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<5>大和機で織る 最上の麻

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奈良晒

岡井麻布商店(奈良市中之庄町)

茶巾(手前右)など様々な製品(奈良市中之庄町で)
茶巾(手前右)など様々な製品(奈良市中之庄町で)
復元した大和機を扱いながら、「機織りが楽しい」と語る岡井さん(奈良市中之庄町で)
復元した大和機を扱いながら、「機織りが楽しい」と語る岡井さん(奈良市中之庄町で)

 薫風くんぷうが吹き渡る静かな山あいの工房に、「タンタン、タンタン」とはたを織る軽やかな音が響く。「楽しいですねん。単純作業で無心になれるから」。奈良市中之庄町の奈良さらし織元「岡井麻布商店」の岡井孝憲さん(70)は手を止め、はにかんだような笑みを浮かべた。

 江戸時代末の1863年創業の5代目。高級麻織物で知られる奈良晒の起源は明らかではないが、室町時代には生産が始まったとされる。江戸時代初めに徳川家康の保護の下、武家のかみしも帷子かたびらに用いられたことで生産が盛んになり、〈麻の最上は南都〉と評価されて近世奈良の代表的な産業になった。だが、幕末になると、他の産地に押されるようになり、明治維新による武家の没落で廃れていったという。

 「なんと古くさいと、子どもの頃は嫌だった」と岡井さん。中学時代に父を亡くし、大学進学をあきらめて家業を継いだ。「ひたすら仕事としてやるだけやったが、一生懸命してるうちに伝統工芸品として評価されるようになり、心境が変わった」

 栃木県産の「野州麻」を米のとぎ汁などにさらしてあくをぬき、繊維をしごいて柔らかくし、細く裂いて糸にする。よりをかけない「無撚糸むねんし」が特徴で、布地にすると柔らかく、水分の吸収、発散がよい。

 繭のようにまとめた糸を舟形の「」に仕込み、機にかけたたて糸の間を通して織り上げる。杼に水を入れ、湿らせたよこ糸を使うのも麻布を織る際の特徴という。できた布をさらして真っ白にするのが名前の由来だ。

 以前は、通常の織機を使っていた。「大量生産するわけでなし、奈良の地にあってこそのものを」と思い、2016年に明治時代まで奈良晒を織るのに使われていた大和機を3台、県立民俗博物館(大和郡山市)の資料を基に復元した。

 大和機は通常の機が経糸をピンと張るのに対し、柔らかく張り、布地に優しく経糸と緯糸のバランスがよくなるという。

 手織りのためどうしても高価になってしまうが、「日常的に使ってもらいたいから」と、茶巾やコースターなど身近に使える様々な製品を開発している。

 「世の中、ITやらAIやらの最先端技術が進んどるけど、こっちは昔のまま。それが最近、環境に優しい繊維と見直されてきた」。温故知新を実感している。

 <メモ> 大和機で織った麻布の茶巾2200円、コースター1650円、懐紙入れ6600円など(いずれも税込み)。直営の「麻布おかい」奈良店、東向店で購入できる。機織り体験もしているが、コロナ禍で休止中。問い合わせは岡井麻布商店(0742・81・0026)。

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2028649 0 ならの手仕事 2021/05/04 05:00:00 2021/05/04 05:00:00 2021/05/04 05:00:00 茶巾(手前右)など大和機で織った様々な製品(奈良市中之庄町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210503-OYTAI50014-T.jpg?type=thumbnail

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