成された。奈良市のならでんフィールドが本拠地。14年の天皇杯でJ3、J1チームを破ったことで、知名度が全国区になった。NPO法人がチーム運営をしていたが、18年10月より株式会社運営に転換した。

 今季はJFL16チーム中、8位と前季の7位から順位を一つ落とした。青を基調に、古都奈良をイメージした和文様があしらわれたユニホームが特徴。

 県内のプロスポーツチームには、バスケットボールB2・バンビシャス奈良がある。

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61296 0 平成なら物語 次代につなぐ 2019/01/07 05:00:00 2019/01/07 05:00:00 奈良クラブの今後の展望を語る中川さん、矢部さん、林さん(左から)(奈良市で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190106-OYTAI50017-T.jpg?type=thumbnail

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