<3>観光 復活へ新たな目玉
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ネットでの疑似旅行 企画 やまとびとツアーズ

桜井市の旅行会社「やまとびとツアーズ」が昨年12月に開催した旅行を疑似体験するオンラインツアー。社内のスタジオで、社員の岡下浩二さん(33)が参加者の質問を読み上げ、
「自宅の敷地で小さな畑を造りたいのですが、土地の神様に怒られませんか?」
「造らせてもらう気持ちが大事。できた作物はお供えすると良いですね」
軽妙なやり取りを約50人が自宅などで見守る。この日は写真を交え、神社の祭事や正月の風習も紹介。罪やけがれをはらう祝詞「
東川宮司はこれまでに4回出演した。葛木御歳神社には「ツアーを見て訪れた」という参拝者もおり、「新たなご縁につながっている」と喜ぶ。
やまとびとツアーズは2012年、社員10人の印刷会社「やまとびと」の旅行部門として設立。「奈良のディープな魅力を詰め込んだツアー」を掲げ、県内の古墳や寺社をバスで巡りながら、地元に精通したガイドの解説を聞ける企画を売り物に存在感を示してきた。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で、昨年4月から全ての企画が中止に。観光庁の宿泊旅行統計調査によると、県内の宿泊者数は5月に前年同月の9%にまで落ちこみ、観光業界全体が大きな打撃を受けていた。
岡下さんは不安をかかえながらも、「外出を控える人が楽しめ、コロナ後の旅行も促せる」と、5月にオンラインツアーを始めた。
狙いは当たった。神社や仏像、妖怪などをテーマに14回催行し、延べ950人が参加した。バスツアーでは参加者の6割が県内在住だったが、オンラインでは県外からが8割を占めている。香港やシンガポールから参加する人もいた。
今後、寺社の祭りを中継するなどの企画も展開する予定で、岡下さんは意欲を燃やす。「オンラインとオフラインをつなぐ新しい旅のかたちを作りたい」
道の駅 新商品次々 「宇陀路大宇陀」駅長 西村 元伸さん 63

打撃を受けた観光地では、客足を取り戻そうと模索が続いている。
口に入れると、ミルクの濃厚な味と、地元産ブルーベリーの爽やかな香りが広がる。かりんとう入りでサクサクした食感も楽しい。
昨年8月、宇陀市の道の駅「宇陀路大宇陀」で発売したジェラート。夏場はソフトクリームとの「二枚看板」で売り上げを
奈良交通に勤める西村さんは、観光バスの営業に約30年間、携わった後、会社が運営する別の道の駅で駅長を務めた。その時に開発に携わったジェラートは、全国の道の駅のグルメコンテストでグランプリを獲得した。
19年7月、現在の駅長に異動。新天地でも物販に力を入れようとしていたところで、コロナ禍に遭遇した。花見の時期に観光バスはほとんど来ず、大型連休は市の要請に従って休業し、「一番のかき入れ時をふいにした」。
ショックは大きかったが、再開を見据え、集客の目玉となる新商品の開発に乗り出した。ターゲットは、感染を避けてマイカーで移動するであろう個人客。「車内で食べやすいものを」と考え、思い浮かんだのはやはりジェラートだった。
「道の駅は地域ゆかりの商品を置くディスプレー的な存在。魅力ある商品を開発すれば、どんな逆境も乗り越えられるはずだ」。西村さんは力を込める。(土谷武嗣)