世界遺産へ 歩み着実
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明日香村の 歴史遺産

日本の古里と呼ばれる明日香村。その歴史的な風土を守る取り組みを続けてきた古都飛鳥保存財団(明日香村)が今年、設立50年を迎える。地域の活性化も見据え、「飛鳥・藤原」地域の世界遺産登録の動きも加速する。歴史遺産の「保存」と「活用」を巡る明日香の最前線を紹介する。
「飛鳥・藤原」20件で構成
県や明日香村などが2024年の世界文化遺産登録を目指す「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」。登録されれば、県内では4件目の世界遺産となる。
「飛鳥・藤原」は、明日香村、橿原市、桜井市にある6世紀末から710年の平城遷都までに営まれた宮殿跡、寺院跡、古墳など20件で構成される。飛鳥時代の都が地中に良好な状態で保存されており、律令国家の誕生や東アジアとの交流を物語る貴重な地域だ。
村などは、世界遺産登録により、歴史的な風土を次世代に保存・継承するとともに、魅力を国内外に発信し、地域ブランドを確立させる。地域活性化も期待され、村は2019年に年間80万8000人だった観光客数を10年後に100万人とし、宿泊客数は3万人増の5万人とする目標を掲げる。

だが、構成資産のほとんどが地中に眠っているだけに、登録に向けた道のりは険しくもあった。
「登録」遅れ整備に時間
「飛鳥・藤原」が国の世界遺産候補の「暫定リスト」に記載されたのは07年。当初、5年ほどでの登録が想定されたが、すでに14年が経過している。
遅れの理由について、村教育委員会の小池香津江・文化財課長(51)は「登録に必要な『顕著な普遍的価値』の練り上げと、遺跡の万全な保存整備のためには、一定の時間が必要だったため」と説明する。
その価値を証明するように、10年には、

牽牛子塚古墳では、17年に始まった保存整備が来年3月に完成する。田園風景の中に凝灰岩で白く輝く墳丘が目を引き、当時の大王墓(天皇陵)の姿を体感できる。墳丘の周辺に、古墳の名前の由来となったアサガオを植えることも計画する。
大庭園跡「飛鳥京跡
実現へ力合わせて
こうした調査や保存整備の進展を受け、県と3市村でつくる登録推進協議会は、20年3月に推薦書の素案を文化庁に提出し、24年の世界遺産登録を目指すことを表明した。登録に向けた準備は、確実に進んでいる。
だが、実現には行政だけではなく、幅広い支援が必要だ。
古都飛鳥保存財団は、飛鳥ファンを「飛鳥応援大使」に認定する取り組みを08年に始め、20都道府県に約100人がいる。杉平正美・事務局長(67)は「大使が飛鳥のよさを多くの人に伝えることで、登録に向けた全国的な機運がさらに高まる」と期待する。
昨秋、中尾山古墳(明日香村)の調査で、文武天皇の墓であることが確定的になった。コロナ禍にもかかわらず、現地見学会は大勢の古代史ファンらでにぎわった。こうした全国のファンらが登録を待ち望む。
小池課長は「遺跡は現場で見るからこそ感動がある。現地に来た際、当時の建物を再現したVR(仮想現実)を見て楽しんでもらうなど、登録に向けて、遺跡の魅力をわかりやすく伝える工夫と努力を続けたい」と語る。(土谷武嗣)
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ニュースのポイントを解き明かす「New門@奈良」。2月は明日香村の歴史遺産をテーマに掲載します。