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ペルーで子どもとボクシング 片山 慈英士さん 26

マチュピチュ村に滞在中、子どもにボクシングを教える片山さん(左)(ペルーで)=片山さん提供
マチュピチュ村に滞在中、子どもにボクシングを教える片山さん(左)(ペルーで)=片山さん提供
特別に観光を許可されたマチュピチュ遺跡に立つ片山さん(ペルーで)=片山さん提供
特別に観光を許可されたマチュピチュ遺跡に立つ片山さん(ペルーで)=片山さん提供

 「明日、マチュピチュの遺跡に連れて行くよ」

 昨年10月、遺跡の責任者からSNSを通して届いたメッセージが、自身を取り巻く状況を一変させた。コロナ禍で遺跡が閉鎖され、半年以上前からペルーの山村に滞在しながら、再開を待っていた。国内外のメディアが殺到し、「村に残る最後の観光客」として世界に知れ渡った。

 奈良市のボクシングトレーナー片山慈英士じぇしーさん(26)。翌日、遺跡に着くと観光客は誰もいなかった。壮大な「空中都市」を前に感慨にふけった。「遺跡も感動したが、ペルーの方たちが動いてくれたおかげという思いが大きかった」

 大学時代はボクシングに打ち込み、海外旅行も楽しんだ。そんな中で世界一周に憧れ、祖父の祖国トリニダード・トバゴに行く思いも募った。フィリピンに留学後、豪州で働いて旅費を稼ぎ、2019年7月からアジアやアメリカを巡った。

 旅をしながらボクシングのグラブやミットを持ち歩き、飛び込みでジムの練習に参加したり、教えたり。病気で一時帰国したが、昨年1月に再開。アフリカから南米に渡り、昨年3月15日にペルーのマチュピチュ村に着いた。翌日、遺跡に行くつもりだったが、新型コロナウイルスの感染拡大で、その日から遺跡は閉鎖された。

 嘆いたが、どうにもならない。閉鎖は2週間程度と聞き、村に残った。しかし、入場禁止は何度も延長されていく。国内の移動が制限され、国境も封鎖され、観光どころか、出国すらできない。「一日中空いているのだから、できることをしよう」。村で体を強くする栄養学や筋肉の鍛え方などを勉強し、ヨガ教室に参加して時間を過ごした。

 旅の途中で帰国後にボクシングジムを開くことを考え始めていた。村の子どもたちにも毎日、ボクシングを手ほどきするように。6、7人を相手にミットを構え、パンチを受ける。「ブエノ(うまい)」。スペイン語で褒めると、笑顔がはじけた。言葉はほとんど通じないが、「楽しそうにしているのを見て、いい時間を過ごせた」。

自身が取り上げられたペルーの新聞を前に、マチュピチュの観光大使の証明書を手にする片山さん(奈良市で)
自身が取り上げられたペルーの新聞を前に、マチュピチュの観光大使の証明書を手にする片山さん(奈良市で)

 半年が過ぎた。9月のある日、村をランニングしていると、地元の新聞記者に偶然出会った。3月からの日々について語り、それがニュースで取り上げられ、ネットで拡散。ペルー政府や村に「遺跡に行かせてあげて」という声が集まり、ついに遺跡の責任者から観光に誘われることになった。

 遺跡の訪問をSNSに投稿すると、相次いで祝福が寄せられた。観光大使にも任命され、あまりの状況の変化に頭が追いつかない。「ボクシングを教えるなど、地元に貢献したことが認められたのだろうか」

 昨年11月、日本に戻った。一時帰国はあったが、生活するのは4年ぶり。ペルー大使館に招かれ、今後も観光振興に協力していくことにもなっている。

 世界を巡り、「今の日本は、人と人との関わりが薄れている」と感じる。逆にコロナ禍をペルーの村人と過ごした体験から、人間関係の大切さを教わった。

 世界のジムを40か所以上訪れた経験も生かし、夢を目指して近く、東京のジムで働き始める。「技術だけではなく、どう伝えれば楽しさを伝え、人間性も豊かにできるか。それは旅の中で身に付けてきた」。ペルーの子どもたちの笑顔が浮かんだ。(萩原大輔)

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1757687 0 コロナの先に 2021/01/09 05:00:00 2021/01/09 05:00:00 2021/01/09 05:00:00 マチュピチュ村に滞在中、子どもにボクシングを教える片山さん(左)(片山さん提供)(ペルーで) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210108-OYTAI50014-T.jpg?type=thumbnail

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