東吉野の魅力 若者呼ぶ

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移住

 県内への移住者が注目されている。活性化にもつながり、地域の期待も高い。林業の衰退で人口減少が進み、1700人を下回った東吉野村では、ここ7年で90人余りが移住してきた。中学生以下の子どもの半数は移住者が占める。何が起きているのか。(中井将一郎)

 多彩な職種

自宅アトリエで漫画を描く元町さん。窓から望む庭には栗の木があり、集落も一望できる(東吉野村で)
自宅アトリエで漫画を描く元町さん。窓から望む庭には栗の木があり、集落も一望できる(東吉野村で)
中峰さん(手前)が開いた木工所。その一角に妻の瞳さん(奥の右端)はケーキ工房を設けた(東吉野村で)
中峰さん(手前)が開いた木工所。その一角に妻の瞳さん(奥の右端)はケーキ工房を設けた(東吉野村で)

 「生活を楽しみ、そのまま作品に描いている」。村内の古民家に移住した漫画家の元町夏央さんは話す。

 東京都内で生まれ育ち、漫画家デビュー。2011年に三重県に移住後、16年に村のシェアオフィス「オフィスキャンプ東吉野」を訪ね、移り住んだ。

 移住とともに始まったグルメ漫画誌「ごはん日和」(ぶんか社)の連載は、村が舞台。主人公の女子中学生が新鮮な食材を調理し、村人とふれあう。

 自宅前の沢で採れるクレソンをヒントに、おしゃれなサラダを描いた。トーストに載せた菜の花を取り上げたのは、いつも野菜を差し入れてくれる近所の夫婦宅で摘ませてもらったことが元ネタ。マツタケやワラビ、アユなど、まだまだ描きたい話がある。「ここは普通に手に入る食材が最高においしいから」

 村にはほかにも多彩な職種の移住者がいる。陶芸、染織、ビール醸造、料理、写真……。村が把握しているだけで、13年冬以降、46世帯92人(生まれた子ども含む)が移住。家族連れのほか、村で結婚する人も。こども園・小中学校の子ども計78人のうち39人が移住者で、特にこども園では26人中20人と際立つ。

 交流拠点の整備

「オフィスキャンプ東吉野」で打ち合わせをする坂本さん(中央)と武士さん(左)。移住者たちの仕事場にもなっている(東吉野村で)
「オフィスキャンプ東吉野」で打ち合わせをする坂本さん(中央)と武士さん(左)。移住者たちの仕事場にもなっている(東吉野村で)

 〈移住者の村〉となったきっかけは13年秋。「こんな田舎になぜ若者が来てくれるのか」。水本実村長は、大阪府出身で07年に移住した商業デザイナー坂本大祐さん(45)らを役場に招いて話を聞き、驚いた。

 「芸術家やデザイナーは活動の場を選ばない」「環境のいい田舎で働きたい都会の若者は多い」。坂本さんは、仕事場や交流の場になるシェアオフィスを設けるよう提案した。

 意見を受けて村は、芸術家らの移住を呼びかける「クリエイティブビレッジ構想」を打ち出した。オフィスキャンプ東吉野は、村が役場近くの町家を改修し、15年春に開いた。建築デザインは坂本さんが手がけ、弟の武士さん(43)ら移住者とともに運営を担う。

 次々に広がる輪

清流・高見川を望みながら移住について語る水本村長(東吉野村で)
清流・高見川を望みながら移住について語る水本村長(東吉野村で)

 移住者が移住者を呼び、都会から村に移り住む現象が広がる。

 家具職人の中峰渉さん(36)は、18年4月に村の地域おこし協力隊として、兵庫県尼崎市から移住し、村内の木工所を譲り受けた。「好きなことを思いっきりしよう」という気持ちに加え、坂本さんとも親しく、「移住の先輩がいる安心感」が後押しした。

 今夏、妻の瞳さん(36)も、木工所の一角を改装し、カフェを備えたケーキ工房「little oven(リトルオーブン)」を開店。「ここなら夢が実現できると思った」

 村はかつて企業誘致を試みたが、地理的に敬遠されてきた。移住施策の成功が知られる今、企業がサテライト事務所を設ける構想もある。水本村長は「人口減は止められない。若者を呼び込むしか村の未来はない。やがてUターンする人も増えるはずだ」と信じている。

       ◇

 ニュースをわかりやすく伝える「New門@奈良」。10月は、「移住」をテーマに連載します。

 <MEMO>

 移住を後押しする制度が、総務省が進める「地域おこし協力隊」だ。過疎の市町村などが都市部から移住する若者ら隊員を募集し、1~3年間の任期中、観光PRや特産品作り、農林業など地域振興に取り組んでもらい、定住につなげる。

 2009年度の創設当初は全国で89人だったが、年々増えて19年度は5349人。うち県内は124人に及び、吉野町が13人で最も多く、宇陀市と川上村が11人、東吉野村などが9人と続く。

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1555061 0 New門@奈良 2020/10/17 05:00:00 2020/10/17 05:00:00 2020/10/17 05:00:00 町家を改装した共有の仕事場「オフィスキャンプ東吉野」で打ち合わせをする坂本大祐さん(中央)や武士さん(左)。西岡さん(右)はイベントの作品制作に追われ、後方では移住者らがパソコンに向かう(東吉野村で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201017-OYTAI50006-T.jpg?type=thumbnail

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